たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんオリジナル解説 [2011年度 地理B 追試験]
<第1問>
問1 正解;①
[インプレッション] 風系(気圧帯)の季節的な移動が直接出題されている。結構珍しいパターンなんじゃないかな。とはいえ、間接的にこうした風系の移動は常に問われているわけで、非常にオーソドックスな「必修問題」とも言えるわけだ。
[解法] 赤道を図に描いてみよう。Aは赤道のやや南側(南緯10度ぐらい)。春や秋は赤道付近に位置する熱帯収束帯であるが、1月を中心とした時期には南半球側に移動する。
[発展] 1月を中心とした時期は南半球の夏であり、南半球側で太陽エネルギーの受熱量が大きくなる。激しい降水(スコール)をもたらす赤道低圧帯も南半球の低緯度一帯へと移動し、この緯度帯に雨季をもたらしている。オーストラリア北部など、1月に多雨、7月に少雨という雨季乾季の明瞭な気候が生じているが、気圧帯の季節的な移動とともに理解しておこう。
問2 正解;④
[インプレッション] 2006年に南アメリカ大陸の西岸と東岸の海流の様子が出題されているが、たしかに南半球がテーマとされることが多いような。「北半球は時計回り、南半球は反時計回り」は鉄板ネタ!
[解法] 海流の流れ方は、北半球は時計回り(*)、南半球は反時計回り。このため、高緯度から低緯度に向かって流れる海流が大陸西岸に、低緯度から高緯度に向かって流れる海流が大陸東岸に、それぞれみられることになる。高緯度から低緯度へ、すなわち冷たい海水を暖かい海域へと運ぶ海流が寒流であり、一方、低緯度から高緯度へ、すなわち暖かい海水を冷たい海域へと運ぶ海流が暖流である。
(*)正確には8の字。
[発展] 海流は「北半球は時計回り、南半球は反時計回り」なので、大陸西岸では寒流(高緯度から低緯度)、大陸東岸では暖流(低緯度から高緯度)となるのが大原則。ただし、北半球では実際は「8の字」となっているので注意しておこう。中緯度から高緯度にかけては逆に、大陸西岸では暖流、大陸東岸では寒流となっている。大西洋においては西ヨーロッパの沿岸を北大西洋海流(暖流)が北上し、カナダに沿ってラブラドル海流(寒流)が南下する。太平洋においいてはシアトルやカナダの沿岸をアラスカ海流(暖流)が北上し、日本列島めがけて千島海流(寒流)が南下している。
問3 正解;③
[インプレッション] 定番の断面図問題。大地形のジャンルにおいては定番の問題であり、ヒマラヤ山脈やチベット高原が問われているのも定番。ただし、アラビア半島が厳しいなぁ。さすがにここを知っておこうというのは無理だと思う。そうなるとこれは消去法として、実際にポイントになるのはアメリカ合衆国の東部、具体的にはアパラチア山脈となる。石炭資源の豊富なこの古期造山帯を知っておくことがこの問題の肝なのだ。
[解法] ポイントはヒマラヤ山脈やチベット高原。標高4000mを越える高峻な地形であり、これがインド北部(Hの白丸側)にみられる。Hがウとなる。FとGは判定が難しいが、ここはアメリカ合衆国のアパラチア山脈に注目しよう。Fの黒丸はフロリダ半島だが、ここからアメリカ合衆国南部は平坦な地形が続き。やがて古期造山帯であるアパラチア山脈へと達する。標高1000m程度のなだらかな丘陵であるが、これがイの中央やや右寄りにみられる山地部分に該当するのではないか。イがFである。消去法でGがアである。
[発展] アパラチア山脈が問われたケースは、今回が初めてというわけでもないが、珍しいのは事実。ピッツバーグと合わせて押さえておくのがベストだと思う。アメリカ合衆国東部内陸部の都市ピッツバーグは資源産地に立地した鉄鋼都市であり、周辺にはアパラチア炭田が位置している。
問4 正解;①
[インプレッション] 定番中の定番、外来河川が登場。外来河川は当然、絶対に知っておかなくてはいけない。知識を固めるチャンス!
[「乾燥」が絶対的なキーワードとなっており、これは外来河川である。湿潤地域に水源を発し、乾燥地域を流れる河川が外来河川であり、水量は一般に少ない。しかし、実はW(ニジェール川)、X(インダス川)、Y(黄河)、Z(マーレー(マリー)川)のいずれもが実は外来河川だったりするんだな。「乾燥」だけでは判定できないっていうこと。この問題のポイントはむしろラストの「油田地帯」にあるのだ。河口デルタが油田地帯である河川は少なくないものの、センター地理でそれが問われる河川は一つしかない。それはニジェール川。ニジェール川河口が位置するナイジェリアは世界有数の産油国であり、油田地帯はその三角州に広がる。
「米」が気になるかも知れないが、農産物については「米を栽培している可能性がある」ならばオッケイにすること。気候環境や地形などの自然条件が重要となっている。例えば本問における4つの河川であるが、Yの黄河流域以外は十分に米の栽培ができるほど温暖な地域であり、米が栽培されていたとしても矛盾はない。
[発展] とにかく外来河川は必須。今回はニジェール川が出題されたが、他の河川(インダス川、黄河、マーレー川)についても特徴を整理しておくこと。
インダス川・・・灌漑によって綿花、小麦、米の栽培がみられる。古代文明を支えた。
黄河・・・肥沃な土壌(レス)を黄土高原から河北平原に押し流す「泥」の川。小麦の栽培。
マーレー川・・・スノーウィーマウンテンズ計画。大陸東岸の湿潤地域を流れるスノーウィー川から水を引いて、マーレー川の流域を灌漑している。大規模な小麦栽培。企業的穀物農業。
問5 正解;⑥
[インプレッション] 氷河地形はしばしば登場するので、こうした問題でビジュアル的に理解しておくのは大事だろう。ツが分かりやすいと思うのだが、山脈の斜面が大きく椀状にえぐり取られている。これが氷河による侵食地形の特徴。
[解法] なかなか写真がわかりにくいんだが(涙)。タが「U字谷」だろうか。チは尖った山頂ということでホルンである。ツは山地の斜面が大きくえぐり取られてしまった部分であり、カール。
[発展] ちょっとU字谷は分かりにくいのでパス。ここではチのホルンとツのカールを目でとらえておこう。ホルンの写真はセンター初出である。山頂付近の斜面が削られて、中央部分だけが取り残された様子をイメージする。カールの写真は2003年度地理B本試験第1問問1でも登場しているので、そちらと見比べてもいい。また地形図でもカールはよく登場しているので、斜面が丸くえぐり取られている様子を観察してほしい。
問6 正解;③
[インプレッション] ベタな植生の問題。しかも問われているのはこれまたベタな硬葉樹。それにしてもこの追試の第1問は自然環境全般が出題対象とされているわけだが、実にオーソドックスに、基本を突いてきている。センター試験のお手本のような大問である。
[解法] この気候はいわゆる地中海性気候と呼ばれるもの。全体の降水量が少ないことに加え、とくに夏季の降水がほとんど見られない。乾燥に強い樹木栽培を中心とした農業(地中海式農業)が営まれている。このような地域の植生は「硬葉樹」。葉は細長く硬く、過度な水分蒸発を防ぐものとなっている。オリーブなど。
