たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2006年度地理B追試験[第2問]解説

2006年度地理B追試験[第2問]

本試験と同様に第2問に地域調査の大問が登場している。とりあげられているのは山形県の飛島。山形県は02年にも登場している。北海道や東北地方が地域調査で取り上げられる頻度はなぜかかなり高い。飛島は、(地理Bに改定される以前の)地理の試験でも取り上げられ、その時は「長島」という名称だったが、良かったら古い問題から探してみてください。

問1 [講評] 思考問題としてよくできていると思う。こういった問題を苦手に考えている人もいるんじゃないかな。センターではしばしばみられるパターンのネタだが、意外に模試ではこういったパターンの問題はほとんどみられないんだよね。本問を通じ、感覚的に解くセンスを磨いてください。

[解法] 素直に考えるしかないんだよね。地理的な「平面的」情報を提供する地図(この場合は土地利用図であるが、地図の一種である点には変わりないだろう)において、歴史的な「垂直的」情報を表すのは不適である。これに気付けば難無く解答できるのが、どうなのかな。

[学習対策] 地図に示されないものは二つ。歴史的な経緯と、プライベート情報。たとえば「土地利用図を参照して、それぞれの土地の所有者の名前を調べる」といった内容は誤り。他にも考えられる出題パターンはあるが、とりあえずこれだけ知っておいてください。

問2 [講評] 僕はこういった問題は好きです。だって表を見るだけで解答できるじゃない?こんな「見るだけ」問題、楽勝だよ(笑)。でも君たちに知っておいて欲しいのだが、こんな問題でも正解率は100%ではない。いや、むしろ単に知識を問うような問題よりも正解率が低いことさえある。どうしてなんだ?文章を読み、表と対応させるだけだぜ。君たちの慎重さと読解能力に期待する。

[解法] グラフや表を参照し、文章を読解するだけの問題。

1 う~ん、どうだろうか。たしかに「大きな」差はみられないようだが。とりあえず正文。

2 具体的に12月から2月ぐらいまでの期間を参照したらいいんじゃないかな。たしかに飛島の方が降水量が多くなっている。正文である。

3 まず「各月とも飛島の風速を上回る」ことを確認。たしかにその通りである。では「その差が冬季に大きい」ことはどうだろうか。冬季はいずれも「4」以上の差があるが、夏季の値にはそこまでの差はない。これは絶対に正文でしょう。

4 日照時間を比べる。仙台市であるが、12月が145、1月が151、2月が152というように冬季の値が大きいのに対し、6月が128、7月が128であるなど夏季の値の方がむしろ小さい(8月は155もあるけどね)。これが誤文である。

[今後の学習] こういった「見るだけ」問題は落としたらもったいないので、確実に得点すること。こんな誰でもできる問題で失点したら、君の一年間の努力があまりに無駄すぎる。センター試験ではとにかく時間をかけてゆっくり解くことを心掛けよう。ゆっくり落ち着いて解くことこそ、この問題で正解するたった一つの冴えたやり方なのです。

ちなみに本問でちょっと気になるキーワードがあるので、それもチェックしておこう。それが「日照時間」。具体的には「太陽が出ている時間」のことで、おおまかに「晴天日数」に比例すると考えればいい。逆にみれば、「雨や雪が多い時期は日照時間が少ない」といえるわけで、とくに冬季に雪が降り続ける日本海沿岸の地域でとくに日照時間が小さくなる。

本問においても、日本海側に位置する飛島では12月から2月の雪の降る季節には、日照時間が40~60程度とたいへん小さくなっている。1か月間で40時間しか太陽が出ていないっていうのは、太平洋側に住む人間からみると考えらない別世界の出来事!例えば、日曜日から金曜日までずっと曇りか雪で、土曜日に1日だけ晴れる(10時間ぐらい太陽が出ている)っていうことだぜ。

「冬の日本海沿岸地域は日照時間が少ない」ということだけしっかりイメージしておこう。

問3 [講評] ビックリするぐらいオーソドックスな地形図読解問題。こういうの大好きだぜ(笑)。

[解法] 1 「島の北西部」を確認。ここに広がっているのは「岩礁」。満潮時には海面下となるが、干潮時には陸地となる磯の部分。「水深が浅い」とみて妥当だと思う。正文である。ちなみに海岸線も、最北部の「八幡崎」付近は「岩石海岸」と「岩の崖」、そこからしばらく岩石海岸が続き、「法木」集落を経て、「クンセ島」方向へと至る海岸線にも「岩の崖」が迫っている。まさに断崖絶壁が迫る険しい地形となっているのであろう。法木集落には護岸工事がなされた港湾施設のようなものがみられるが、かなり苦労してここまでのものを造り上げたんじゃないかな。

