たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんオリジナル解説[2016年度地理B追試験]第4問
オーストラリア地誌は、地理B本試験での出題例はないが、追試験では何回か登場している。追試専門のネタという感じかな。とくに今回は都市名などマイナーな話題もいくつか取り上げられており、その点でも追試っぽいね。
<第4問・問1>
[ファースト・インプレッション] 地誌問題の最初が気候グラフ問題っていうのはよくあるパターンだね。ただ、今回は降水量だけ。しかも、問題内容をよく見ると、思考問題ではなく、知識問題としての傾向が強い。逆荷解きやすいかもしれない。
[解法] 降水量だけのグラフ。気温がないとちょっとイメージがつかみにくいから注意が必要ではあるね。
パースについては直接覚えてしまっていいと思う。南半球で地中海性気候がみられる代表的な都市。全体的に降水量が多くなく、とくに夏にほとんど雨がみられない。南半球の夏は「1月を中心とした時期」なので注意してね。①が正解。ブドウの栽培が広く行われ、ワインの醸造がさかんな地域でもある。根を深く張る植物であるブドウは、夏の乾燥にも耐えるのだ。
他は、①がブリズベン(日本と同じような一般的な温帯気候)、③がアリススプリングス(大陸内部で、中緯度高圧帯の影響で少雨気候となる)、④がダーウィン(南半球の低緯度地域で、夏[1月]に熱帯収束帯の影響で多雨、冬[7月]に中緯度高圧帯の影響で少雨。
[アフターアクション] 注意して欲しいのは2点。
一つはオーストラリアの気候。とくにここではダーウィンに注目して欲しいかな。南半球の低緯度地域は、1月に多雨、7月に少雨となる雨季と乾季の差が激しい降水パターンがみられる。地球全体の気圧帯の移動を考えてみよう。南半球側がより多くの太陽エネルギーを受け取る1月には、熱帯収束帯が南半球低緯度地域へと移動し、この一帯が雨季となる。その反対となる7月には、中緯度高圧帯がこの緯度帯へと移動し、乾季をもたらす。オーストラリア北部はその典型的な地域である。
もう一つは地中海性気候について。地中海性気候がみられる地域はパターン化されている。「北緯・南緯35度付近、大陸西岸から内陸部にかけて」である。南ヨーロッパ(スペインやイタリアなど)、アフリカ大陸北西部(モロッコなど)、地中海東岸(トルコ南部やイスラエルなど)、アメリカ合衆国太平洋岸(カリフォルニア州など)、アフリカ大陸南西端(ケープタウン)、チリ中央部(サンティアゴ)、オーストラリア南部(パース・アデレード)。オーストラリアの地中海性気候は、むしろアデレードがよく出題されるのだが(この大問の図1でいうと、アデレードはメルボルンの西の、海岸線が深く入り組んだ辺りに位置する港湾都市)、今回はパースが取り上げられている。
<第4問・問2>
[ファースト・インプレッション] 資源に関して。オーストラリアは鉱産資源の豊富な大陸であるので、資源ジャンルからの出題は当然しかるべきもの。しかし、本問についてはちょっと雰囲気が違う。資源の問題って、統計を問うものや分布地域を問うものが多いんだが、この問題はもうちょっと深いところまで突っ込んでいる。安易に解かないように。思考問題としてもなかなかの水準なんだが、つまり「考えれば解ける」のだ。
[解法]そもそもオーストラリアは「鉄鋼業」のさかんな国ではない(そういえば第2問問2でも、国ごとの鉄鋼生産に関するネタが出題されているね)。とくに、Bのような内陸部の乾燥地域で、ほとんど人が住んでいないような場所で鉄鋼業なんて、普通考えられない。「工業地域」二ついてもNGワードとみてもいいよね。②が正解。思考問題として面白いと思うよ。っていうか、むしろ感覚的に解く問題かな。「何となく」解けた人もいるんじゃない?それでいいと思うよ。
なお、①、③、④については無視してください。よくわからんのだ。
[アフターアクション]1人当たりGNIが高く、人口が少ないオーストラリアは、製造業が発達しにくい国の代表例(*)。1人当たりGNIが低く、人口が多い中国が、世界最大の工業国となっていることと比較してみよう。例えば、シドニーのような大都市で「工業」ならば、まだ正文の可能性があるが、Bのような地域ではありえないよね。知識としても大切なんだけれど、思考して、感覚的に解いてしまうのが本問の解き方なんだと思う。
(*)1人当たりGNIが高く、人口が少ない国でも「建設業」が発達しているパターンは、西アジアの産油国(アラブ首長国連邦[ドバイ]などで典型的にみられる。オーストラリアの場合、すでに都市施設などは完成した先進国であり、今さらいろいろなものを建設する必要はない。