[発展] 植生について知っておくべきは硬葉樹と照葉樹。いずれも常緑広葉樹の一種であり、温暖な地域に分布するものだが、硬葉樹は夏季乾燥、照葉樹は夏季多雨という違いがある。硬葉樹の例にオリーブがある。地中海性気候の卓越する地中海沿岸地域などでさかんに栽培される。夏季の激しい乾燥に耐えるように表皮は硬い。一方、照葉樹の例にシイやカシがある。葉の形状は丸みを帯び、表面は光沢を帯びている(クチクラ質)。西日本から中国南部に至る一帯における植生。
<第2問>
問1 正解;④
[インプレッション] ラッカセイが問われていることにまず驚かされるが、実はこの問題はラッカセイの問題ではない。小麦や天然ゴムの特定は比較的簡単。要するに残った二つの選択肢からサトウキビを除去すれば、消去法でラッカセイが導かれるわけで、実際には本問はサトウキビの問題なのだ。とはいえ、サトウキビもあまり頻繁に問われる作物ではない。現在の地球においてサトウキビの重要性は増してきており、だからこそ2010年代になってサトウキビがヘビーローテーションとなっているのだろう。今後の参考になる興味深い問題。
[解法] 難しいですね。サトウキビの世界最大の生産国はブラジルなんです。よって④が正解。しかし、これは厳しいな。過去にも出題されたことがない。消去法でも解けないし。逆に言えば「サトウキビ=ブラジル」という話題は最近になってとくに重要となってきたものであって、その理由はやっぱりバイオマスなんでしょう。他の選択肢は、②が天然ゴム。ブラジル北部(アマゾン低地)原産で、生産1位はタイ。③が小麦。中国1位も重要だが、ここでは西アジア原産に注目してみよう。消去法で①がラッカセイ。中国1位だけど、そもそも人口大国の中国は何でもかんでも1位でしょ(笑)。
[発展] 本問ラッカセイの問題ではない。間違いなくサトウキビを知っているか知らないかで差がつく。サトウキビについては近年エタノールの原料として注目を集める作物(バイオマス)で、センターでも重要度が高くなってきた。最大の生産国としてブラジルを知っておこう。バイオマス先進国のブラジル。
問2 正解;②
[インプレッション]
今回とくに注目すべき問題の一つ。非常におもしろい。ポーランドが主役となっているが、この国は混合農業の国で、ジャガイモとライ麦を栽培して、豚の飼料としている。ポーランドのHとGがジャガイモか豚肉に該当するので、Fが消去法で牛乳となる。中国における首位が牛乳というのもおかしい感じがするんだが、デンマークでも首位であるし、これはこれで正しいんじゃないかな。そもそも金額なんで、価格の高い牛乳が最大となるのも納得できないことはない。で、さらにHとGの判定となるわけだが、ポイントは1980年と2004年っていう時代にあるような気がする。1980年はポーランドはまだ社会主義で、経済レベルは(西ヨーロッパ諸国に比べて)極めて低かった。経済レベルが上がれば上がるほど、一般に食事における肉類の割合は上昇していくものだが、この時期のポーランドはまたジャガイモ中心の食生活だったのではないか。それがソ連の崩壊と東欧の自由化によって資本主義が導入され、EUへも加盟する2000年代、経済レベルの成長とともに肉類の供給量も増えていったことは容易に想像できるはず。「ジャガイモを食べる貧しい生活から、肉を多く食べる豊かな生活へ」の変化がこの国でも生じたのではないかと考える。HがジャガイモでGが豚肉である。
そうするとなるほどと思える部分もたくさんあり、例えばデンマークの1980年における首位は豚肉であるが、デンマークは豚肉(ベーコン)の世界的な輸出国として知られている。またペルーでも同じくHが首位となっていたが、たしかにジャガイモはペルー原産の農作物であり、インディオたちが伝統的に食していた。さらにポーランドで「農産物→肉類」の変化が見られたように、ペルーでも同じ変化が生じている。
とかいいつつ答えを見たら正解は⑤でした(涙)。うわっ、間違えた。
[発展]というわけで、ボクも見事に間違えているので、何も言えません(涙)。この問題はよくわかりません。。。
{再解説です}
これも難しかった!っていうか、今だに納得がいっていない。
まずデンマーク。農業区分でいえば「酪農」地域に含まれ、乳牛の飼育や生乳および乳製品の生産が行われている。また、「豚肉」の重要な輸出国として知られ、豚の排泄物は肥料だけでなく、バイオマスとしても利用されている。まず「デンマーク=牛乳・豚肉」となる。
さらにペルー。この国の高原地帯は「ジャガイモ」の原産地。インカ帝国はジャガイモを周囲の国に分け与えることで領土を拡大したとも言われている。「ペルー=ジャガイモ」でいいだろう。
さらにポーランド。混合農業地域であり、やせた土地で農業を行うため、豚の排泄物が用いられた。ライ麦とジャガイモの輪作によって豚が飼育される。「ポーランド=ジャガイモ・豚肉」なのだ。
ちなみに中国は、世界最大の「ジャガイモ」生産国であり、同じく世界最大の「豚肉」生産国でもある。とくに豚については、世界全体の飼育頭数のうち約半分を中国だけで占めているほどの圧倒的な豚飼育国。「牛乳」ももちろん生産は多いものの(人口が多いからね)、しかしインドやアメリカ合衆国の方が多い。中国は「豚がメインでジャガイモも多い。牛乳はそれほどでもない」というよみが成り立つ。
以上のようなことを考慮して考えるに、ペルーのHはジャガイモなのだろう。ポーランドにもHが含まれていることからこれは納得。さらにポーランドはHからGに移行している。これを豚肉と考えるのは容易だろう。とくに本問の場合、「額」であることが大切で、そもそもの価格としてジャガイモより豚肉が高いことも考慮されるべきである。ポーランドにおける「ジャガイモ→豚肉」の流れは自然。
そうなると残ったFは牛乳。デンマークではトップ品目が豚肉から牛乳に変化しているが、これについてはとくに否定するべき点も見つからない。
そして中国では米から牛乳に変化。中国は牛乳生産に特筆するべき部分はないが、そもそもの価格も高いのだろうか。これはこれで納得できなくないかな。②が正解やな。
と思って解いていたら、大間違い!正解は⑤だったのだ(涙)。これ、マジで全然わからないよ。中国は「米から豚肉」、デンマークは「牛乳から豚肉」、ポーランドは「ジャガイモから牛乳」なんだって。すでに述べたように中国は豚肉の生産において圧倒的なシェアを占めているから、豚肉がトップになっているのはなるほど当然なんだろう。でも、ポーランドがなぁ。。。ポーランドは皇后農業の国で、とにかく「ジャガイモ・ライ麦・豚」の国なのだ。それが、最大の生産額の農畜産物として牛乳を挙げなくてはいけないとは。これは難しいわ。というか、問題として不適切に思う。こういう問題もあるのやなぁと諦めるしかないわな(涙)。
問3 正解;④
