たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
2014年度地理A[本試験]解説
第1問 地理の基礎的事項
問1 図法に関する問題は地理A特有のもの。正距方位図法は中心点からの方位と距離が正しい。本問の場合は距離を問うているので、単純に長さを考えればいい。ブラジリアから最も遠いのは東京。なお、中心点から円周までの距離(つまりこの図の半径)は実際の20000kmを表す。ブラジリア〜東京間の距離はこの数値に近い。
問2 時差の問題も基本的には地理A特有。経度を考えてみよう。南極をみながら考えると分かりやすいと思う。まずBはイギリスのロンドン。これを通る経線は、世界標準時(GMT)を示す経度0度である。南極をみると、経度0度の線を含め、南極点から12本の線が放射状に北極に向かって伸びている。360度で12本なので、各経線は30度ごとであるのがわかる。これに従って考えると、オーストラリアのAは東経150度である。15度で1時間の時差であり、さらに東の方が西より時刻は進んでいるので、Aは10時間ほどBより進んでいることになる(Bは10時間ほどAより遅れてるってことね)。Aで3月18日の9時ならば、時計の針を10時間戻して、3月17日の23時が正解。
問3 資源の問題?いや、大地形の問題と考えた方が解きやすいや。Dはアメリア合衆国東部のアパラチア山脈で古期造山帯。実はこの山脈、有名とは思うんだが、なぜかセンターで直接問われたことはなかった。今回が初めてのパターン。古期造山帯の全てで石炭が取れるわけではないけれど、この山脈はベタに「古期造山帯=石炭」が成り立っている。イに該当。
さらにE。オーストラリア南西部は金鉱の産出で名高い地域なのだが、選択肢の文に『金』がないから仕方ない。地形の特色で解きましょう。オーストラリアは安定陸塊による平坦な地形に特徴があり、アの「急峻な山脈」はおかしいだろう(東部のグレートディバイディング山脈のみ古期造山帯だが、いずれにせよ険しい地形ではない)。地震も生じないので「活発な地殻変動」藻該当しない。Eはウが正しい。構造平野は安定陸塊に含まれる地形であり、妥当。また「起伏の少ない」もオーストラリアの一般的な地形の特徴。実はボーキサイトがよくわからないのだが、別に誤りを訂正する問題でもないし、気にすることはないだろう。ボーキサイトは北東部の熱帯地域で産出が多いんだけどね。
残ったFがア。バクー油田のことを言っているのだろうか。それはともかく、カスピ海周辺では油田やガス田の開発が進むことはぜひ知っておこう。
問4 これ、要注意。チリ中部の地中海性気候と勘違いしてはいけない。チリで地中海性気候がみられるのは南緯35度付近であり、図から緯度はしっかり読み取っておこう。東岸のラプラタ川河口エスチュアリー(アルゼンチンの首都ブエノスアイレスが位置)と同緯度であるので、南アメリカ大陸の海岸線で覚えておくといい。Kの場所はこれよりやや低緯度で、南緯25度付近、チリ北部である。寒流の影響によって大気が安定し、雲が生じない、世界で最も乾燥した地域である。③が正解。
問5 あれ、これわからないや(笑)。地理Bでは絶対に出題されないので大丈夫ということで、お許しを。
問6 写真がイマイチみにくいのですが、なんとかやってみよう。
サは焼畑の説明だが、それっぽいのはMかな。樹木が幹の一部だけ残して消失している。焼き払われた後だろうか。
シはプランテーション。同じ樹木がみられるNが該当。これは油ヤシでしょうか。
残ったスがLになる。なるほど、高さの違ういろいろな樹木がみられる。こういった工夫がなされているとは知らなかったが、樹木の多様性は生態系の豊かさを生み、その地域の自然環境に与える影響は大きいのだろう。