<第4問・問3>
[ファースト・インプレッション] 都市が問われているね。シドニーとメルボルンの判定はむずかしいんじゃないかな。
[解法]都市の出題は珍しいんだが、少なくとも「政治都市」としてのキャンベラは知っておかないといけない。ウがキャンベラ。首都として計画的に建設された都市であり、「放射環状路型」の街路に特徴がある。
残った2つの判定は難しい。これってちょっと無理なんじゃないか。やっぱ「人口最大都市」は知っておくべきなのかな。オーストラリアの人口最大都市はシドニーであり、アが該当。メルボルンはかつての首都ではあるんだが、人口規模はシドニーには及ばない。イがメルボルン。「イギリス人による入植は、ここから始まり」とか「ゴールドラッシュ時に金の集散地となり」は知っておくべき知識ではない。人口規模を唯一のヒントに解くしかないんだわ。厳しいかな。
[アフターアクション] 他の問題ではカナダのトロントも登場している。主な国について、人口最大都市は知っておけということ?メルボルンもシドニーもオリンピックを開催したことのある都市なんだが、たしかにセンターにはそういった都市はよく登場していることは事実。
せっかくなんで、最近のオリンピック開催都市とその特徴を。
リオデジャネイロ(2016)・・・ブラジル第2の都市(1位はサンパウロ)。港湾都市であり、かつては首都だった。
ロンドン(2012)・・・西ヨーロッパ最大の都市で人口規模は1000万人。
ペキン(2008)・・・中国の首都だが、人口規模ではシャンハイを下回る。
アテネ(2004)・・・ギリシャの首都。経済破綻によって国家財政は厳しい。
シドニー(2000)・・・オーストラリアの人口最大都市。
バルセロナ(1996)・・・スペイン第2の都市。芸術家ダリやサグラダファミリア教会などで有名。
アトランタ(1992)・・・アメリカ合衆国南部の都市。黒人人口割合が高い。
ソウル(1988)・・・韓国の首都。国内人口の4分の1が集中。
ロサンゼルス(1984)・・・アメリカ合衆国第2の都市。人口は300万人程度。
モスクワ(1980)・・・ロシア(当時ソ連)の首都。人口1000万人。クレムリン宮殿を中心とした放射環状型の街路区画。
モントリオール(1976)・・・カナダ東部の都市。フランス語圏に位置する、国内第2の都市(1位は英語圏のトロント)。
ミュンヘン(1972)・・・ドイツ南部の都市で、伝統的なビール工業に加え、自動車工業や先端産業も立地。人口は首都のベルリン(300万人)に次ぐ国内2位。
メキシコシティ(1968)・・・メキシコの首都で人口規模な1000万人を超える。高原の盆地に位置し、大気汚染が激しい。
意外と人口2位とか多いね。知っておくと得する都市ばかりなのです。
<第4問・問4>
[ファースト・インプレッション] 初めて見る形式の問題(人口や宗教ジャンルではあったけれど)。ポイントはグレートアーテジアン盆地であることはわかるんだが、他がむずかしい。
[解法] 農業区分が問われているが、とにかくグレートアーテジアン盆地だけ、確実にチェックしておこう。グレートアーテジアン盆地は降水量が少ないが、被圧地下水を利用することによって、毛羊が大規模に放牧されている(企業的牧畜)。位置としては、東岸を走るグレートディバイディング山脈の西側斜面となる、大陸の北東部の内陸地域(大陸を胸と考えるならば、心臓の部分)。図ではHが該当する。「放牧(羊)」地域が広く含まれるクがHとなる。
カとクの判定は難しい。牛の放牧地は羊に比べ、降水量が多い地域である。オーストラリア大陸では北東部のサンゴ海沿いが代表的な肉牛の飼育地域。乳牛ならば酪農となるので、冷涼で湿潤、そして(出荷しやすいように)都市が集まる南東部など。
オーストラリア大陸は、南緯25度付近に強い影響を与える中緯度高圧帯によって、大陸の中央部に広大な砂漠が形成されている。北部は(ダーウィンの気候を考えよう)、雨季と乾季の明瞭な熱帯地域となっており、南部は(パースの気候を考えよう)やや降水量の少ない地中海性気候となっている。カをGと考えていいのではないか。カは北端だけ「放牧(牛)」となっているが、Gの最北部では熱帯気候がみられ、それなりに(雨季と乾季はあるものの)降水量が多く、牧牛が可能なはずだ。キはFと考えよう。Fの最南端は地中海性気候地域に近く、降水量が多くないかもしれないが、完全な砂漠というわけでもないだろう。牧羊ならば十分に行われていると考えていい。