2 また「灯台」かよ!?これだけ毎年灯台の地図記号が問われるなんて、ちょっとした灯台バブルだな(笑)。っていうか、こんな感じでセンター試験っていうのは同じネタが問われ続けるので、前年度の問題を徹底的に研究しておけば、必ず被るネタは多いっていうこと。たしかに最高点である「68」の独立標高点付近(「高森」っていう字があるよね)には「灯台」があったりする。正文です。

っていうかそもそもこういった「地図記号」を問う選択肢が解答であるわけがない。本問のような誤文指摘問題ならば、これは絶対に正文だよ。過去にあった問題でも当たり前のように「灯台」を含む選択肢は解答にはなっていません。

3 灯台のような「地図記号」に犯人はいないが、限り無くクロに近いのは「土地利用記号」を含む選択肢。さぁ、怪しいヤツが登場したぜ、「果樹」なんて言葉が登場している。どうせこいつが犯人に決まっているよ。

そんな先入観はホントはいけないんですが(笑)、一応確認していこう。「南西部の段丘上」というのは、南西部にみられる20mの等高線と30mの等高線に囲まれたやや平坦になっている部分のことだろう。ここにみられる土地利用記号は「針葉樹」である。周囲を見渡しても「荒れ地」や「畑」ばかりであり、「果樹園」はみられないね。よってこれが誤りであり、解答になる。

4 「細長く形成された」集落というのは、「戸ヶ崎」から「飛島港」付近にまでみられる道路に沿った集落列のことだろう。とくに問題はありません。正文です。

以上、1では「岩礁」のような海岸地形が問われ、2では地図記号、3では土地利用記号、さらに4では集落のような目で直接見れば判断できる情報が、それぞれ問われている。基本中の基本だと思いますよ、やっぱり土地利用記号が一番怪しいって。

[学習対策] 新課程になって地形図問題のウェイトが高まっているのは事実だけれども、それと反比例するかのように問題そのものは易化している。内容もオーソドックスとなっており、必ずや得点源としてほしい。

とくに本問に典型的にみられるように、「土地利用記号」が狙われるケースが圧倒的に多い。土地利用記号は徹底的に知っておくこと。「田」「畑・牧草地」「果樹園」「広葉樹林

」「針葉樹林」「茶畑」「桑畑」「荒れ地」はもちろんマストアイテムだが、これ意外に「しの地」「ヤシ・しゅろ類」も出題されたことがあるぞ。

問4 [講評] これも「見るだけ」問題なわけだ。時間を芳醇に使い、優雅に解答を導いてください。でも、計算をミスっちゃダメだよ!

[解法] それぞれの選択肢を検討していこう。

1 それぞれの島における、最も観光客が多い時期と少ない時期を比べる。出島は多い月が「5600」、少ない月が「1400」。その比はおおよそ3倍。飛島は多い月が「11900」、少ない月が「200」。その比は50倍以上。よって飛島の方が変動が「大きい」。

2 「人口に対する観光客数の割合」なので、観光客数が分子、人口が分母。それぞれ計算してみると、出島が「12600÷645」、飛島が「16700÷316」となる。値が大きいのは飛島。よってこの選択肢は誤り。

3 「日帰り客」について考えないといけないのだが、わかるかな。観光客のうち、宿泊しなかった者が日帰り客と考えていいだろう。出島の日帰り客は「12600-1400」で「11200」である。飛島の日帰り客は「16700-10500」で「6200」。さらに観光客総数に占める日帰り客数の割合は「日帰り客数÷観光客総数」となるので、出島が「11200÷12600」、飛島が「6200÷16700」。出島の割合の方が高い。

4 それぞれ「宿泊者数」を「宿泊施設数」を割って、「1宿泊施設当たりの宿泊者数」を計算してみよう。出島は「1400÷5」で「280」、飛島は「10500÷23」で「456.5」となる。飛島の方が多いので、これが正文。

[学習対策] 計算の過程を含んだ「見るだけ」問題である点に注目。本当に計算はていねいにやってください。何で地理なんていう社会科科目で計算なんてしなあかんねん!っていう君は考え方を改めてください。地理は統計学の側面を含み、そこでは計算という作業が非常に重要となっているのです。

ここからはちょっと「悪魔のセオリー」なんだけど、こういった「見るだけ」問題って実な選択肢4が正解(誤文指摘問題ならば誤文、正文指摘問題ならば正文)になる例が非常に多かったりするわけだ。問2もそうだったでしょ?つまりラストまでしっかり文章を読ませて、そこで初めて解答が得られるような作りになっているということ。問題を作っている側もイジワルだよね、いきなり選択肢1が正解ならば、最後まで読む必要はないんだから、時間の節約になるのに、答えがラストやねんから時間ばっかりかかって仕方がない。でも、しょうがないよな、選択肢4までとことん付き合って、解答を探し出すしかない。宝物は必ずやゴールの果てにあるものだけれども、時には青い鳥のように今僕らがいる場所に存在しているのかもしれない。