[インプレッション] これ、いいですね。良問ぞろいの今回の試験の中でも上位にランクされる名作。例えば日本は農業の労働生産性が低く農産物の価格も高いわけだが、だからといって労働生産性が高いアメリカ合衆国から安価な農産物を輸入して、それで食料需給を満たしていいのだろうか。一見するとこれは合理的なように思える。しかし、実はかなり無駄が多いってことにみんなは気づいているか。それがいわゆるフードマイレージの問題。つまり輸送コスト。アメリカ合衆国から日本へと農産物を輸送すれば、それだけ輸送費がかかるわけで、これは果たして「得」なのかどうか。いや、損得より重要なのは環境への負荷だろう。船舶で輸送すればそれだけ重油すなわち原油を消費する。安価なコストで消費者まで食料が届いているように見えるが、輸送コストもバカにはならないし、それ以上に環境に与える負担が拡大していく。
[解法] いわゆるフードマイレージの問題。海外産の農畜産物は確かに価格的には安いかも知れないが、輸送時に確実にエネルギーを消費している(船舶の燃料など)のだから、環境に与える影響は少なくない。
①労働生産性とは、1ha当たりの収量の高低によって判定される。収量を農業従事者で割った値である。ヨーロッパに比べ、アジアの方が全般に第1次産業就業者割合は高い。イタリアとタイはいずれも人口規模が6000万人程度の国であるが、農民の数は圧倒的にタイの方が多いはず。労働生産性も低いとみるのが妥当。
②資本主義化が進む現代社会において、所得格差がそもそも縮小するはずがない。
③偏西風の影響によって、島の西側で多雨、東側で少雨となる。羊の飼育が見られるのは少雨である東側である。西側は、湿度が高いことを利用して綿工業が興った(産業革命)。空気が湿っていた方が綿糸が切れにくいのだ。
[発展] フードマイレージの意味と問題点はわかったかな。しかし、そもそもカタカナ言葉はセンター地理に登場しにくいので、これはあくまで一般常識として知っておいて欲しいレベルかな。正文判定問題なので、他の3つの選択肢を確実に否定しておくことが大切となる。とくに①~③のいずれの文も、「対義語を持つ語」が含まれていることがわかるだろうか。①ならば「集約」(粗放が対義語)、「高い」(低い)、②ならば「縮小」(拡大)、③ならば「東」と「西」がそれぞれ対義語。こうした対になる言葉を含む選択肢は誤文となりやすいわけで、そうしたことからも④を正文と判定することは決して困難ではなかったはず。
問4 正解;④
[インプレッション] ちょっと今までに見たことの無い問題パターン。ある程度の知識がないと解けない。こうした問題も一つぐらいは入っているということかな。できなくてもいいでしょう。
[解法] 鶏肉の問題とは珍しい。鶏肉の主な輸入地域としてブラジルを知っておくといい(っつか、またブラジルか、問1に続いて!)。Tはブラジルとなる。1980年代から主な輸入先の一つであったUがアメリカ合衆国、1990年代から大きな伸びを見せているSが中国。しかしこの2カ国とも鳥インフルエンザの影響によって大きく数値を減らしている。
[発展]珍しい問題なので、あまり発展的な展開は考えられない。ここではとりあえず現在の日本の最大の鶏肉の輸入先がブラジルであることだけ知っておこう。っていうか、ブラジルネタ多いなっ。
問5 正解;③
[インプレッション]過去にも似た形式の問題があったが(2003年の追試験だったかな)、こちらはずいぶんと難易度の低い印象。アンチョビっていうカタカナ言葉は実は受験生はみんな知っていたりするしね。
[解法]Xはイ。アンチョビで分かるんじゃないかな。ペルー海流が流れる海域でアンチョビが多く漁獲される。Yは世界最大の漁獲規模から判定。日本を含むアの海域である。巨大な寒流(千島海流)、潮目(千島海流と日本海流が会合)、広い大陸棚(東シナ海)などに恵まれ、周辺諸国の漁獲量も大きい。世界最大の漁獲量を誇る国は中国であり、日本と韓国は1人当たりの魚介類の供給量が多い。残ったZは南極海のウ。
[発展]統計を頭に叩き込んでおくべきかな。漁獲量の世界1位は中国である。また、主な国の中で1人当たりの魚介類消費(供給)量が多いのは日本。太平洋北西部は水産物の豊富な海域なのだ。
問6 正解;①
[インブレッション]センター地理って素直じゃない。一見してAのテーマと思いきや、実はBのテーマに沿って考える問題だったりする。本問がその典型で、一見すると水産業(エビの養殖)の問題なんだよね。でも実は違っていて、ベトナムの経済(社会体制)が問われている。ちょっと難しいかもしれないけれど、こうした問題にも慣れていかないと。ちなみに写真は別に意味はないね(笑)。
これ、なかなかヒネられた問題。ちょっと見ただけではわからなかった。例えば③の選択肢なんか間違っている部分を指摘できない。そりゃ、技術革新はなされるよね。③は正文でしょう。また④についても、これって地理っぽい選択肢じゃないよね。現代社会とか政治経済的というか。写真を見てもはっきりと「国内工場生産」と情報が表示されている。これも間違っていそうな部分すら見当がつかない。正文とみていいと思う。で、②なんだが、これは「安価」という高価の反対語となる言葉が含まれていて、ちょっと疑ったりするわけだ。でもベトナムの1人当たりGNIが低いのは絶対的なことであるし、「安価」が間違っているはずがないのだ。ということは、結局①なのか!?気になる言葉はもちろん「集約」。これには「粗放」という反対語も存在する。なるほど、写真を見る限り、のんびりとした養殖場の風景が見られ、たしかにあまり集約っていう感じはしない。どっちかっていうと粗放なのかな。というわけで①を誤り(解答)として見たんですが、ここでさらに気がついた。そうかっ、こっちがキーワードだったのか、こりゃ難しい!それは「1950年代から」なんだわ。ベトナムって社会主義の国でしょ。ベトナムが市場開放を果たし、外国との貿易に積極的になったのはつい最近の話。ドイモイ政策という市場開放政策が実施されたのは20世紀中であるが、とくに輸出用の農産物や水産物の生産に主眼が置かれるようになったのは21世紀に入ってからと行ってもいい。そもそもベトナムという国が成立したのはベトナム戦争の終わった1970年頃だからね(それまでは北ベトナムと南ベトナムというように分離していた)。1950年代の段階で、輸出用のエビの養殖が拡大しているわけがないのだ。なるほど、社会主義国ベトナムがようやく最近になって外国との交流がさかんになってきたことが問われていたのだな。①が正解となります。クオリティ高い問題と思います。
