たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2000年度地理B本試験解説

2000年地理B本試験

平均点が60点を下回るという難問。ただし01年や02年のように明らかな悪問というものはなく、全体的には良い問題が並ぶ。ともすれば政治・現代社会ネタに偏りそうな第1問における「情報・経済の国際化」分野からの出題もうまくセンター地理っぽく処理してあるし、うまいなあと思う。第2問はそれほどでもないけどね。第3問はセンター試験的ではない問題がちょっと多いような。第4問は良い。ちょっと時間を食いそうだが、図表を用いた思考問題が並び、見事!しかしとくに傑作なのは第5問。こりゃ上手いなあ~。ネパールとかチベットとかそういった特殊な場所を扱いながら、それらの地域についての知識は全く問われていない。ほぼ完全な思考問題ばかりでかなりの名作だと思う。

 

第1問 第2問や第3問が難しいだけにここは全問正解が欲しい。問1は見慣れない図なので戸惑うのだが問題自体は楽なので必ずゲット。問3や問5のような表を用いた統計問題は落としてはいけない。問4も難しくはない。問7もEU(EC)の加盟国、1人当たりGNPの高低という必須ネタを用いた問題なので、絶対に得点する。問2や問6は一見、政治・現代社会ネタなのであるが所詮は地理の問題なんだという開き直りが必要。地理的なキーワードである「東アジア」「アフリカ」「アジア」などに注目すれば簡単。とにかく全問正解を狙ってほしい。ただし図表問題も多く、時間がかなりかかりそうなんやなあ(涙)。精神力と集中力が重要か!?

 

問1 時差の問題。かなり珍しいと思う。でも簡単だね。ただし図の読み取りに手間取るかも。

この図のままだと分かりにくいので表にしてみよう。

証券取引所とあるが、別に普通の会社だと考えたらいい。営業時間(取引時間)について以下の表のようにまとめてみる。

始業時間  終業時間

1   0:00    6:00

2   2:00    7:30

3   9:00   16:30

4  14:30   21:00

上の時刻は全てGMTで示されている。GMTとは世界標準時のこと。世界標準時は経度0度における時間帯、つまりロンドン時に合わせて設定されていることを知っておかなければこの問題は解けないわけであるが。でもこれくらいは中学生でも知っているよね。

というわけで、ロンドン時間で最も標準的な勤務時間となる3(9時から仕事を始めて、5時前に終わる)をまさにロンドンの証券取引所の取引時間と見ていいのではないか。

日本の標準時子午線は東経135度である。経度差15度で1時間の時差が生じる。東に行くほど進んでいる。ロンドンの東にある日本では、ロンドン時間より時間が進んでいる。135度なので(135÷15=9)となり、つまり9時間の時差があることになる。選択肢3から比べて、9時間早いのは選択肢1。これが東京だろう。ロンドン時で0時から6時まで取引しているということは、現地(日本)の時刻でいえば9時から15時までということ。納得である。

同様に選択肢2は、東京よりやや西で、ロンドンからは東にあたるホンコン。4はロンドンよりも西にあって、ロンドン時よりも遅れている米国ニューヨーク。

 

問2 こういう時事っぽい問題は難しい。っていうか、そんななん知るわけがない。現代社会みたいな問題ではあるけれど、そこはやっぱり地理的な視点から解いてほしいところ。

選択肢4にある「東南アジア」「アフリカ」のような地域名には注目してほしい。地理では都市名なんか話題とされないし、国名にもそれほど関心を払わなくていい。しかしこういった地域名が登場した場合にはちょっと気を配ってほしいな。

また、政治的な話題は地理にはほとんど関係ないが、経済についての話題は重要。ここでも「海外直接投資」という金に関するキーワードが登場している。日本の企業がどれだけ金をその国に対して使ったかということなのだが、主に工場施設をどれくらい使ったのかを表す指標だと考えてほしい。

日本との経済的なつながりが深いのはアフリカよりも当然東南アジアである。よって4を誤りとするのはた易いことだろう。

99B本第3問問4参照。ここで「海外直接投資」が取り上げられている。アジア地域だけのものであるが、それでもさかんにこの地域に日本の工場が進出していることが推し量れるだろう。

01B本第2問問3問4でも海外直接投資が登場。ただしこれらの問題はよくわからんのでパス(涙)。

一応、他の選択肢についてもコメント。

1;98B追第1問問6参照。フランス南部の○は航空機工業のさかんな都市ツールーズを表している。ここには「EU諸国による旅客機の共同生産にかかわる組立工場が立地している(選択肢1より)」。このように、EU加盟各国でさまざまな部品が製造され、それがフランスで組み立てられ航空機として完成品となる。

2;よくわからんが、まぁこんなもんなんやろ。

3;日本のメーカーは米国に現地法人(日系企業)を設立し、そこで日本車を製造している(米国内で製造しているので、統計としては米国車の生産に含まれるが、日本メーカーが設計・開発した自動車である)。この(米国内で生産された)日本車は米国人のために米国内で販売される。これを現地生産という。現地生産により、日本から米国への自動車輸出は減少し、日米の貿易不均衡はやや和らぐ(これを貿易摩擦の解消と呼ぶ。しかし未だに日本は黒字国で米国は赤字国であり、日本は世界最大の自動車輸出国であり米国は世界最大の自動車輸入国である)。

円高というのは、つまり日本の経済レベルが上昇するということ。日本国内で製造するのはコスト高である。どうせ米国に輸出するのならば、最初から米国内で生産した方がいいよね。円高も米国における日本車の現地生産を推進した大きな要素の一つである。

 