問5 [講評] 徹底的に「見るだけ」問題が連発する第2問。そしてこれもまた計算の過程が必要になってくる「見るだけ」問題なのだ。簡単だから落としてはいけない。しかし、ハードルは低いわけじゃない。集中力の勝負なのだ。

[解法] それぞれ計算の過程が重要となってくる。統計学の側面がある。

1 「率」だよね。それを忘れないように。率の計算は、「変化した数」を「もとの数」で割る。この場合は「減少率」なので、10年間に減少した数を、基準となる年の人口で割って求めよう。

1980~1990年の人口減少率は、「300÷900」で約30%となり、1990~2000年の人口減少率は、「300÷600」で約50%となる。減少率が高いのは、1990~2000年である。誤文。

2 「3人に1人」だろうか。それどころか限り無く「2人に1人」に近いと思う。誤文。

3 65歳以上の人口はほとんど変化していない。若者が流出し、老人ばかりが取り残されているのだ。誤文。

4 14歳以下の人口はたしかに減少している。その親の世代といえば、40歳周辺の年代だろうか。「15~64歳」も減少している。

[学習対策] 「見るだけ」問題だなとわかった瞬間に、どうせ選択肢4が正解(つまり正文)なんだろうなと思っていたけれど、やっぱり4が正解でした(笑)。それでもやっぱりちゃんと選択肢1から検討していかなくてはいけない。焦って、先を読もうとしてミスってしまうより、不器用でいいから一つ一つ落ち着いて検討していって、その果てに確実に解答に辿り着いてほしい。地理の選択者には理系が多いし、そういった者の多くは将来的に研究者になりたいと希望しているんだろうけれど、研究や実験っていうものこそ、そんな地味な作業が必要なものじゃない?おそらくこういった結果になるんだろうな、って推測できたとしても、順を追って一つ一つの検証実験をくり返す。そういった忍耐とか集中力、そして慎重な姿勢というものが、我ら人類の科学文化を発展させていった最大要因であると思うわけだ。要領の悪いことを恥じるな、むしろ不器用であることを誇りに思え。ウサギの瞬発力ももちろん大事だけれども、カメの確実性はそれ以上に大切だっていうこと。

問6 [講評] ここでいきなり人口構成の問題。ベタだよなぁ、よっぽどネタに困ったと見える(笑)。でも、普通は年齢別人口構成の図なんて一つにまとめちゃうのに、ここではわざわざ3つの図に区分して示している。その点がちょっと特殊で、わかりにくい印象があるんだよな。

[解法] 問われている内容はベーシックだ。しかし問われ方が特殊なので、慎重に解かないといけない。

こういった問題では最もキャラの濃い県に注目するべきだろう。最も明確なキャラをもつのは「郊外」の諸県。東京大都市圏に位置する埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪大都市圏に位置する滋賀県や奈良県など。いずれも「人口増加率の高い」特徴を有する。

「人口増加率の高い地域では幼年人口率も高い」という公式に従い、これら5つの県がいずれも「高」となっている(5つも見るのが面倒だったら、千葉県だけ見ればいいよ。カドにあるからわかりやすいしね)ウが「14歳以下」である。

残るアとウだけれどもわかりにくいかな。ここは「幼年人口率と老年人口率は反比例の関係にある」という公式を利用したらいいと思うよ。ウと正反対の傾向をもっているのは、アとイのいずれだろう?アとウでともに「高」となっている県はいくつもある(茨城県、栃木県、愛知県、滋賀県など)のに対し、イとウでともに「高」となっている県は存在しない。さらにイとウでともに「低」となっている県も存在せず、まさにこの2つの図は「正反対」の関係にあることがわかる。イが」「65歳以上」である。

残ったアが「15歳以上64歳未満」である。「生産年齢人口」と呼ばれるこの年代は、幼年人口や老年人口ほど地域による差異は激しくない。とくに意識しないでいいだろう。

[学習対策] ア(生産年齢人口)は無視してください。イ(老年人口)とウ(幼年人口)のみ徹底的に観察すること。

人口増加率の高い「郊外」と「地方中枢都市」のキャラクターを持つ、それぞれ「埼玉・千葉・神奈川・滋賀・奈良」と「宮城・愛知・広島・福岡」が、全て「イで低く、ウで高く」なっていることを確認する。さらに「都心」的キャラの「東京」「大阪」でもこの傾向があるが、「郊外」や「地方中枢」に準じるものと考えたらいいと思う。

ポイントはそれ以外の「地方」である。人口増加率は低く(「マイナス増加」である。つまり「人口は減少している」)、そのため幼年人口割合は低く、老年人口割合は高くなる。

とくにこの傾向がはっきりしているものを図中から選び取ってみよう。幼年人口割合が「低」で老年人口割合が「高」となっているのは、岩手、秋田、山形、長野、鳥取、島根、山口、徳島、愛媛、高知、大分、熊本、鹿児島の各県。東北地方や山陰、四国や九州南部に目立つ。日本で本当に「ヤバい」地域はこういった場所なのだ。

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