問7 変わった問題だなぁ。ぶっちゃけよくわからないんだよね。①とか③については正誤が判定できない。絶対に正文なのは④なので、これが正解なんじゃないかな。川の流れをたどってみるといい。Xの部分が尾根なので、Yの方がZより高いところにあるのは分かると思う。高所から低所に向かってYの河川をたどっていくと、Zへと入り込む。
問8 低地であるヌが「水田・湿地」であるのは間違いないだろう。「森林」が悩むのだが、なるほど、砂浜海岸に沿って二があるではないか。防風林・防砂林と考えるのが適当だと思う。直線状に樹林が並ぶのはよく見かける風景だよね。二が「森林」となり、消去法でナが「畑地」。住宅地とともにやや盛り上がった地形の上にみられる。
(*)これは浜堤とよばれる地形。かつて波打ち際だったところに土砂が打ち上げられ、列状に堆積したもの。この地域は海岸平野なのだが、古い時代には(a)と書かれている部分ぐらいまで海だったのだろう。その際に(a)付近の浜堤がつくられた。土地が隆起し、海岸線が後退すると、今度は図の中央付近に海岸線が移動し、中心部の浜堤が形成された。さらに海岸線が
下がり、最も(b)に近い側の浜堤がつくられている。
第2問 現代世界における人や物、金の流動
問1 良問。日本の貿易相手をベタに覚えといてもいいよ。現在首位のAが中国、かつて1位だったが、中国に抜かれたBがアメリカ合衆国。GNIが小さいオーストラリアはこんなもんでしょ、のC。
問2 豚はデンマークがポイントなんですよ。ベーコンなどの加工肉だね。デンマークは酪農国だけれども、実は豚の方が牛より多い。そういや豚の排泄物がバイオマスとしても利用されてるんだよね。①が正解。②は牛肉、③はサケ・マス、④はエビ。熱帯で養殖されているエビが重要かな。
問3 地理A特有。②の「首位港湾がその国のコンテナ貨物取扱量に占める割合」が100っていうのは、小国で一つしか港湾がないシンガポールでしょう。同様の理由で④がやはり小国のアラブ首長国。
ただ、ここからはベタな知識で解くしかないかな、そもそも国全体の貿易額でも「中国>日本」なわけで、中国の方がそりゃ『コンテナ貨物取扱量』は大きいわな。それに中国最大の港湾都市シャンハイの規模の大きさは想像できると思う。日本は横浜港だと思うんだが、世界24位っていうのはいかにも寂しいなぁ。①が中国で、③が日本となる。
問4 思考問題として出来がいいね。難易度は高い応用問題ではあるんだが。
気になるのはオーストラリア(オセアニア)の「20.4」。日本から工場が海外に出ていくパターンは2つあって、一つが安価な労働賃金の利用、一つが現地生産。発展途上国に工場が進出するパターンは前者。労働集約型の工場が1人当たりGNIの低い国に生産拠点を移す。逆に欧米に工場が進出するパターンが後者。GNI(人口と1人当たりGNIの積)つまり国内市場の規模が大きい国においては、その国で販売することを目的に工場が進出する。貿易摩擦解消のために自動車工場がアメリカ合衆国に移転したことなどがこの例。
で、翻ってオーストラリアなのだが、1人当たりGNIは高いし、(人口が少ないのでGNIが小さく)国内市場も狭い。どっちにしても、工場が進出するような国ではないのだ。Gは工場じゃないよ、って考えていいと思う。これが「農林漁業」に該当。小麦とか肉とかそういう感じなのかな。
残った2つが工業。これは繊維製造がより経済レベル(1人当たりGNI)の低い地域、輸送機械(これ、自動車のことね)がGNIの大きな国で現地生産を行うことを考えればいいと思う。Eが「輸送機械製造業」、Fが「繊維製造業」。それにしても、アジアの自動車の値も「63.5」だから決して低いものではないよね。中国での小型車の生産は多いし、また日本とタイは自動車に関してはFTA(自由貿易協定)を結んでいたりするし、自動車生産地域としてのアジアの地位も決して低くないんだろうね。