[発展]ベトナムという国を知ろう。ベトナムは1人当たりGNIの極めて低い国(1000ドルに満たない)であるが、その背景には社会主義国として経済成長と経済開放が進まなかったことがある。旧フランス領のベトナムは、北ベトナム(社会主義)と南ベトナム(資本主義)がそれぞれ別個に独立を果たした。やがて両勢力は対立し、1960年代にはベトナム戦争が勃発する。アメリカ合衆国の支援を受けた南ベトナムであったが、北ベトナムの攻勢に屈し、ベトナムは社会主義国として統一される。競争原理の少ない社会主義であると同時に、ベトナムは「敗戦国」のアメリカ合衆国から経済制裁を受けるなど、さまざまな不利な条件の下、経済は成長しない。諸外国との貿易も決して活発ではなく、「閉じられた国」として工業化は進まない。現在はドイモイ政策によって改革開放が進み、輸出産業の育成や外国からの工場受け入れも盛んに行われているベトナムではあるが、ようやく最近になって日本のような資本主義先進国と交流がみられるようになった「若い国」なのである。
<第3問>
問1 正解;③
[インプレション]村落の形態に関する問題は最近も出題されているが、珍しい話題には違いない。 ただし、本問の場合は村落が直接問われているわけではなく、「古代」や「草地」などのキーワードに沿って考える問題となっている。文章読解力と分析力が必要な興味深い問題。
[解法]難しい。ア~ウの文章の中からカギになりそうな言葉を拾っていく。アは「中世以降に開拓」なので比較的新しく開発された地域なのだろう。イは「広い草地を必要とする家畜飼育」とある。ヨーロッパにおける草地での家畜飼育ということで酪農(移牧を含む)を考える。ウは「古くから農業が盛ん」な地域で、アと対照的。
まず分かるのはイ。北海沿岸やバルト海沿岸のヨーロッパ北部が酪農地域であり、またアルプスの高山も移牧地域である。Xをイと考えていいだろう。ヨーロッパで古い時代に文明が発祥したのは地中海沿岸のギリシャやローマ。またフランス北部のパリなども歴史が古い都市で、周囲は小麦地帯となっている。これらを含むZが古い農業地域で、ウに該当すると思われる。残ったYがアである。東ヨーロッパやロシアであるが、こちらは開発が遅れたのだろう。
[発展]「広い草地を必要とする家畜飼育」で酪農が思い浮かぶがどうかがポイントの一つとなっている。またホイットルセー農牧業区分で酪農地帯が北海・バルト海沿岸のイギリスやデンマークであることも知っておかなくてはいけない(あるいは酪農の一種である移牧が行われている地域としてスイスなどアルプス地方)。
問2 正解;④
[インプレション]後半でムンバイの都市問題も出題されているのだが、ネタがかぶっているよね。わずか35問の中にいくつものネタかぶりがみられるとは、センター地理も「狭い」科目ではあるわけだ。
[解法]発展途上国でこそ首位都市は誕生しやすい。④はヨーロッパの先進国が該当。
[発展]ある国において特定の巨大都市が誕生する場合がある。これを首位都市(プライメートシティ)という。広い意味では単に人口規模が大きい都市のことを言うので、フランスのパリやイギリスのロンドンなど先進国の都市も首位都市に当てはまるが(さらに日本の東京も首位都市と考えていいだろう)、狭い意味では発展途上国の大都市のことのみとなる。
選択肢①は広い意味でとらえた場合のことを言っており、そのパリやロンドンが当てはまる。パリやロンドン周辺には、それぞれフランスあるいはイギリス全人口6000万人のうちの1割以上が集まっている。韓国のソウルも、全人口4500万人の4分の1が集中する首位都市である。いずれも中央集権的な国。なお、中央集権の反対は地方分権なのだが、例えば連邦制(州ごとの独自性が保証されている)の国がその例。アメリカ合衆国は連邦制の国だが、ニューヨークという巨大都市を擁するものの、他にロサンゼルスやシカゴなど人口規模の大きな都市は分散している。
選択肢②と③は狭い意味の首位都市のことを言っている。つまり発展途上国の都市に限定。タイのバンコク、ナイジェリアのラゴス、メキシコのメキシコシティなどがしばしば出題されるので知っておくといいだろう。
選択肢④については、たしかにフランスやイギリスも該当するのだが、むしろそれは特殊な例で、一般にはアメリカ合衆国やドイツなど先進国の多くは、決して特定の都市のみに人口が集中することはない。
ちなみにインドの場合は、人口規模が莫大なので(10億人)、さすがに「たった一つの都市」のみに人口が集中するわけではないが、ムンバイやコルカタなど実質的には首位都市と同様の特徴を有しているとみていい。ムンバイは「西インドの首位都市」、コルカタは「東インドの首位都市」ととらえるのが正解だろう。
問3 正解;①
[インプレッション]都市と農村の老年人口割合というのは初めてみた。こんなデータがあるんやね。どこから探して来たんだろうか。都市人口割合も問われているが、こちらは無視で(笑)。
[解法]これもすごく好きな問題です。都市人口率は見ないのがコツ。都市人口率は1人当たりGNIと反比例する傾向がある指標だが、例えば米作地域で低かったり、ラテンアメリカで高かったり、例外多すぎる。あまり当てにできる指標ではない。ここは「65歳以上の人口割合」に注目しよう。人口増加割合と老年人口割合は反比例。選択肢の4か国中、最も人口増加率が高いのはラテンアメリカのペルー、次いで東南アジアのインドネシア、そしてアングロアメリカのカナダが続いて、最も低いのが日本(*)。老年人口率が最も高い③が日本、その次の①がカナダとなる。②と③は不問。ちなみに、③の日本においては、都市と村落とで高齢化の状況に大きな違いある点も興味深い。過疎化の進行が農村では顕著。
(*)人口増加率については以下のように頭に入れておく。3%;アフリカ、2%;ラテンアメリカ・南アジア、1%;南アジア・アングロアメリカ、0%;日本・ヨーロッパ。東南アジアは東アジアと南アジアの中間で1.5%。
[発展]原則として1人当たりGNIと都市人口率は比例するのだが、それにしても例外多すぎるので、あまり頼りにするべき指標ではない。例えば、米作地域では比較的都市人口割合が低くなる(農村人口割合が高くなる)のに対し、自然環境に恵まれない砂漠国や高原国などでは都市人口割合が発展途上国であっても高くなる。やはり、人口増加率からの老年人口率の推測が絶対なので、こちらを利用するべき。
問4 正解;④
[インプレッション]文字の問題は珍しい。地理A的ではある。しかし、我々が日常的に使用する漢字の話題であるので、難なく解いて欲しいところではあるが。
[解法]漢字を使用しているのは東アジアに限られる。中国、朝鮮半島、そして日本。ベトナムもかつては漢字を使用していた(現在はアルファベット表記)。東南アジアの仏教国にはタイやミャンマーなどもあるが、タイ語やビルマ語(ミャンマーの言語)は漢字表記されない。
[発展]選択肢①の内容は無視でいいでしょう。選択肢②については、太陰暦はセンター試験初登場なんじゃないかな。確かにその通り、イスラム世界では太陰暦が用いられているんだが、これは主に月の満ち欠けによるもので(1カ月が28日)、太陽暦に基づく西洋的な(そして日本の)暦とは違っている。具体的には、月の長さが違うので次第にズレていき、その調整のために「うるう月」という13番目の月が何年かに一回入れられるのだが、例えばイスラムの断食月であるラマダーンもこの太陰暦に基づいているので、実はその時期は(太陽暦に照らし合わせると)毎年同じではない。日中の飲食が禁じられているラマダーンであるが、昼の時間が短い冬に当たれば楽なんだが、昼が長い夏になれば負担もかなり大きくなる。