そしてもちろん、Fの中央から北部、Gの南部から中央部にかけての地域は砂漠として「非農業地域」となっている。
[アフターアクション] ちょっと難しいようには思う。グレートアーテジアン盆地だけしっかり知っておきましょう。あとはカンだな(笑)
<第4問・問5>
[ファースト・インプレッション] 民族の違いを社会階層の違いに置き換える問題。近いところでは2012年度地理B本試験でアメリカ合衆国をテーマとして出題されたことがあるが、これが意外と手ごわいのだ。
[解法] 人口規模が示されている。こうした「絶対的な数」に注目するのは大原則。最も人口が多く、経済的にも恵まれていると推測される(失業率が低く、進学率が高い)スが「オーストラリアで生まれた人」と考えるのは適当だろう。問題は残った2つなんだよなぁ。「非英語圏の海外で生まれた人」って具体的にどんな人だ?難民も含まれるだろうし(オーストラリアは、日本とは異なる比較的難民の受け入れに積極的な国である)、出稼ぎ労働者も多いのだろう(とはいえ、オースイトラリアにはそもそも彼らの働き口である、単純労働の工業は少ないのだが)。しかし、意外と多いのが、中国からの富裕層の移民なんじゃないか。中国に生まれつつあるスーパーエリート層。経済的に成功した彼らは、祖国を捨て、先進国へと生活の場を移す。その中心となる国はオーストラリアとみていいだろう。現に、日本から高齢者のリアイア後の居住地としてオーストラリアが注目を集めている。失業率は比較的低く、進学率も高めとなるシが「非英語圏の海外で生まれた人」とみていいだろう。1970年代まで行われていた白豪政策の影響によって、アジア系など有色人種の移民が禁じられていた影響もあり、人口規模は多くない。
残ったサが「先住民」となる。白人が入植した数百年前から、アボリジニーは迫害され続け、その数を大きく減少させた。白豪政策が撤廃され、先住民の権利が回復された現在は、その数が増加傾向にあるとはいえ、一旦大きく減少した人口はそう簡単には戻らない。人口が少ないことに注目しておこう。さらに、長い間、差別されていた人々は、権利が回復された現在であっても経済的な立場は低いままであろう。例えば、アパルトヘイトが撤廃された南アフリカ共和国においても、白人と黒人やインド系住民との経済格差は依然として大きい。アボリジニーについても同じような状況を考えてみよう。仕事には恵まれず、教育水準も低い。
[アフターアクション] 上述のように、本問は決して簡単ではないと思うのだ。統計問題を解くコツとして、まず「実数」に注目してみる、オーストラリアという国において、白人と移民、そしてアボリジニーがそれぞれどれぐらいいるのだろうというイメージを持つことが極めて重要。
<第4問・問6>
[ファースト・インプレッション]これはスタンダードなありがちな問題。とくにイギリスを当てるならば何とかなるんじゃないかな。
[解法]かつてイギリスの植民地だったオーストラリアは、現在でも政治体制的にはイギリス連邦(旧イギリス植民地の中のいくつかの国で構成される国家群)の一員であるなどイギリスとの関係は切れてはいないが、経済的には環太平洋地域とのつながりが強くなってきている。
すなおに、値が大きく低下している①を選べばいい。
なお、1970年代はイギリスがEC(EU)に加盟した時期で、とくにオーストラリアとの関係が薄れた。オーストラリア自体も白豪政策を撤廃し、多文化主義によりアジア地域からさかんに移民を受け入れるなどして、大きな社会的な変革があったタイミングでもある。
他の選択肢は、②がアメリカ合衆国、③が日本、④が中国。とくに注目してほしいのは中国で、20世紀の間は貿易額は極めて小さかった(そもそも中国が改革・開放政策により、外国との経済交流が活発になったのは1980年以降である)のだが、2010年には一気に最大の輸出相手になっている。これについては、中国への石炭と鉄鉱石の輸出を考えよう。現在、中国は世界最大の鉄鉱石と石炭の輸入国であり、オーストラリアは世界有数の鉄鉱石と石炭の輸出国である。この辺りの関係は、第2問問2でも触れたブラジルと中国の貿易にも同じことが言えるわけである。世界はもはや中国を中心に回っているのだ。それに対し、日本の地位の低下はいかに深刻であろうことか。
[アフターアクション]中国の台頭ぶりが驚異的である。オーストラリアの上位輸出品目が鉄鉱石と石炭であり、最大の輸出相手国が中国(ちなみに輸入も1位中国)であることを、必ず知っておこう。
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