たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんもこんな問題を間違えているのです(涙)
たつじんでもセンターの問題を間違えたりするのです(スンマセン・・・)。それらについて、反省&言い訳をさせてください(涙)。なお都合で図がありませんがが、出典も明示していますので過去問集で問題を直接見てくださいね(PDF版には図があります)。 |
[1]タクミさんは、天日乾燥による製塩が鳴門市で盛んであったことを知り、気候の特徴を調べた。次の図3中のア〜ウは、徳島県東部地域で観測点のある徳島市、鳴門市の友好・親善都市である福島県会津若松市、沖縄県宮古島市のいずれかの都市の月別日照時間を示したものである。ア〜ウと都市名との正しい組合せを、下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2013年度地理B本試験)
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ |
会津若松市 | ア | ア | イ | イ | ウ | ウ |
徳島市 | イ | ウ | ア | ウ | ア | イ |
宮古島市 | ウ | イ | ウ | ア | イ | ア |
こういう問題って「日本海側地域の雪」が重要なポイントになるのだけれど(つまりそういった地域は冬季の日照時間が極端に短いっていうパターンね)、福島県会津若松市は東北地方の寒冷な気候はみられるものの、日本海に面する都市ではなく、雪の量は少ないはず。つまり、冬の日照時間については実は結構長いんじゃないか?っていう懸念も生じる。他の都市とどう違うんだ???全然わからないぞ! こうした「難問」については、問題文の内容に素直に反応してしまうのが得策。とくに本問のように問題文が4行以上あれば、必ずそこに答えを解くカギが隠されていると考えていい。気になるには「天日乾燥」が盛んだったという事実。なるほど、徳島市は好天に恵まれた地域に位置する都市なのだろう。他の2つに比べ、明らかに日照時間が長いとみていい。ここでグラフを参照。夏の間の日照時間については、細い月ごとの差異はあるけれど、数ヶ月単位でみるならば、ア~ウに大きな違いはない。結局ポイントは冬の日照時間なのだ。イとウは短く、アだけ長い。先にも言ったように雪国においては冬の日照時間は極端に短くなるのだが、本問の場合は、徳島市と宮古島市はいずれも温暖な地域に位置し、雪は降らないだろう。降雪量の多い可能性があるのは会津若松市だけなのだが、ここにしても日本海側の地域ではない(福島県は太平洋に面した県だね)、決して雪国というわけではないようにも思えるのだが。 いずれにせよ、とくに冬の日照時間が多いのはアの一つだけなのだ。ここは素直に考えましょう。「徳島=日照時間が長い」と考えてしまっていい。アを徳島市と断定する。なるほど、確かに徳島市の位置する瀬戸内地方は、夏季の南東季節風のもたらす水分が四国山脈によって、冬季の北西季節風がもたらす水分が中国山脈によって、それぞれ遮られるため年間の降水量が少ない地域となっているだ(これは中学地理の知識だね。中学校の勉強は必須だよ!)。 さらにイとウの判定なんだが、この2つのグラフの形がそっくりなのが辛い。とはいえ、明確に異なっている部分もあり、それが5月から7月。5月が最低値であり、そこから7月にかけて値が上昇していくイに対し、5月から7月にかけて下がっていくウ。本来なら、夏至に近い7月の日照時間は北半球ならば長くなって当たり前であるのに、こういった動きがみられるのはなぜだろうか。 そう、これって「梅雨」だよね。6月後半から7月前半にかけて日本は梅雨のシーズンとなり、前線に覆われる。曇りの日が多くなり、日照時間は短くなるのだ。ただ、イについては、上述のように5月が低く、7月が高くなっている。つまり5月の方が雨や曇りが多く、7月は快晴になるっていうこと。そうか、なるほど、これは「梅雨の時期」の違いなのだ!と思い当たった君は大正解。沖縄の梅雨の時期は早く、5月には入梅する。梅雨前線はしだいに北上し、西日本は6月が梅雨の中心となり(なるほど、たしかに徳島市では6月に日照時間が大きく低下している)、東日本では7月の半ばほどまで梅雨が続くことが普通である(ちなみに北海道は梅雨がありません)。イで5月、アで6月、ウで7月と日照時間の短くなる時期がずれているのは、まさに梅雨前線の移動を考えたらいいんじゃないか。イが宮古島市、ウが会津若松市、正解は⑤となります。 こんな感じで、たしかに難問ではあるんだけど、考えるポイントの多い良問でもあるのだ。日照時間については「冬の日本海側でとくに短くなる」ことこそ特徴的と思っていたのだが、こうした問題を目の当たりにすると「梅雨となる時期」も非常に重要なのだなということがわかる。日本にしかみられない特殊な気象パターンである梅雨について、深く印象付けることが大切なのだ。 ちなみに、宮古島は6月から9月ぐらいまで台風に多く襲われると思うのだが、台風は日照時間に与える影響は小さいみたいだね。 |