選択肢③については常識として知っておいていいと思う。都市部や工業地域においては薄れてきたカースト制度(身分制度)であるが、農村部ではまだまだ生活に根強く残っている。なお、君たちはヒンドゥー教によってカースト制度が規定されていると勘違いしているんじゃないかな。これ、逆って知ってました?もともとカースト制度が先にあって、その上に乗っかって新しくできたのがヒンドゥー教。宗教って実は新しいものなんですよ。だから本選択肢も「ヒンドゥー教徒が多く住む地域では」と記述するなど、ヒンドゥーとカースト制度が直接的につながっているとは説明されていない。うまい文章ですね。
問5 正解;①
[インプレッション]家計をテーマとする問題。アメリカ合衆国で社会保障が整備されていないとことはしばしば出題の対象とされている。
[解法]過去問でもほとんど同じ問題があった。要するにアメリカ合衆国では、医療保険制度が国によって整備されていないので、個人個人が保険会社と契約して保険料を支払っている。日本やスウェーデンでは、保険料(国民健康保険など)が最初に給料から天引きされており、家計から支出はされていない。②が住居、③が食料、④が娯楽・文化と思うが、とくに不問でしょう。
[発展]とにかくアメリカ合衆国の医療費が高いことを知っておきましょう。
問6 正解;④
[インプレッション]余暇や観光っていうテーマがあまり地理Bっぽくないけど、それ以上に注目なのは問題としての雰囲気。こうした問題を解けるか解けないかっていうのは、センター試験で高得点が取れるかどうかの決定的な差になると思う。というのも、ぶっちゃけて言えば選択肢の①~③って誤りを指摘しにくいんだけど、それに対し④っていうのはあからさまに誤りポイントになりそうな部分がある。この時点で、正解(つまり誤文)を④にしてしまっていいんだが、それができるテクニックっていうのかな、そういう感覚的なものを身につけて欲しいとボクは思っているわけです。
[解法]①~③って誤っている部分を指摘できないんだよね(笑)。そりゃそうだろって感じで。だから唯一「比較の構造」を有している④に注目せざるを得ない。韓国とアメリカ合衆国が比較されていて、これをひっくり返すことによって容易に誤り選択肢を正文に直すことができる。こうした文章の構造をつかむのも、文章正誤問題のポイントだったりする。で、その④なんだが、君たちが徹底的に意識するのは「日本からアメリカ合衆国へ」というベクトル。人口移動はそもそも1人当たりGNIの高いところへ向かうベクトルが絶対的なものだが、それは旅行にも当てはまっている。日本人の最大の旅行先は、ハワイやグアムを含めたアメリカ合衆国である。
ただし、ハワイやグアムを除くアメリカ本土に限定すると、中国より下になってしまう年度もある。とはいえ、とりあえず中国は無視して、アメリカ合衆国への旅行者が多いと覚えておこう。
[発展]内容は関係なく、形式重視の問題だよね。ホント、こうした問題を確実に解くことが大切。例えば①の「中央アメリカ」や②の「東南アジア」などの地域名が違っていると考えた人もいるかもしれないけれど、意外とこうした地名っていうのは誤っている可能性は低い。「地理」という科目が実は地名をほとんど重視しない科目であることを意識してほしい。さらに言えば、そもそも「中央アジア」のような特殊な地域名が解答のポイントになることもない。こうした感覚(センス)を鍛えて欲しいとは思っているわけだ。
<第4問>
問1 正解;②
[インプレッション]今回の他の気候判定問題が、異なる緯度における気温年較差の違いを問うものであるのに対し、本問は同じ緯度(地点AとB)における気候の違いが問われている。
[解法]ほぼ同じ緯度における気温判定であるのでちょっと難しい。気温が絶対的な判定基準にならない。降水量に注目しよう。まずA。南緯35°の大陸西岸に位置し、地中海性気候がみられる(第1問問6でも地中海性気候が取り上げられていたね)。夏季の降水量が少ないアがAとなる。イとウは難しいんだが、やや緯度に差があることに注意。BとCのような比較的位置が近い2地点間において(しかもともに海岸に接し、標高の違いもないはず)、低緯度のBの方が高緯度のCより気温が低いことはありえないんじゃないか。イとウを比較しても、少しではあるが、イの方が低温でウの方が高温となっている。Bをイ、Cをウというのはいくら何でも無理があるんじゃない?Bをウ、Cをイというのが自然だろう。正解は②となる。なお、ニュージーランドは比較的高緯度に位置しながら(北海道とほぼ同じ)、周囲を海洋に囲まれていることや、一定方向からの風(偏西風)を受け続けていることの影響などによって気温年較差が極めて小さい。最暖月平均気温と最寒月平均気温との差が約10℃というのはこの緯度帯としては例外的に小さい。
[発展]地点A(パース)とC(ウェリントン)の気候は知っておくべきかな。Aは「南緯35°・大陸西岸」の条件に該当し、夏季乾燥の地中海性気候が見られる。南半球では他にアフリカ大陸南西端ケープタウン、チリ中央部サンチアゴでも同様の気候が見られ(いずれも「南緯35°・大陸西岸」の条件を満たす)、それぞれチェックしておこう。、またCのニュージーランドについては、「雪の降らない北海道」を考える。緯度的には北海道に相当するが、冬季は凍結する北海道に対し(北海道は冷帯気候なのだ)、ニュージーランドは凍結しない温帯気候。本来なら緯度から考えて気温年較差は20~30℃ほどに達するはずだが、周囲を海洋に囲まれているうえ、温暖な偏西風の影響を年間を通じて受けるため、季節による気温や降水量の変化が小さい気候となっている。「年間を通じ牧草の生育がみられる島」がニュージーランドなのだ。気温年較差は10℃程度しかない。
問2 正解;⑤
[インプレッション]これ、意外と正解率は低かったと思う。「グレートバリアリーフ」はみんな知っていると思うので、カは判定できる。ただし、キとクがしんどいんだなぁ。一見するとクの「ウルル」がポイントに見えるんだが、実は資源がポイントになっている。これに気付くかどうかなんだけどね。
[解法]カ;グレートバリアリーフは知っておくべき。暖流の流れるオーストラリア大陸北東岸。Gが該当。キ;「金」で行くしかないと思うんだよね。Aの町はパースって言うんだが、これは実は金鉱の積出港として発展した都市。付近に金鉱が発見され、東岸の湿潤地域(Bのシドニーなど)から白人が押し寄せ、ゴールドラッシュに湧いた。この時、金を独占しようとした白人たちによって中国からの移民の流入が制限され、白豪政策が実施されたのは有名な話。Eに該当。残ったクはFに該当。たしかにウルルはFの最南部(つまりオーストラリア大陸の中央部)に存在する。ただし掘り抜き井戸がキーワードとなる大さん井盆地についてはちょっと場所がズレているような。もうちょっと東だと思うんだけどね。Gの南西部というか。ま、ここは大さん井盆地に限らず、オーストラリアの内陸乾燥地域においては掘り抜き井戸を使用した灌漑が一般的に行われているということだろうか。