問3 統計を読むテクニック。絶対的な数量と相対的な数量の違いを意識する。

表1参照。「パソコン保有台数(万台)」は絶対的な数量であり、実数。実際に数えることによって求められる。

「電話回線数(千人当たり)」と「携帯・自動車電話契約数(千人当たり)」は相対的な数量。実際に得られた数量を、人口で割ることによって求められる数。割合や率のこと。

01B第5問問6参照。相対的な数量(割合・率)は階級区分図によって表すことが適当。それに対し、絶対的な数量(実数)は階級区分図より他の統計表現を用いた方が適当。円積図やカルトグラムなど、量の多少を視覚的表現で直接的に表すものの方が適している。問題文中に「単位となる領域の面積に大小の差がある場合、面積が増加するとそれにつれて増加する性質のある指標」とある。まさにこれは実数の特徴。母体数が大きければ、統計数字も大きいものとなる。面積が大きくなれば、期待される人口数も大きくなる。狭い地域と、広い地域との人口を比較すれば、後者が前者を上回るだろう。もちろん狭い地域に莫大な人口がひしめくこともあるし、広い地域でも人口が閑散としている場合もあるだろうし、そういったケースでは狭い地域の方がより多くの人口を抱えることもある。しかし一般的にいえば、広い地域により多くの人々が暮らしていると考えた方が普通だろう。基準となるもの(例えば面積)の規模によって、統計数字(この場合は人口)の大小がある程度想像できるわけだ。

本問に戻ろう。4つの国々のキャラクター付けをしていく。タイは発展途上国、シンガポール・韓国は新興工業経済地域(NIES)、米国は先進国。

容易に判定できるのはタイ。いずれの数値も低くとどまっている1が発展途上国のタイだろう。1人当たりGNPの低い低経済国であり、これらのものが国民に広く普及しているとは思えない。

ここからは考えないといけない。注目するのは実数である「パソコン保有台数」であろう。相対的な数量である「電話回線数」「携帯・自動車電話契約数」にはあまり差がない(選択肢2が全体的にやや低く、選択肢4の数値が高いようだが、このくらいでは決定的な差異とは言えない)。それに対し、「パソコン保有台数」の差は文字通りケタが違う。

先進国である米国だけでなく、NIESシンガポール・韓国もかなり情報通信技術が発達した国であると考えられる。電話回線や携帯・自動車電話の普及の度合が選択肢2・3・4の間でそれほど極端な差になって現れていない点からそれが類推できる。

では、技術水準の類似したこれら3つの国において、決定的に異なるものとは何か?

それは実数の特性に気がついたならわかるはず。統計の母体数に関わるものである。つまり、「人口」の規模である。米国2.5億、韓国0.45億、シンガポール0.03億。まさにケタ違いである。ここまで正確に知らなくても米国の人口が多く、シンガポールがとくに少ないということぐらいは見当がつくんじゃないかな?でも米国・韓国・シンガポールの人口は知っておいてほしいところやね。

人口の多い米国で、パソコンの保有台数が多いのも当たり前。よって「10900」の選択肢4が米国。同様に「693」の選択肢2が韓国、「127」の選択肢3がシンガポール。

(おまけ)この表は相対的な数量と絶対的な数量とが混在していてとてもややこしい。混乱し誤解を招く。例えば「パソコン保有台数」も「千人当たり」の台数にして、相対的な数量として表すべきだろう。というわけで、千人当たりパソコン保有台数を求めてみようか。タイの人口は6千万人なので、(1200000÷6000000×1000=20)。韓国は、(6930000÷45000000×1000=154)。シンガポールは、(1270000÷3000000×1000=423)。米国は、(109000000÷250000000×1000=436)。ついでに日本は、(25500000÷125000000×1000=204)。シンガポールの米国に匹敵するコンピュータの普及の度合にビックリするわけだ!こんな風に相対的な値で表した方がいいかもね。

 

問4 正誤判定問題の正文選択パターン。逆に3つの選択肢の誤りを指摘しないといけないわけでちょっとツライね。

具体的な国や地域を取り出して考えていくのがいい。

1;「インターネットの技術はアメリカ合衆国において開発された」かどうかは知らんが、選択肢の文章の前半部分に誤りがあることはほとんどないのでここは正しいのだろう。問題は後半。「アメリカ合衆国から遠く離れた国・地域ほどインターネットへの接続が遅れた」のは正しいか否か。具体的な国あるいは地域に注目。米国から最も離れているのはどこか?地図で見る限り、インド辺りかな?というわけでインドに注目してみるのだが、黒く着色されており、これはインターネットに接続した時期が早かったことを意味している(余談だが、インドって英語が普及している国なので、コンピュータの導入が容易になされたところなのだ)。逆に米国に近い南アメリカ大陸の国々で導入時期が遅れたところがいくつかある。というわけで、インターネットの普及の早さと米国からの距離には何の関係もないことが分かる。

2;発展途上地域って言ってもその範囲はかなり広いんで、具体的に考えたいんだがどうしたもんか?とりあえずアフリカ(1人当たりGNPの低い国々が多い地域である)における導入時期は最近になってからのようだが。

3;この選択肢については説明しにくいなあ(涙)。とりあえず、東アジア以外で1991年以前にインターネットが導入された国・地域で、ローマアルファベットではない文字を主に使用するところを挙げてみるので参考にしてほしい。

まずインド。英語も公用語の1つであるが、それより民族の言語が主に使用されている。ヒンドゥー語で使用されているのは独自の文字。

タイ語の表記も独自の文字。

ロシアを中心とした東ヨーロッパからギリシアにかけての地域では、キリル文字というやや変わったアルファベットを使用している。

エジプトやチュニジアではアラビア文字が使用されている。

4;アセアンに加盟しているのは東南アジア10カ国(当時は東チモールが独立していなかったので、東南アジアの全ての国が加盟していたことになる)。東南アジアのいくつかの国(カンボジアやラオス、ミャンマーなど)は97年6月15日時点でネットへの接続はなされていないようである。

というわけで正文は2だけとなる。1が誤文であることは明白。3がちょっと難しい。4についてはアセアンの加盟国(東南アジア10カ国)を知っておかなくてはいけない。国際機関は加盟国がポイント。01B本第4問問2ではさまざまな国際機関が話題とされている。ここではナフタが問われているので、その加盟国が米国・カナダ・メキシコの3カ国だけであることが分かれば解答可能。01B追第1問問6ではCISの加盟国が問われている。

 

問5 日本と米国とEUとを比較している。

この表中の統計の項目で最大のポイントとなるのはどれか?