[2]次の表1は、アメリカ合衆国のいくつかの人種・民族について、その社会経済的地位に関する現状を示したものであり、①〜④は、アジア系、アフリカ系、ヨーロッパ系、ヒスパニックのいずれかである。ヨーロッパ系に該当するものを、表1中の①〜④のうちから一つ選べ。(2012年度地理B本試験)
表1(単位:%)
| ① | ② | ③ | ④ |
大学院修士号以上の取得者(*) | 19.9 | 11.0 | 5.9 | 3.9 |
製造業の従事者(**) | 7.5 | 6.1 | 7.5 | 10.4 |
農林水産業の従事者(**) | 0.2 | 0.5 | 0.3 | 2.3 |
(*)各人種・、民族における25歳以上人口に占める割合。
(**)各人種・民族における16歳以上民間被雇用者に占める割合。
統計年次は2005年。『現代アメリカデータ総覧2008』により作成。
これは完全に間違えた問題です(涙)。正直、今だにピンと来ない。この問題のポイントっておそらく「農林水産業の従事者」だよね。移民は原則として、雇用と高賃金を求め都市に流入よね。第2次産業や第3次産業に就業することが主であり、相対的に第1次産業の従事者は少なくなる。なるほど、「0.2」と「0.3」の①と③が移民となり、残った②と④が旧来の「アメリカ人」である。旧来のアメリカ人とは、独立当初からこの国を形作ってきた、ヨーリッパからの移民や黒人奴隷の子孫たちである。ヨーロッパ系とアフリカ系が②と④に該当するのです。 ①と③が移民すなわち、華僑(中国からの移民)やその子孫を中心とした「アジア系」、あるいはメキシコからの移住者およびその子孫を中心とした「ヒスパニック」に該当。この2つの判定については、シンプルに「大学院博士号以上の取得者」でいいと思う。華僑(中国からの移民)は移住当時は貧しかったが、商業などで財を成した者も多く、高所得者であるだけ学歴も全体的に高いとみていいだろう。また、近年は富裕層の移住者も増加しているだけでなく、そもそも留学生としてアメリカ合衆国へとやってきて、そのまま永住する人もいるのでは。①を「アジア系」と判定し、残った③が「ヒスパニック」である。 このように後から考えてみれば、確固とした理由をつけることができるのだけれども、実際に試験で出題された場合、ここまで考えを深めて解答できるかっていうこと。難問だわな〜。 |
[3]次の図2中のA〜Dの海域・地域では、様々な環境問題が発生している。それらの環境問題について述べた文として適当でないものを、下の①〜④のうちから一つ選べ。(2009年度地理B追試験)
① A海域では、産業・生活排水による水質汚濁の問題がみられる。
② B地域では、過剰な灌漑による土壌の塩類化(塩性化)の問題がみられる。
③ C地域では、過耕作や過放牧による土壌侵食の問題がみられる。
④ D地域では、過剰な農地開発による熱帯林破壊の問題がみられる。
①と④は問題ないわけです。Aの北海は、極めて浅い水域(大陸棚が広がっているのです)でありそもそもの水量が少ないこともあって、汚染されやすい海域ではあります。海底油田の開発による海洋汚染、パルプ工業による排水の流入、(周辺が人口密度の高い地域であることから)生活排水による汚濁など、さまざまな要因が考えられます。 さらに④。これも正文ですね。ブラジルの熱帯雨林は、サトウキビ農園や肉牛飼育用の牧場などの開発によって、森林が失われています。 ただ、ここで困ってしまうのだ。②と③の判定が難しい。どっちも誤っていそうなのだ(涙)。 まず②について。「過剰な灌漑による土壌の塩類化」は乾燥地域において生じる環境問題で、砂漠化の原因ともなることで知られています。伝統的な灌漑農業地域(オアシス農業地域)では、点滴灌漑などの節水農法によって土壌の塩類化を防いでいます。ただ、Bのエリア(ナイジェリア南部でしょうか)は、熱帯雨林であり、農業区分でいえば「焼畑農業」地域に当てはまるのです。草木灰を利用してキャッサバを栽培します。「土壌の塩類化」というのは、強アルカリ性になるということなのですが(乾燥地域の土壌はアルカリ性と知っておいてもいいでしょう)、熱帯の土壌であるラトソルは酸性であり、塩類化が生じるわけがないのです。これ、誤文でしょう! ただし、③もすごく怪しいんですよ。「過耕作や過放牧」と「土壌流出」がキーワードです。 まず「過耕作と過放牧」について。連作など土地に負担をかける農業を行うことで地力が低下し、草すら生えなくなってしまう。家畜を過剰に放牧し、草を根こそぎ食べ尽くしてしまう。いずれも砂漠化の要因であり、サヘル地域でとくに顕著にみられる事例ですよね。ただ、砂漠化そのものはサヘル地域限定の事例ではなく、世界中の半乾燥(ステップ)地域の全てにおいて生じているとみて間違いありません。なるほど、オーストラリアは降水量の少ない乾燥大陸であり、ステップ地域も広がっているだろうし、砂漠化が生じることは否定できない事実でしょう。ただ、過耕作と過放牧がどうなのかなっていう。