[発展]やっぱりオーストラリアの鉱山分布は知っておくべきということ。ここでは鉄鉱石と金鉱に注目しよう。オーストラリアの鉄鉱石産地は北西部。地図帳で確認するならば、マウントホエールバック、マウントトムプライスなどの鉱山名を探してください。「鉄鉱石は安定陸塊に埋蔵されている」なんてやみくもに覚えているとケガをする。そもそもオーストラリア大陸のほとんどは安定陸塊なのだから、それでは鉄山の位置を特定できない。しっかり北西部の鉄山を頭に入れておく。金鉱は南西部。沿岸部にパースという都市があるのだが、ここは金鉱の積み出し港として発展した都市。南西部で金鉱山が発見され、オーストラリア版ゴールドラッシュにパースの港は沸いた。パースのや内陸部にあるカルグールリーという金鉱山を良かったらチェックしておいてください。
ちなみに、ボーキサイト鉱山は北東部のウェイパ、炭田は南東部のニューカッスルなど。北東部ボーキサイト、南東部石炭、北西部鉄鉱石、南西部金鉱という覚え方。
問3 正解;④
[インプレッション]ありがちな問題。こういうのを確実にゲットしましょう。
[解法]これは鉄板でしょ。偏西風の影響を受けるニュージーランドは島の西岸で多雨となり牧牛、東岸で少雨となり牧羊となる。第2問問3も同じネタ。ちなみに選択肢②のオーストラリアにおける混合農業がマイナーネタではあるけれど、④が絶対に違うから放置でいいでしょ。
[発展]①のネタは知っておいてください。②には不要。混合農業は北ヨーロッパ平原と北米コーンベルトだけ知っておけばいい。③についてはニュージーランドの輸出品目を統計要覧で確認しておこう。酪製品や羊毛、穀物など。
ちなみに、ここでは肉牛とあるけれど、もちろん肉牛でも正解なんですが、せっかくなんで乳牛を知っておきましょう。っていうか酪農を知っておくといいよ。ニュージーランド北島は酪農地帯となっており、広大な牧場を利用した乳牛の飼育が盛んに行われている。
問4 正解;⑤
[インプレッション]最近こうした貿易相手国を問う統計の問題が目立つ。要注意かな。
[解法]わが国にとって最大の石炭と鉄鉱石の輸入相手国であるオーストラリア。20世紀より強いつながりがあったということで、Jを日本と考えていいだろう。しかし、近年は中国が世界最大の鉄鉱石の輸入国となるなど、鉄鉱石供給先であるオーストラリアとの関係を強めている。Lを中国と考える。Kは消去法。
とりあえずデータです。統計を確認しておくといいでしょう。オーストラリアの最大の輸出品目;石炭 石炭の最大の輸出国;オーストラリア 鉄鉱石の最大の輸出国;オーストラリア 日本の石炭の最大の輸入相手国;オーストラリア 日本の鉄鉱石の最大の輸入相手国;オーストラリア 石炭の最大の輸入国;日本 鉄鉱石の最大の輸入国;中国
[発展]よく考えたら中国の問題なんだよね。最近になってランクを上げているものは(本問の場合はL)は中国なわけです。
問5 正解;①
[インプレッション]問4と似たような印象もあるね。とりあえず中国は最大のポイントとなっているわけです。
[解法]白豪政策が背景にあるわけか。白豪政策が撤廃されたのは1970年代で、本問の表で取り上げられている1981年はまだその名残りがあり、アジア出身者は少ないはず。PとQはヨーロッパの国と考えられ、イギリスかイタリアが該当するが、とくに数値が多いPをイギリスとみていいだろう。オーストラリアは旧イギリス植民地で公用語も英語である。Rが中国。2006年になって登場しているが、PとQは割合を低下させていることにも注目しよう。っていうか、問4問5と続けて要するに中国の問題ですよね。中国の存在がセンター地理の中でも急速に大きいものになってきています。
[発展]100年ほど前にオーストラリアで金鉱が発見され、オーストラリア版ゴールドラッシュが生じた。金鉱を独占したいイギリス系白人は、中国などアジアからの移民を制限し、これが白豪政策の始まり。独立後も白豪政策は徹底されていたが、1960年代に勃発したベトナム戦争の難民を受け入れる必要性が生じたことから、1970年代初頭についに有色人種の移民が解禁され、白豪政策は終わりを告げた。こうした時代背景を確実に意識してほしい。白豪政策の影響がまだ強い1981年と、より積極的にアジアからの移民を受け入れるようになった2006年。
問6 正解;①
[インプレッション]これ、難しいや。さすがにポリネシア系はキツいでしょ。
[解法]②と③は簡単に不正解にできるでしょう。そもそもオーストラリアもニュージーランドも英語でキリスト教徒が多数を占める国であるし。問題は④なんだよね。これ、難しいよ。ニュージーランドの先住民のマオリ人はポリネシア系で、これはハワイやイースター島など日付変更線(経度180度)を越えた広い範囲の人々と同じ系統なのだ。ミクロネシアはグアム島など日本の近く(距離がミクロと覚える)、メラネシアはニューギニア(ギニア(アフリカ)人のような黒い肌を持っている。メラニン色素である)、そしてポリネシアはハワイ~イースター島~ニュージーランドの広い範囲(ポリ袋やポリバケツから広い、大きいをイメージする)。
[発展]ポリネシアの範囲が広いことを知っておこう。基本的には東太平洋全域だが、実はニュージーランドも含まれるのだ。
<第5問>
問1 正解;①
[インプレッション]今回最も解きにくかった問題の一つ。例えば、ボクがちょっと苦戦した問題に第6問問4があるんだが、そちらは計算によって白か黒かがはっきりする問題であり、一旦解答を出してしまえば自信を持ってマークすることができるんだが、こちらの問題は(文系的な)あいまいさを持っていて、絶対的な自信を持って解答を書き込むことができない。どこかでとんでもない勘違いをしているんじゃないかっていう不安が付きまとう問題ではある。
[解法]穀物自給のイメージを持っておいてください。穀物自給率が高い、すなわち穀物を輸出しているのは欧米の先進国。西ヨーロッパとアメリカ合衆国、カナダが代表的な穀物の輸出国なのです。日本が小麦の自給率が低いことから先進国は食料を輸入しているイメージを持っている人がいますが、これはむしろ例外的なことなのです。
②は誤り。西アジア諸国は乾燥した国土を持つ国が多く、農業生産は一般にふるいません。しかしそれでも決して栄養不足とならないのは、潤沢なオイルマネーがあるから。産油国は原油を輸出して得た財力で食料を買い、栄養供給を満たしているのです。
③も誤り。西ヨーロッパは全体として1人当たりGNIが高い国が多く、乳幼児死亡率は高くありません。これらの国で人口増加率が低いのは、出生率が低いことと、死亡率が高い(高齢化が進んでいるので、寿命を迎える年代が相対的に多い)からです。