それは「国民総生産」である(国民総生産と国内総生産は同じ意味。GNPとGDPも全部同じ意味)。とはいえ、この値をそのまま覚えておけというわけにはいかない。国民総生産は、1人当たりGNPと人口との積によって求められるもの。だから、それらの数値に習熟していれば、たやすく求めることができる。

米国と日本のGNPは計算できる。人口と1人当たりGNPを利用する。

米国;30000×250000000=7500000000000

日本;35000×125000000=4500000000000

というわけで、近似値ということでAが日本でBが米国と置いてみる。残ったEUはCとする。

それぞれについて矛盾はないか、検討してみよう。

国内総生産(国民総生産・GDP・GNP)は、日本<米国<EUの順。日本が米国よりGNPが低いのは当然として、ではEUのGNPは米国を上回るのか?EUが15個の国の集合体であることを考えるととくに無理はないようだ。GNPの大小については、01B本第4問問1でカルトグラムの形で表されている。でもEU15カ国のGNPを合計するのはさすがに面倒やね(笑)。

1次エネルギー消費量。日本は省エネが進んでいるのでかなり少ない。米国の値の大きさが特徴的。かなり無駄遣いの国なのだろう。

自動車生産。自動車の生産統計はしばしば出題ネタとして取り上げられている。米国の生産が多くて、日本がそれに次ぐ。ただしドイツやフランス、スペインでの生産もそれなりに多いので、EU全体の合計では米国や日本を上回ったとしてもおかしくはない。

穀物生産。穀物の70%を輸入に頼る日本の値が小さいのは納得。世界最大の農業国である米国の数値が大きいのも当然。ヨーロッパもなかなかのもんやね。意外に農業がさかんなのだ。

貿易額はEUが最大。加盟国間の自由貿易(関税がかからないなど)が実現しており、貿易額が大きいのも納得。

農業就業人口。EUが多いようであるが、これは母体数である人口規模が大きいことから考えても順当な結果である。EUの総人口はよく分からないが、4億人くらいいるんじゃないかと思われる。日本の数値と米国の数値はほぼ同じ。日本の人口は米国の半分であるので、全就業者人口も半分くらいになると考えられる。日本の第1次産業人口割合は6%で、米国の3%の倍。よって、日本と米国の農業就業人口はほぼ同じくらいになるだろう。この点も納得。

 

問6 共通農業政策だって!?地理の試験で政策ネタを聞くはずがない。どこかにいかにも地理的なキーワードが隠されているはずだ。

ポイントは「農産物輸出国、とりわけアジア諸国」というところ。農産物を輸出しているということはそこでは「商業的」に農業が行われているということ。しかしアジアの農業は「自給的」である。これは相対する概念である。よってアジアが農産物輸出地域とも考えられない(少しは輸出しているだろうが、典型的な輸出地域とは言えないだろう)ので、この選択肢を誤りとする。B01B追第4問問1参照。アジア(選択2)の「穀物輸出量÷穀物輸入量」は「0.2」である。輸入量の方が輸出量より多いということ。アジアは穀物の輸出国ではないので、農産物の輸出を巡ってヨーロッパと対立するとは考えにくい。

「域外の農産物輸出地域」とは「北アメリカ(米国)」のことではないか。

他の選択肢については読んでおくだけでいい。選択肢1や選択肢2のような状況であるので、選択肢4で説明するような予算面の負担が大きくなるだろうと思われる。

 

問7 EUの加盟国はマストアイテム。加盟した順番まで確実に知っておくこと。

60年代(結成時);ベルギー・オランダ・ルクセンブルク・ドイツ(当時は西ドイツ。90年に東ドイツと統一されドイツと改称)・フランス・イタリア。

70年代;デンマーク・イギリス・アイルランド。

80年代;ギリシア・スペイン・ポルトガル。

90年代(EUとなった後);オーストリア・スウェーデン・フィンランド。

図3を参照しよう。ECの加盟国は、EUとなる以前に加盟していた12カ国である。よって選択肢1が該当。ちなみにEU結成は1993年なので、1991年の段階ではもちろんECである。ただし東西ドイツ統合(1990年)の後であるので旧東ドイツ地域も西ドイツに併合される形でECの範囲に含まれている。

EUの加盟国は、ECプラス北欧2カ国・オーストリア。ということで選択肢4が該当する。

残るは「1人当たりGDP上位11カ国」と「通貨統合参加国」。これが選択肢2か3に当てはまる。1人当たりGDP上位国の方が分かりやすい。GDPとは国内総生産のことだが、GNP(国民総生産)と同じ意味。よって1人当たりGDPについては1人当たりGNPと考えればいい。

君たちがヨーロッパの国々で知っておくべきは、デンマーク35000$/人、ドイツ30000$/人、フランス25000$/人、イタリア・イギリス20000$/人、スペイン15000$/人、ポルトガル10000$/人など。全体的に北部で経済レベルが高く、南部に行くにつれ次第に低くなっていく。

というわけで、どちらかといえば北部の国々が灰色に着色されている3が1人当たりGNPと考えていいだろう。とくにヨーロッパ大陸のはるか北西に浮かぶ小さな島国に注目。ここはアイスランドという国。こんな国の経済レベルが高いのか、という疑問も生じるかもしれない。でもよく考えてみるととくに矛盾はないのだ。この国は寒冷な地方に位置するためかなり人口が少ないのではないか。GNP自体は少なくても、人口はさらに少ないのだから、相対的にみて1人当たりGNPが高くなるという点には納得。

よって消去法的に通貨統合参加国を示しているのは2の選択肢ということになる。ほとんどがEU加盟国と重なっているが、イギリス・デンマーク・スウェーデン・ギリシアが参加していないようだ。つまり11カ国によって通貨統合は行われているということ。