過剰な耕作や放牧は、高い人口増加による食料増産の必要性に起因すると考えることが一般的。アフリカ(サヘル地帯)のような人口爆発が生じている地域でこそ過耕作と過放牧が深刻なのであって、それがオーストラリアに該当するのだろうか。企業的な農牧業が行われているオーストラリアの状況は、アフリカとは全然違うようにも思えるのですが。 さらに「土壌流出」。これも乾燥・半乾燥地域でみられる環境問題で、とくに深刻であるのが(テストによく出題されるのが)、中国・黄土高原とアメリカ合衆国・中央平原。黄河上流部の黄土高原は砂漠化が進む地域でありますが、とくに風の影響によって細砂が流出し、黄河に流れ込んでいます。アメリカ合衆国においても森林が伐採され、耕地化が進んだことで、雨や風(比較的降水量の多い東側のプレーリーでは雨により、降水量の少ない西側のグレートプレーンズでは風により)地表付近の土壌が侵食され、失われていきます。果たしてこれがオーストラリアで生じているのでしょうか。日本のように森林が深く根を張る土地ならば、土壌侵食・土壌流出の被害はほとんど生じないのですが、森林のみられない砂漠やステップ、大規模な耕地などにおいては顕著な環境問題となります。ただ、オーストラリアは斜面は少ないので、土壌がこぼれ落ちるようなケースは少ないようにも思うのですが。
というわけで、僕はこのように考え、正解(誤文)を②と③とで徹底的に迷ったのです。で、結局、③を答えにしてしまったような。。。解答をみたら、②が正解でした(涙)。 考え方としては上記のもので合っていたと思います。ただ、③に関する解釈が甘かった。オーストラリアは広くステップが分布する(牧場・牧草地面積割合が極めて高いのです)国なのですが、こうした土地においては必ず砂漠化が生じています。そしてそこで盛んに農牧業が営まれている以上、「過耕作」や「過放牧」が行われているとみて間違いありません。さらにそうした状況で砂漠化が進めば、風や雨の影響によって地表面の土壌が流れ出す環境問題は必ず起きるのです。 「半乾燥地域(ステップ)においては必ず砂漠化が生じる」ことが何より大切で、「砂漠化の要因として過耕作や過放牧がある」ことも絶対に知っておくべきです。そして、「植生が失われ裸地になった土地においては、風雨によって土壌流出・土壌侵食が生じる」ことをぜひ押さえておきましょう。オーストラリアが乾燥大陸である以上、③のような事例は常に深刻なのです。 ちなみに、ここでは「裸地」という言葉を用いましたが、裸地と砂漠は同じ意味ですので、知っておくといいでしょう。また、「土壌流出」と「土壌侵食」という言葉を使っていますが、これらも同じ意味です。区別の必要はありません。
なお、2012年度地理B本試験では以下のような問題も出題されています。 |
[参考1]農業は、自然環境の影響を受けるが、その一方で、人間は水不足などの不利な条件を克服し、作物の栽培地域を広げてきた。ただし、こうした農業活動は、環境に負荷も与えている。世界の灌漑農業について述べた文として下線部が適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012年度地理B本試験)
① アメリカ合衆国のグレートプレーンズでは、センターピボット灌漑によるトウモロコシや小麦の栽培が行われてきたが、これによって地下水位が低下している。
② イランの乾燥地域では、カナートとよばれる地下水路を利用して麦類やナツメヤシの栽培が行われてきたが、近年では、動力揚水機が普及し、土壌の塩性化(塩類化)が生じている。
③ オーストラリアのマリー(マーレー)・ダーリング川流域では、灌漑によって小麦の栽培が盛んになったが、一方で、土壌の塩性化(塩類化)が問題となっている。
④ 中央アジアのアムダリア川とシルダリア川流域では、灌漑によってサトウキビの栽培が盛んになったが、一方で、アラル海に流入する水量が極端に減少している。
正解は④で、「サトウキビ」を「綿花」に改めてください。アラル海の縮小の原因は、旧ソ連による綿花の大規模栽培にあるのです。 ポイントは③です。「マリー・ダーリング川流域」は、上の問題のC地域に該当します。とくにマリー川という名前は覚えておいてください。代表的な外来河川(乾燥地域を流れる川)です。降水量の少ない地域ですが、大陸東岸の多雨地域を流れる河川をせき止め、トンネルによって山脈の地下を導水することによって灌漑がなされています(スノーウェーマウンテンズ計画)。これによりマリー川流域は大規模な企業的穀物農業地帯として、小麦が盛んに栽培されるようになりました。 ここで重要なキーワードはもちろん「土壌の塩性化(塩類化)」ですね。過剰な灌漑によって、地中の塩類が地表面へと持ち上げられ、土壌が強アルカリ化します。これが塩害であり、やがて砂漠化へとつながり、さらに土壌侵食の被害も生じるのでしょう。オーストラリアにおいてもこうした環境問題が深刻化していることを想像しましょう。 |
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