ここまでは何とかなるんだが、ここからが難しい(涙)。①について検討してみよう。アフリカには栄養不足人口率が30%以上の国が多くなっているのはまさにその通り。「食料生産が人口増加に追いついていない」のかどうかが分からない。世界全体でみれば人口増加率は決して高くなく、食料生産の増加率の方が絶対に高い。大陸別に見ても、緑の革命に成功したアジアなどは明らかに「人口増加率<食料生産増加率」であり、アフリカにおいても判定が難しい。しかし、アフリカ大陸全体ならともかくとして、現に食料不足が生じている国においてはどうなんだろう。内戦や干ばつの影響も強く、「人口増加率>食料生産増加率」の国があってもおかしくはない。よってここは個々の話ではなく、あくまで一般論として考えてみる。アフリカの発展途上国の多くは食料自給率が低く、穀物の多くを輸入に依存している。植民地時代にプランテーションが開かれた国が多く、そうした国では商品作物の生産に主眼が置かれ、自給作物の生産は重要視されていない。食料生産が少ないことは確かなのである。どうかな、これをもって、①を正解としてみてしまっていいんじゃないかな。
一方の④。そもそもこうした文章正誤問題の多くで、④の選択肢は内容があいまいでどうにも判定ができないこともある。そうした選択肢はたいがい「解答」にはならないのだが(本問のように正文指摘問題ならば、誤文ということ)。この選択肢で最大のポイントは「アメリカ合衆国による豊富な食料援助」ってやつなんだよな。多少はあるのかもしれないが「豊富」っていうのがそもそも気になる。っていうか、南アメリカにはアルゼンチンという小麦輸出国もあり、ブラジルなどはそこからの輸入に依存している。決してアメリカ合衆国に食料を(しかも援助に)頼っていることはないように思うのだが。誤りとみていいんじゃないかな。
というわけで正解を確認すると①でした。良かった。今回の中で解答を確認したのはこの1問だけです。
[発展]この問題では、各選択肢で「図1から読み取れることがら」と「その背景」の両方が述べられている。前者についても後者についてもしっかり判断していかないといけない。例えば、選択肢①ならば、「アフリカでは本当に栄養不足人口率が30%以上の国が多いのか」と「その原因は食料凄惨が人口増加に追いついていないからなのか」の両方を判定する必要がある。それだけでもかなりの時間がかかってしまうがしょうがないよね。
それから、とくにこの問題なんか思うんだが、ある程度は感覚というか、君たちが普段生活していて感じる何かの雰囲気のようなものに基づいて考えることも必要になってくると思う。決して、全ての解答が論理的に説明できるのはなく、「何となく」そうなんじゃないかと感じることも大切である。地理はあくまで理系的な科目とは思うのだが、そうした文系的なセンスも時には重要となってくるのだ。本問について言えば、「やっぱりアフリカには、自給作物の生産がおぼつかなく、食料危機が生じている国もあるんだな」とか、「アメリカがそんなに安易に食料援助なんかするわけないじゃないか」みたいなもの。本問は確かに論理的な問題ではなく、すっきりと解答が得られるものではないんだけど、だからこそ逆にこうした「何となく」の感覚で取り組むべきものなのかなとも思う。テキストには使いにくいけれど、でも重要視してほしい問題ですね。
問2 正解;③
[インプレッション]今回唯一の都市名が問われた問題。しかし、実は本問にしても実は具体的な都市名が問われているわけではなく、あくまで「発展途上国の大都市」で生じている一般的な都市問題が問われているに過ぎない。本年には他に首位都市の問題も出題されており、実はネタかぶりでもあったりする。
[解法]ムンバイはインド西部の首位都市だが、こうした発展途上国の大都市で一般的に生じていることを考える。人口は過度に集中し、スラムの拡大などのさまざまな都市問題が生じている。
[発展]首位都市とは、その国で唯一の大都市のことをいうので、厳密にはムンバイは首位都市ではない。たしかにインド最大の都市ではあるが、東部のコルカタもムンバイに匹敵するような人口規模を有している。だからここは首位都市という言葉にはこだわらず、発展途上国の大都市で一般的に生じている事象(すなわち、人口が過度に集中するということ)を考えるべきなのだ。
問3 正解;②
[インプレッション]1人当たりGNIの値を具体的に知らないと話にならない!
[解法]1人当たりGNI一発の問題。①がバングラデシュ、②がフィリピン、③がブラジル、④がインド。
[発展]そもそも就労する児童の割合は1人当たりGNIに反比例するので、1人当たりGNIにさえ注目すれば就労する児童の割合は分かりきっていることでもあり、顧みる必要はない。ただ、なぜかインドの値が極めて低い(5.2%)なんだよね。これがちょっと意味がわからないんですけど。また、都市人口率は第3問問3でも登場しているけれど、これにも注目する必要はない。原則として1人当たりGNIに比例する指標ではあるけれど、それにしても例外が多すぎる(例えば韓国の方が日本より都市人口率が高いとかね)。そんな細かいことまで覚えても仕方ないので、都市人口率はセンター地理のレベルでは無視するのがベスト。結局、1人当たりGNIの問題ってことですわ。
問4 正解;⑥
[インプレッション]民族の問題。地理Bでは出題されても1問程度。内容もオーソドックスで、いいんじゃないでしょうか。
[解法]A;「第二次世界大戦直後、新たに民族国家」ということで、ユダヤ人国家イスラエル。ウが該当。
B;あまりセンターで出題されていない話題なのでぜひ知っておこう。トルコ東部の山岳地域からイラン、イラクなどにまたがって分布するのがクルド人。彼らは自身の民族による国家を持たない。イが該当。
C;ユーゴスラビア連邦の解体。1990年代にボスニアヘルツェゴビナなどに分裂し、内戦。アが該当。
[発展]こうした3つの組合せ問題の場合、2つの組合せが非常に重要で、残りの1つは消去法ってパターンが多いわけですが、本問は3つとも大切っていう実は珍しい形式。イスラエル建国は1948年なので、Aについては「第二次世界大戦後」という言い方にとくに注目しておくこと。それに対し、Cは1990年代なので時代がちょっと違っているね。最重要がクルド。過去問でも出題例があり、トルコ東部からイラン、イラクにかけての分布地域をしっかり押さえておくこと。
問5 正解;⑤
[インプレッション]東日本大震災以前にすでにこうした問題が作られていたことに注目。火力でもなく原子力でもなく、自然エネルギーの重要性はそもそも高いものなのです。
[解法]Pは水力主でノルウェー。ヨーロッパ最大の原油産出国でありながら、国内の発電は水力のみ。豊富な降水量と急峻な山地。Qは地熱発電でイタリア。地熱発電が行われているのはフィリピンやニュージーランドなど太平洋沿岸と、そしてイタリア。火山国である。Rが風力発電が盛んな国でデンマーク。西ヨーロッパは偏西風の影響が強く、風力発電が行われている。とくにデンマークは風を遮る山地地形が少ない平坦な国土を有する。