スイスはECにもEUにも加盟せずもちろん通貨統合にも参加していない。国際組織には加盟せず、独自の立場を貫いているのだろう。でも経済レベルはかなり高い(1人当たりGNPは高い)。

ところで本問の重要な点は、それぞれの国については「国名」としてではなく、「地図上における位置」で問われているという点。02B本第1問問5参照。ここでもノルウェーやデンマーク、アイスランドの位置がわからなくては解答しにくい。白地図などを用い、国の場所だけは知っておくべきである。

 

第2問 確実に得点するのは問1・問2・問3・問6。知識問の問2でちょっとひっかかるかもしれないが、難易度は決して高くないので何とか正解してほしい。問4と問5は難しい。できなくても仕方ない。勝負の分かれ目は問7だろう。この問題を拾って、2問ミスでこの大問を乗り切ってほしい。

 

問1 緯線経線上の長さをはかる問題。本問の場合は赤道上の長さであるので、簡単だと思う。

赤道一周は何キロかな?これは当然知っておくべき数字。40000キロだね。

図1において赤道を引いてみよう。赤道の位置は大変重要。必ずその位置(アフリカ大陸や南アメリカ大陸のどこを通過しているのか)は押さえておかなくてはいけない。01B本第1問では赤道の位置が分かって、それから北半球と南半球の低緯度地域の降水量の季節的変化について考えることが必要。99B本第4問問1でも赤道の位置がわからなければ解答不可。

問題にもどろう。アフリカ中央部、マレー半島先端(シンガポール付近)を通過するのが赤道。インド洋の東西端はどれくらいだろうか。

ここで重要となるのは、図1で四角い枠線が引かれているのだが、その間隔はどれくらいなのだろうか、ということ。まず、経度0度はどこだろう。ロンドンを通過しているというくらいの知識はあるだろう。例えば、第1問問4図2の世界地図など参照すると分かりやすい。あるいは地理Aの第1問問1図1にそのものズバリの経緯線を描いた世界地図がある。これで経度0度を探したらいい。アフリカ西部を縦断している線が経度0度の経線だろう。本問の図1でいうなら、最も西の縦線が該当する。

また、日本の位置を確認してほしい。日本(というか兵庫県明石市)が東経135度に位置しているということは知っているね(小学生でも知ってるで、こんなもん)。というわけで、先ほど求めた経度0度とこの東経135度の線を対照させてみる。格子9個分である。その一つ一つの間隔は経度15度ずつということが分かる(135÷9=15)。

もう一度赤道を確認。インド洋の西端は東経45度くらいか。東端は東経100度くらいかな。つまり赤道上におけるインド洋の幅は経度55度分である(100マイナス45イコール55)。

赤道一周40000キロ。つまり360度で40000キロ。では55度ではどうなるか。これは計算するだけ。内角55度の扇形の弧の長さは?

 

問2 資源の位置を問うかなり珍しい問題。新課程になって初めてちゃうかな?珍しい問題だけあって、問題自体はかなり簡単。オーストラリア西部に注目すればいいだろう。この位置で採掘されるのは「鉄鉱石」である。中国・インド・アフリカ南部にも◆が見られるが、これらについてはどうでもいいだろう。

02B追第3問問6で原油の産出地域が話題とされている。その問題の場合は西アジアのペルシア湾沿岸に集中しているので容易に原油と判定できるのだが、今後、このような資源産出位置を問う問題の出題も十分予想されるところである。

ポイントだけ記しておこう。金はオーストラリア南西部。石炭はオーストラリア東部。鉄鉱はオーストラリア西部。ボーキサイトはオーストラリア北部。つまりオーストラリアに注目するのが簡単でいい。

 

問3 風の問題。

関連問題は02B本第3問問2。インドを中心とした南アジアの風向がそのままの形で出題されている。

旧課程ではあるが96本第1問図1も参考になる。冬の気圧配置を示したものであるが、インド半島はユーラシア大陸内陸部に発達した高気圧から吹き出す風に支配され、乾季となる。これは海陸の比熱差によるもの。シベリアという巨大な大地の塊の影響が強い東アジアから南アジアにかけての地域は、モンスーンと呼ばれる季節風におおわれる地域なのだ。

問題について。風向の判定。インド周辺の南アジア地域にのみ注目。図アについては、南西風が吹き込んでいる。この風向は夏季のもの。南西季節風が海洋から湿った空気を陸へと運び、大量の降水をもたらす。98B追第5問問7参照。この島はインド南洋に浮かぶスリランカ。夏季の南西季節風によって、南西側斜面に降水がみられる。地形性降雨である。96本第1問問2参照。ウの地域は夏季が雨季であり、冬季が乾季である。季節風の影響。つまり本問の図イは冬季のもの。

ウとエの判定。難しく考える必要はないだろう。南半球側の気温が高いウは1月(北半球が冬、南半球が夏)、北半球側の気温が高いエは7月(北半球が夏、南半球が冬)の図である。「気温が海水面温度よるも高い領域」とあるが、これはつまり夏のことだと思う。夏は気温が高いが水温は低いので海水浴に適しているね。冬季は気温はかなり低いものの水温は実はそこまで下がらない。寒中水泳は海水に入っている間はそれほど冷たくない。海から上がって外気にふれた時に非常に冷えるのだ。

 

問4 難問。大地形に関する問題。このジャンルの問題は難問が多い。

1;このネタって知ってるんかなあ?地球上の陸地の中で、6億年以上前の先カンブリア代に陸化したものを「安定陸塊」という。安定陸塊には、テーブル状の「卓上地」、やや起伏を伴った平原「楯状地」、完全に平坦な大平原「構造平野」の3種類がある。ゴンドワナランドとは安定陸塊の卓上地に分類されるもの。はるか太古の昔、地球には一つの巨大な大陸があった。その名はパンゲア。いつしかパンゲアは南北2つの部分に分裂していく。北に向かったものは「アンガラランド」。現在のシベリア中央高原である。南に向かったものが「ゴンドワナランド」。これはさらに細かく分裂していく。南アフリカ大陸、アフリカ大陸、アラビア半島、インド半島、オーストラリア、南極大陸など。これらの大陸や半島は、旧ゴンドワナランドの一部分であり、卓上地となっている。