問5 地理A特有ではあるけれど、興味深い問題。人の移動は原則として「1人当たりGNIが低い国から高い国へ」。
アメリカ合衆国はオープンになっているので、これを中心に考える。興味深いのはアメリカ合衆国からRへと向かう「179」。経済レベルの高いアメリカ合衆国からなぜこのような移動が生じる?これはRも同様に経済レベルが高い国と考えるのが妥当。よってRが日本となる。
そうなると、日本に向かってPとQからの移動がいずれも多くなっているのも納得できる。近隣の経済レベルの低い国である韓国と中国から日本は多くの訪問者を受け入れている。
さらにアメリカ合衆国。Pの「76」とQの「325」.大きく値が違っている。より経済レベル(1人当たりGNI)が低く、そして母数である人口が莫大である中国からの人口流動こそ、大きな値となると考えて当たり前だよね。韓国は人口規模は小さい国であるし。Pが韓国、Qが中国。
問6 出題頻度が高い問題。重要。
実数が大切。日本国内の外国人の数は、1位中国。2位韓国・朝鮮、3位ブラジル。よって④が中国。①と②はどっちが多いか判定しにくいので、こちらは割合で考える。ブラジルは日系人の単純労働者が多く流入し、彼らは自動車組立など工場労働者の割合が高い。このことから男性が主であると考えていいと思う。一方、フィリピンはもちろんブラジル同様の理由もあるかもしれないが、こちらは「興行」名目で飲食店ではたらく女性の出稼ぎ労働者が比較的多いという傾向がある。①がブラジル、②がフィリピンと考える。
一方、最も人数が少ない③がイギリス。高賃金国からの流入は少ない。
問7 ちょっと地理Bでは出題されにくいパターンかな。誤りは③と④。③についてはAPEC(エーペック)にはアメリカ合衆国は加盟している。④については、OPECは石油メジャーに対抗して結成されたもので、両者はライバル関係にある。
第3問 アフリカ地誌
問1 良い問題、ニジェール川が非常に重要、Bがニジェール川で、サヘル地帯やサハラ砂漠を通過する外来河川の一つ。大陸縁辺部から一旦内陸部に入り込み、そこから大きく湾曲してから海に向かうという独特の流れ方に特徴がある。ア〜ウのうち、外来河川(乾燥地域を流れる)はイとウの二つがあるが、ニジェール川に関しては、河口がナイジェリアであり(油田になっていることも非常に重要なので知っておこう)、ナイジェリアが焼畑農業が盛んなキャッサバ生産国であることが思い浮かべば、イの「熱帯林」がこれに該当することはわかるだろう。Bがイ。
さらにもう一つの外来河川である、Aのナイル川にも注目。エジプトは全面が乾燥の度合いの高い砂漠気候であり、河口三角州も当然『乾燥気候』に含まれる。Aがウに該当。
残ったCがア。熱帯雨林の中を流れるコンゴ川。水量が豊富で、内陸水運も盛んである。
問2 アフリカ地溝帯に沿う高原地形が想像できれば解答できる。アフリカ東部にはエチオピア高原やケニア高原、キリマンジャロなどの急峻な地形が居並ぶ。西部の低平なコンゴ盆地と、それらの高原地形の対比が明確な④が正解。他は不問。
問3 農作物の栽培環境の問題。天然ゴムは高温多雨。乾燥地域には適応でない。②が誤り。ナツメヤシに変えとくのがベストかな。ナツメヤシは感想地域の食料。重要な炭水化物源。
問4 「商人」というのがいいね。当時のアラブは世界中をまたにかけた商業民族であった。6世紀にイスラム教が興り、こうしたアラブの交易路に沿ってイスラム教も広められている。タンザニアなど東アフリカ沿岸部や島嶼部にはイスラム国も多いのだ。サは「アラブ」が該当。
さらにシは「スワヒリ」が当てはまる。これを知らなくても「ヒンディー」というのはインドのことだから、消去法で解けたんじゃないかな。スワヒリ語はケニアやタンザニアの公用語の一つ。マイナーな言語かもしれないけれど、センターでは過去に2回登場しているので、決して地理A特有の問題だと思わないように。重要!