[発展]「風力=デンマーク」というネタはセンターがすごく好きなもの。小さい国(人口500万人)であり、発電量そのものは大きいものではないが、風力に依存する割合が高い。風力発電がさかんな国は「偏西風、平坦な国土」の条件を持つ西ヨーロッパ諸国(スペイン、オランダ、ドイツ、デンマーク)に限られており、そもそも季節風と台風の影響が強い山岳国である日本に適する発電方法なのかどうかは大きな疑問ではある。
第6問
問1 正解;④
[インプレッション]本年度ベストの一品。しかも問われている内容が、実は過去にほとんど取り上げられなかったトピックである点を考えると、ここ数年間でもっとも重要性の高い問題とも言える。
[解法]良問(本年度のベストでしょう)。緯度が異なる地点での気温年較差が問われている。海流の影響や海洋性気候、大陸性気候などの条件で多少は変化するものの、気温年較差を決定する最大の要因は緯度である。低緯度で気温年較差が小さく、高緯度で大きい。地球が地軸を傾けながら太陽の回りを公転していることで季節は生まれるのだが、赤道直下においてはそれでも年間を通じ太陽の出ている時間が変わらないので、気温年較差が生じない。
[発展]応用の効きやすい問題であるだけに、十分に研究しておこう。今まで気温年較差が問われるパターンは、同じ緯度の異なる地点において、海洋性気候(気温年較差の小さい)と大陸性気候(気温年較差の大きい)の差がポイントとなる問題が出題されたことがあるが、今回のように緯度差が気温年較差に反映することを直接問うたものは初登場ではないか。また地理Aではあるが、異なる地点における日の出と日の入りの時間の違いが問われたことがあり、地球と太陽の関係は正しく理解しておくことが必要となる。
なお、今回の問題についてはさらに注目することがあり、それは3地点ともに沿岸部に位置し、隔海度(海からどれくらい離れているか。つまり海洋性気候と大陸性気候の違い)は問題になっていないという点。緯度に加えて、海洋性気候と大陸性気候の違いまで合わせて、気温年較差が問われてくるとかなり難しくなってしまうと思うが、さすがにセンター地理のレベルではそこまでは出題されないだろうね。
問2 正解;②
[インプレッション]いい問題ですね!理系的な思考が必要となり、センター地理の典型的な問題といえる。難易度は高いと思うが、学ぶ部分は多い。
[解法]こうした自然環境下で「透明度が低い」とはどういうことか考えよう。水中に栄養分が多く、プランクトンが豊富な状態である(たとえば寒流は上から見ると濁っていて、暖流は透き通って見える)。マングローブは熱帯の干潟に見られる植生であるが、そもそも干潟というのは陸地から栄養分が流入するなどの理由で生物種が豊かで、貴重な生態系がみられる場所である。カがマングローブ。
つまりキがサンゴ礁であるのだが、サンゴ礁の形成のために必要な要素は3つ。塩分濃度、水温、透明度である。要するに、澄み切った暖かい浅海に生じるものなのだ。奄美大島なので暖かいという条件は最初から満たしているが、あとは「海水」、「透明度が高く」が重要。また「岩礫地」とあるがサンゴは石灰石であるので、岩は正しい。
さて、ここからはAとBの判定。透明度が高そうなのは広く外洋に接するAだろうか。ここをサンゴ礁とする。一方、Bがマングローブとなるのだが、実はマングローブ林の発達するもう一つの重要な条件に「汽水」というものがある。完全な塩水ではなく、一部に淡水が入り交じった状態。海に注ぐ河川の河口付近なら、塩水である海水と淡水である河川水が混ざり、マングローブに適した環境となる。どうだろうか。Bのような入り江になった地形は、しばしば湾奥に河川が見られるんじゃないかな。汽水環境が形成され、マングローブが繁ることとなる。マングローブの生育環境が問われた理科的な問題ですね。
[発展]マングローブよりサンゴ礁の生育環境をしっかり押さえておいた方がいいんじゃないか。サンゴ礁がみられる地域の条件として、「暖かい水温」、「透明度の高さ(日光)」、「塩分濃度の高さ(海水)」がある。このうち、海水は当たり前として、暖かな水温にしても十分に理解できるだろう。ポイントは「透明度」になってくる。澄み切った透明度の高い海域においてサンゴ礁が形成される。日光が届くことが条件になるのだから、「浅い海」であることも言うまでもない。
問3 正解;②
[インプレッション]家屋の建築の問題?と思いきや、実は地形図(土地利用記号)の問題っているフェイント。
[解法]照葉樹というのは常緑広葉樹の一種であるのだが、広葉樹には落葉広葉樹も含まれるなど、地形図で「広葉樹」の記号を見つけたとしてもそれが照葉樹であるとは断言できない。もちろんイジュやシイなどの樹種までは特定できない。
[発展]「地形図が表現できる情報は限定的なものである」ということに気付くかどうかなんだが。今回最も対策がしにくい問題の一つでしょう。
問4 正解;②
[インプレッション]何気に今回最も苦戦した問題ではあります。(一応とはいえ)計算しないと解答は求められないわけで、安易に解いてしまってはいけない。思考問題として非常に完成度が高く、ボクは大好きな問題ですね。
[解法]妙なグラフ。こうしたグラフを根性で読み解いていかないといけない。例えば10~14歳に注目してみよう。瀬戸内町から全国を引いた値が0.5であるのに対し、名瀬地区から全国を引いた値は1である。
(瀬戸内町の値)−(全国の値)=0.5
(名瀬地区の値)−(全国の値)=1
(瀬戸内町の値)=(全国の値)+0.5
(名瀬地区の値)=(全国の値)+1
よって(名瀬地区の値)>(瀬戸内町の値) となる。まず①は正解。
しかし、瀬戸内町にしてもやはり全国の値よりはプラスの方向にあるわけで、年少人口の割合は高いと考えるべき。従って②が不正解である。
[発展]直感だけでは解けない問題。グラフを正しく読み解き、数字の意味を考えながら正解(誤文)を導く。なかなか素人(ボクも含めてですが)ではこうしたグラフは書けないからね。感服した問題です。
問5 正解;③
[インプレッション]地形図問題。最も怪しいのは選択肢④の土地利用記号なのだが。
[解法]特殊軌道っていうのがないんじゃない?この直線によって表されているのは「送電線」だよね。ちょっと珍しい問題だな。追試だからかな。
[発展]というわけで、意外にも選択肢③の送電線が誤りポイントでした。まぁ、確かに送電線は出題率も高いんだけどね。さすがに特殊軌道っていうのはよくわからない(そもそも何なんでしょう・笑)。とはいえ、送電線は絶対に知っておくべき記号であるので、そういう意味ではオーソドックスなツボを心得た問題となるわけだ。
問6 正解;②
[インプレッション]なるほど、これは地理Aとの共通問題なわけですね。地理Bでは出題されにくいネタでしょう。
[解法]こうした国際条約もまず地理Bの本試験では出題されない。マーストリヒト条約は、EUがECから改組される時の条約。1990年代前半に結ばれた。
[発展]地理B本試験で出題される可能性は低い。国際条約は無視しましょう。
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