選択肢1の文章に戻ろう。アフリカやオーストラリアの大部分はまさにゴンドワナランドである。しかも卓上地であり、高原状または台地状の地形を特色としている。例えばアフリカは標高200m未満の低平な地形の占める割合がとくに低い大陸である。河川も上流や中流で流れがなだらかで、下流に急流や滝があることが多い。台地状の断面を持つ大陸なのだ。海洋から外洋船がさかのぼって入ってくることが困難でアフリカ大陸内陸部へと欧州人が足を踏み入れることが遅れた原因の一つとなっている。

2;島の成因としては2つの要素を押さえておいてもらいたい。1つが火山島。円錐状の山容がそのまま海上に顔を出して、島となったパターン。円形で標高の高い島となることが多い。その典型的な例が屋久島。00B追第4問問7参照。屋久島が取り上げられているが、火山である宮之浦岳(九州地方最高峰!)を中心とした火山島。低平な地形が少なく、耕地面積割合が低い。

アイスランド島も紹介しておこう。こちらも一応ではあるが火山島と呼ばれることがある。ただし実際は溶岩の塊が海上に顔を出した溶岩台地の島であり、屋久島のような形状ではない。こちらは標高はさほどでもない。地下から染みだした溶岩が固まった「かさぶた」のような島。海嶺と呼ばれるプレートの広がる境界上にはこのような溶岩台地による火山島が分布することもある。っていうか、アイスランド島だけだからとくにどうでもいいかも(笑)。アイスランドは01A追第1問、02B本第1問と2年連続して出題ネタとなっている。

もう1つがさんご礁の島。隆起さんご礁。98B本第4問図1はそのような島。標高が低いことが特徴。低緯度の暖かい海域に見られる。さんご礁なので土壌は石灰質で水分を吸収しやすい。表面にカルスト地形とよばれる大小さまざまな凹地や地下に鍾乳洞が形成されることもある。水田耕作には向かない。00B追第4問問7における沖縄島は主に石灰岩から成る島。水田が少ないのが特徴。

問題に戻ろう。ここで話題とされているのはモルディブ。センター試験初登場である。ただしここでは「スリランカ西方」が大きなヒントになっている。スリランカはインド南方に浮かぶ島。よってモルディブもインド近辺に位置すると考えていい。ここでポイントになるのは「南アジアには火山は存在しない」というセオリー。このネタはなぜかセンター試験ではしつこいくらいに登場してくる。93本第1問問8。インド北方のヒマラヤ山脈は世界最高峰の険しい山脈であるが、ここには実は火山はない。インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートが激しくぶつかる境界であり、巨大な褶曲山脈は形成されているが、火山活動はみられない。00A追第2問問1。南アジア地域はさまざまな災害に見舞われる。その代表的なものは低地国バングラデシュを襲うサイクロンによる高潮被害であるが、大地震の発生もあるこの地域でありながら、実は火山は分布しないので火山災害は見られないのだ。

というわけで、モルディブが火山島である可能性は消える。よって本選択肢が誤り。

モルディブは地球温暖化による海面上昇の被害を最も受ける国として有名。99B本第1問問2で、地球温暖化の話題が登場している。モルディブの名前はここにはないが、この国は最高標高点がわずか海抜2mということで、このままの海面上昇が進んでいけば国土がいつしか完全に水没してしまうと予想されている!

(おまけ)南アジア地域に火山が存在しないというセオリーは絶対的なものなので、必ず知っておいてほしいし、センター試験でこのネタが登場したら必ず解答に結び付けてほしい。ただし、ちょっとややこしいのだが、確かに南アジア地域に火山はない、しかし火山性の土壌は存在している。インド半島に分布するレグールという土壌。玄武岩の風化土壌なのだが、そもそもこの玄武岩というもの自体が溶岩が固まったものである。火山はないのに、溶岩はある!?というちょっと奇妙な現象なのだが、この辺は以下のように考えて納得してほしい。インドプレートがユーラシアプレートにぶつかり、ヒマラヤ山脈が形成されている。その地下では激しい圧力がかかり、火山の爆発こそないものの、溶岩がじわじわと地表へと染み出してきた。この溶岩によって形成されたのがインド半島に広がるデカン高原。溶岩台地である。さらに表面の溶岩(玄武岩)が風化し、レグール土がつくられた。だから、火山はないが溶岩性の土壌は分布するという状況になるのである。

ということは例えばモルディブはもしかしたら溶岩台地の島なのかもしれない、という可能性は生じてくるわけだ。アイスランドなどは溶岩台地の島なのに火山島と呼ばれている。さて、どうする?ここでは手っ取り早く、次のように考えておく。「溶岩台地の島はアイスランド島だけ」というように。これでモルディブが溶岩台地の島という可能性は消える。モルディブはどうしたって火山島ではありえないのだ、っていうこと。ちょっと強引!?