問5 これも過去に出題例がある非常にいい問題。まず、チから。ヨーロッパ人(イギリス人)が建設した都市としてケニアの首都ナイロビをぜひ知っておこう。ケニアは決して経済的に恵まれた国ではないが、ナイロビは写真のように超近代的な都市なのだ。ケニアは赤道直下ではあるが、標高が高いことからヨーロッパ人の入植が進み、彼らの手によって都市も建設された。現在もアフリカで最も近代的な都市となっている。Rに該当。
さらにタ。写真の中央に巨大な河川が流れていることから想像できるだろう。エジプトの首都カイロである。ナイジェリアのラゴスと並んで、アフリカで最も人口が大きな都市の一つである。ピラミッドなどの遺跡に恵まれ、多くの観光客を集めている。Qに該当。
残ったツがP。西アジアや北アフリカの伝統的な街区様式として、この迷路状街路がある。Pのモロッコの都市などその典型。
問6 まず真っ先にわかるのはナイジェリア。この国は(ニジェール川のところでも説明したが)原油産出国であり、石炭の国ではない。③が誤り。
さらにもう一つは国名よりも、アフリカ全般における貿易構造を考えるべきで、小麦のような自給作物については決して生産が十分ではない。植民地時代にプランテーションがつくられた歴史的背景があり、現在でも商品作物の生産に特化している国が多く、全体としては自給作物の輸入地域である。「小麦などの穀物」の栽培が盛んとは思えず、もちろん「輸出」はありえないだろう。国名にこだわる必要はない。⑤が誤り。
問7 ヨーロッパ諸国については、かつて植民地支配していたい地域に対してODAを供与する傾向が強い。フランス植民地としてわかりやすいのは、アルジェリア(フランスの正面)やマダガスカル(南東の島)かな。bがフランス。
またアメリカ合衆国のODAは、イスラエルを中心とした中東地域に多く供与されているのだが、アフリカにおいてはエジプトを考えればいいだろう。アラブのリーダー格の国で、中東戦争時にはイスラエルへと進軍した。現在は和平が結ばれているものの、アメリカ合衆国にとっては重要な外交相手エあることは間違いない。エジプトが含まれるaがアメリカ合衆国。
日本は経済的なつながりの強い東アジアや東南アジアに集中的にODAを供与する。日系企業が進出しやすいインフラ整備を考えたらいいだろう。アフリカとはつながりが薄く。cが該当。
第4問 環境問題と国際協力
問1 感覚的に解かないといけないんだろうが、それでも解答は難しくないんじゃない?1970年代の次点で排出が多かったアがドイツ。近年はCO2削減への取組みにも積極的。
イとウに関しては、単純に国の経済規模(GNI)や工業力を考えればいいと思う。人口はタイが7000万人、韓国が4500万人とタイの方が多いが、1人当たりGNIはタイが4000ドル、韓国が20000ドルで、人口と1人当たりGNIの積であるGNIは韓国の方が大きくなる。世界的な工業国であることを考えても、韓国の方がCO2排出がタイより多いと考えていいんじゃないかな。イが韓国、ウがタイ。
問2 いい問題。キは「地球内部のエネルギー」でCの地熱。クは「騒音」でAの風力。プロペラの振動音ってバカにならないらしいね。残ったカがB。これは決定的なキーワードはないかな。
問3 これも良い問題だなぁ。今回の地理Aって良問揃い。
正解は①と⑤ですね。他の選択肢の誤りを指摘していきましょう。
②;氷河は大陸氷河と山岳氷河があるんだけど、毎年毎年融解していたらたまらないよね。確かに洪水は多いけれど、それは単に春になって雪や氷が融けているだけ。大陸氷河は南極やグリーンランドを考え、山岳氷河は標高4000mを超えるような高峻な山岳(シベリアにはそういう山はないでしょ)を考える。
③;オーストラリア東岸の山脈は古期造山帯であり、火山ではない。サンゴ海にも火山被害はみられない。
④;「津波」は海底地震による。ここは「高潮」。高潮とは低気圧によって海面が上昇すること。
⑥;タイガは冷帯林。Uの場所は温帯であり、該当しない。そもそも南半球に冷帯は存在しないので、タイガも北半球だけのものと考えるべき。
問4 これは地理A特有。湿地の保全はラムサール条約。
問5 アスワンハイダムが典型例かな。ダムによって土砂がせき止められると、三角州や砂浜海岸が縮小する。河口まで土砂が到達せず、波によって侵食される面積の方が大きくなってしまうのだ。④が誤り。なお、「干潟の発達」っていうのはよくわからない。干潟も砂浜海岸の一部と考えると、やっぱり縮小するのかな。
第5問 (地理Bと同じ)
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