3;この話題もセンターではあまり見かけないが。01B本第1問問1の海溝を問う問題がとりあえずの類題といえるか。

この選択肢の文章は正文なのでとくにコメントなし。

4;アフリカ大地溝帯は、東アフリカ大地溝帯ともいう。前述のようにアフリカ大陸は安定陸塊のゴンドワナランドであって、非常に安定した地盤となっている。しかし近年、この安定した大地に亀裂が生じ、それは次第に広がっている。この大地の裂け目をアフリカ大地溝帯という。遠い未来にはアフリカ大陸はこの地溝に沿って2つに分裂し、新たな海洋が生じるのではないか。大地にできた海溝みたいなもの。

イメージとしてはナイフで切りつけた傷口。地震活動も活発で、キリマンジャロ山やケニア山などの火山も分布する。地溝帯の溝にそって、東アフリカには細長い形状の湖がいくつもみられる。タンガニーカ湖やマラウイ湖など。これらは断層湖であり、水深は深い。断層湖と似た地形として、直線状に細長く刻まれた海洋も存在する。それが紅海。アフリカ大陸とアラビア半島の境目にあり、断層湖と同様、水深が深い。紅海をさらに北上すると、アカバ湾、さらに死海周辺の低地へと達する。死海の湖岸は海抜マイナス400mという陸地としては標高世界最低点である。

アフリカ大地溝帯に沿う地形としては、死海・アカバ湾・紅海・エチオピア高原・ケニア山・キリマンジャロ山・タンガニーカ湖・マラウイ湖・ザンベジ川河口低地などがあり、機会があれば地図で確認しておくといい。一応、アフリカ大陸上ということで「安定陸塊」に属する地形ではあるが、ごくまれに「新期造山帯」として説明している参考書もあるので注意してほしい。

というわけで、解答は2なのだ。大地形を問う問題、しかも過去の出題例が少ないネタということで難易度は高いと思う。捨て問としても仕方ないところだろう。

 

問5 土地利用を問う問題。極めて難問。捨て問といえるかもしれない。

土地利用問題自体の出題も久しぶりではある。かつてはよく見られたんだが。01年、02年はこのパターンの出題はなくなったのだが、どうしてだろうか。もう出題されないのかな?

ケニアが登場しているが、ここはアフリカの国としては比較的よく取り上げられる方。98A本第2問問4問5、99B追第5問問7問8など。

この問題は考えて解いてみよう。

「耕地樹園地」とあるが、樹園地というのは実は少ないので耕地が中心であると考えてほしい。耕地とは水田と畑のこと。耕地面積割合の高い国とはどういう国だろうか。まず耕地に利用できる平地や低地の割合が高い国土を持つということがいえるだろう。山地などは耕地としては利用しにくい。また、いくら平坦な土地であっても、気候的に厳しい条件ならば農業は成立しない。砂漠(乾燥地域)や標高の高いところ(高山地域)やツンドラ・氷原(寒冷地域)の割合が広い国ではいけない。十分な気温と豊かな降水のある国が該当するであろう。

ここで表1参照。選択肢4の耕地割合がとくに高いようだ。これはどこか?低平な地形を持ち、気候にも恵まれた国。これはバングラデシュではないか。モンスーンアジアに位置し、高温で湿潤。米作に適した気候。地形についても(00B本第1問問2・00B追第1問問2参照。バングラデシュは大河川の河口に形成された三角州上に位置し、低平な地形に特徴がある国である。

人口密度の高さも大きな特徴。日本とほぼ同じくらいの人口規模(1.3億人)でありながら、面積は日本の3分の1程度。人口密度は800人/キロを超える過密国。この人口を支えるためには、穀物(この国の場合は米)の栽培が必須。低平な地形であるので、水田をひらくには適している。耕地面積割合が高くなるのも当然である。

次はイラクの判定。この国は乾燥地域が広がる砂漠国。農地などは少ないはずである。表1より「その他」の割合が高い2がイラクと考える。「その他」に何が該当するのかについての記述はないが、少なくとも「砂漠」はここに含まれるだろう。

さらに「森林」の割合の高さに注目。世界の森林の1/2は熱帯林、1/3が冷帯林。日本が含まれる温帯林は1/6を占めるにすぎない。原則として、熱帯の国と冷帯の国で森林面積割合が高いと考えていい。

冷帯国としては、スウェーデン(過去に出題例あり)・フィンランド・カナダの森林割合が高いと押さえておこう。統計でも確認。

熱帯国としては、赤道直下の国々、ブラジルやペルー(過去に出題例あり)、コンゴ民主などの森林割合が高い。

温帯国は森林割合の高い国は少ない。ヨーロッパや米国にはそれほど森林は見られない。温帯国として例外的に森林割合が高いのは日本周辺の国々。韓国など。

ここで選択肢を参照。残りはケニアとインドネシアである。さて、森林割合の高いのはどちらか?

ケニアは「ホワイトハイランド」というニックネームがある高原国。その標高は1600mくらいであり、赤道直下でありながら決して高温ではない常春の気候が見られる。コーヒーや茶の栽培に適している。熱帯の低地に比べ、気温が低い分だけ降水は少ない。低緯度地域の降水パターンは対流性降雨。上昇気流により積乱雲が生じ、毎日夕方にスコールに見舞われる。積乱雲の発達は気温の高さに左右される。気温の高い低地地域ではかなりの降水量があるが、やや涼しい高原上ではそれほどでもない。そのため、植生は熱帯雨林にはならず、サバナ(まばらな樹林と長草草原)やステップ(短草草原)となる。低緯度で標高の高いところは草原が広がるというネタは、01A本第2問問2(A地域は放牧地。森林にはならず草原となっている)で登場。以上より「牧場・牧草地」の割合が高い1がケニアとなる。

3はインドネシア。熱帯雨林に覆われた国というイメージは持てるね。

(今後の対策)というわけで本問の難しさが分かっただろうか?土地利用問題は難問が多いので仕方ないのだが。。。しかし先に述べた「森林」割合の高い国のように、ある程度、出題の可能性が高い国をマークしておくという手段はある。ここで重要になるのは、今回のケニアのような「牧場牧草地」国。牧場牧草地とはすなわち「草原」のことなので、草原が広がる国について知っておくとそれが直接出題される可能性があるのでお得だと思うよ。

「牧場牧草地」面積割合の高い国を紹介しよう。

牧場牧草地とはつまり草原のことなので、やや乾燥した国土を持つ国でその割合が高い。モンゴル・オーストラリアがその代表。

またイギリスとニュージーランドも牧場牧草地国としては重要(ともに国土面積の45%くらい。数値も重要)。温帯国(西岸海洋性気候。緯度の高さのわりには気温年較差が小さい。季節による降水量の変化も少ない)ではあるが、この2つの国は一年中を通じて偏西風の影響を受けるため、風上斜面側(国土中央を走る山脈の西麓)が湿潤であるのに対し、風下斜面側(東麓)はやや乾燥する。羊などが飼育されているこの東麓地域には牧草地が広がっている。

さらにおまけであるが、実はサウジアラビアも牧場牧草地面積割合が高い。なんでやろ~?よくわからん。莫大なオイルマネーを元に砂漠の緑地化に励んでいるのだろうか?サウジアラビアって意外としばしばセンター試験に登場しているので(02B本第3問問7、01A本第3問問4、99B本第4問問5選択肢1など)注意しなあかんね。

 

問6 階級区分図。

選択肢はいずれも相対的な数量(割合)を示しており、階級区分図を用いて表すのに適当。

オーストラリアとアフリカ諸国のような経済レベルに格差(1人当たりGNPがかなり違う。オーストラリアで20000$/人くらい。アフリカ諸国は1000$/人くらいだろう)がある国で似たような数を示す統計項目は何か?

1;5歳未満の子供の生存率とはかなりダークな統計であるが、どうだろう?具体的にどのような式によって求められるものかはわからないが(通常は問題文のどこかに数値を求める式が書かれているもんだが)、例えば日本のような先進国ではこの値はかなり100%に近いものになることが想像される。5歳になる前に亡くなってしまう子供は医療・衛生環境の整備された国・地域ではほとんど見られない。よってオーストラリアでは当然この値は高くなるだろう。しかしアフリカはどうか?5歳に達する前に失われる命は多いのではないか。こういった生命に関する設問っていうのは辛いものやけど、これがシビアな現実ならば仕方ないのか。

2;識字率について。具体的には学校に通っている割合みたいなもんだと思ったらいいんじゃないかな。これもオーストラリアでは高いが、アフリカ諸国では低いと思っていいだろう。経済レベルの低い国々では、学校施設も整っていないと考えられる。

4;これも経済レベルに当てはめて考えればいい。平均所得の低いアフリカ各国でテレビを購入できるものだろうか?

というわけで、答は3となる。オーストラリアのような先進国では女性の働きやすい環境が整っていると考えられる。97B本第3問問2参照。グラフ2がスウェーデンなのだが、まさに高福祉国家である。女性の社会における立場が尊重されている。またアフリカのようなとくに低経済国においても、女性の就業者が多い。これはこれらの国の主要産業が農業を中心とした第1次産業である点を考えれば納得だろう。一家の食料を確保するためには、女性であっても(さらには子供であっても)働かなくては食ってはいけないのだ。

東南アジアの第1次産業人口割合の高い国々(タイで60%)でもやはりこの値が高い。これも男性だけでなく、女性も農業などにたずさわっているということだろう。

逆に西アジアの乾燥地域の割合が低い。乾燥地域であるだけに、アフリカや東南アジアとは異なり、農業人口がそれほど大きくないという事情もあるだろう。しかし決定的なのはイスラム教かな。イスラム教では原則として女性の労働は認められていない。パキスタン・イラン・アラブ諸国でのこの割合が低いのも納得。

 

問7 こちらは円積図。円の面積で数量の大小を表す。実数を表現する際に用いる。

国際的な人口移動の問題であるので「金が人を動かす」の公式を中心に考えてみよう。

1;中東産油国はオイルマネーでにぎわっている。このような土地に経済レベルの低い国々から労働力が流入するのも当然。

2;マレーシアはかつてイギリス植民地だったのは事実。ただしゴム農園の労働者としてインドから労働力が流入したかは不明。ただし矛盾はない。

3;図4を見る限り、たしかに南アフリカ共和国には多数のインド系住民が住んでいるようである。彼らはなぜここにやってきたのか?選択肢3には単に「労働力」としか示されていない。南アは先進国ではないし、工業が発達しているわけでもなかろう。では一体この国に何があるのか?それは資源である。金鉱やダイヤモンド鉱の重要な産出国である(97B本第5問問6)。南アのインド系住民もこの鉱山に引き寄せられるように(奴隷としての移動かもしれないし、あるいは自発的な移動かもしれないし、どちらかはイマイチはっきりしないが)、はるかインド洋を越えアフリカの大地に足を踏み入れたのだろう。そこでポイントになるのはその時期である。選択肢3では「アパルトヘイト廃止後に」とある。アパルトヘイトはいつ廃止された?97B追第5問リード文および問7参照。アパルトヘイトに関する法律が廃止されたのは「近年」らしい。では近年になってインド人たちは南アに流入したのか?いや、そうではないだろう。金鉱やダイヤモンド鉱はかつてイギリスやオランダが南アフリカの地を支配していたころからさかんに採掘されていたと考えるのが自然だろう。っていうかそもそもこの国で貴重な鉱物が取れたからこそ、ヨーロッパの国々がここに押し寄せ、さらに先住民(黒人)を排斥し、自分たち白人中心の社会を作り上げただろうことは容易に想像できる。つまりアパルトヘイトの起源自体がこの金鉱やダイヤモンド鉱にあると思ってもいいんじゃない?

というわけで、インド人の移動の理由が鉱山の開発にあるとして、それはアパルトヘイト廃止後なのだろうか?この点は多いに疑問。

4;ガイアナやスリナムについての知識はないと思う。センター試験で始めて登場した国名である。図4をみる限りインド系住民も数十万人居住しているようだ。その理由はわからないが、選択肢4にあるように何らかの労働力としてなのだろう。奴隷制廃止っていうのがよくわからないのだが。

というわけで、1は正文と判定できるのだが、2・3・4でかなり迷う。ただし「アパルトヘイト廃止後」が決定的に違和感有りなので、3を誤文とするのはさほど困難ではないだろう。あいまいな問題であることは間違いないが、何とかここを乗り切ってほしい。

ちなみにアパルトヘイトに関する法律が全廃されたのは1990年くらいのこと。南アのインド系住民は鉱山労働力として100年以上前に流入した人々の子孫。ガイアナやスリナムはボーキサイトの産出がさかんで、ここのインド系住民もその鉱山労働者たちの子孫であろう。

 

第3問 あいまいな設問と知識問題が多く、意外と難易度は高い。問1の地形図問題は選択肢があいまいでここで1問落とすのは覚悟しないといけない。問2以降も難問が続く。あえて言えば問7の難易度が低いのだが、それでも知識問題的な傾向が強く、手ごわい。3問ロスで乗り切ってくれ!

 

問1 何となく地味な地形図問題やなぁ(笑)。

このように新旧2枚の地形図を登場させて、それを対比させることによって選択肢の正誤判定をするというパターンは頻出(02B本第5問問2「釧路」。99B追第3問問1・問4・問5など)。

地形図問題で重要なのは立体視と土地利用。等高線などの様子から地形の凹凸を読み取るテクニックは、尾根線や谷線の判別や断面図問題などで重要となる。また水田や畑地などの土地利用を問う問題も定番中の定番。土地利用記号は必ずマスターしておいてもらいたい。

本問の場合はほぼ平坦な地形であり、立体視はあまり重要でないように思えるかもしれないが、堤防(土手)を表すケバケバ線の連続を読み取らないといけないので、やはり地形図を立体的にとらえることはポイントとなっている。土地利用の様子も同じく重要なポイント。

1;氾濫原というのは河川沿いの低地のこと。この地形図においてはほぼ全域が低平な地形であり、単純に河川周辺の土地利用記号だけを判定したらいい。アでは「北一線」の辺りに桑畑の土地利用記号がみられる。イでは同じ地域に水田が分布している。

2;まず火力発電所を探してみようか。イ図の右上に「奈井田火力発電所」がある。ただしこの発電所については、その周囲が土手のような地形(道路とその両脇にケバケバ線が連続してみられる。このケバケバ線は斜面の印。道路の部分が小高い地形となっており、両側の標高が低い。斜面となっている。このような地形のことを「盛り土部」という)に囲まれている。つまり河川とこの火力発電所の間は高い土手によってさえぎられているわけで、河川から直接に船舶がこの発電所内に入って来られるとは考えられない。よって本選択肢については誤りと判断していいだろう。また「大型」についても多いに疑問。地形図を見る限り、この河川の水深はそれほど深くないのではないか。そこに大型の船舶が遡行できるとは思えない。

3;図アにおいてはその東南部に湿地のようなものが広がっている。図イではその部分が水田として利用されているようであり、格子状に道路も走っている。ただし「住宅団地」があるかどうか?家屋はみられるが、道路に沿って点在しているに過ぎない。

4;これが最も見にくい。正直、よくわからないのだ(涙)。

5;これは問題ないだろう。図アの中央部「中洲」の辺りの細長い沼は三日月湖であるが、図イにおいてはそれに該当する地域は水田となっている。それ以外にもいくつか似たような場所はあるので、各自確認しておいてほしい。

6;堤防を確認してみよう。選択肢2でも触れたが、火力発電所の周囲を囲んでいるようなケバケバ線の連続によって示されたものが「盛り土部」である(ケバケバ線そのものは「斜面」を表している)。これは図アでは見られないのだが、図イにおいては河川の左右の岸にそってそのケバケバ線が延びている。この盛り土はおそらく堤防なのだろう。道路が中央を走っており、そこから左右に向かって傾斜となっている。図の中央付近に「+5.7」という数値があるが、このように「+」を用いた数字はその地点が周囲よりもどれくらい高くなっているかを表すもの。ここでは堤防の高さを示していると思われる。

以上より、2と3が誤りとみていいだろう。4で悩むんだがなぁ(涙)。

 

問2 実は意外な難問かも!?

66年以降の埋立地は東京や横浜沿岸にもみられるが、千葉方面に多く広がっている。

1;このようなことはあるだろう。横浜港や東京港、千葉港は日本を代表する港湾である。

2;これはどうかな?ちょっと考える。原子力発電所の位置が問われてことはないが、中学レベルではしばしば取り上げられる話題である。福島県や福井県などに多くみられる。都心の人口集中地区から離れて、地方に原子力発電所は造られる。

3;これもかなり迷うんやなあ(涙)。こんな都心地区に産業廃棄物を捨てているなんてどうなんやろ。かなり海水も汚染されそうやし。

4;これについては問題ないかな。東京ディズニーランドなんかもこの辺りちゃう?

5;これも適当だろう。東京都心に近い地域ならば大規模な工業施設にはなりにくいが、千葉などは最近急激に工業地域として成長しているところである。

以上より、かなり迷うんだが、2の原発を誤りとする。3もかなり怪しいんだがなあ。。。中学で学習した内容(原子力発電所の位置)に関連する問題ととらえることができると思う。

原発ネタはそれほど多くない。02B追第4問問6でチェルノブイリが取り上げられている。ただしこれは風向(この緯度帯では偏西風が卓越する)の問題とも言える。

01A本第3問問7参照。ここでは1次エネルギーの種類別消費割合としてフランスが「その他」に頼る割合が高いことがポイントとなっている。フランスは原子力発電のさかんな国。

01B本第1問問5ではウランの産出統計が出題されている。ウランは言うまでもなく原子力発電のエネルギー源として重要。カナダが産出1位であるなど、北米大陸での産出が多い。

今後の出題予想としては、日本における原子力発電所の位置かな。中学地理の参考書などに記載されていると思うので、各自まとめておいてほしいな。

 

問3 「砂防ダム」の定義がしっかりできているかどうか?

98B本第5問問4参照。写真1は砂防ダムである。問題文にあるように「日本の各地の河川で見ることができる防災施設」である。その役割は選択肢参照。誤文は4なので、1・2・3の内容をしっかり確認しておけば砂防ダムについて理解できる。火山の噴出物、山地から削られた岩石や土砂、山崩れの土砂などが、下流へと流れるのを防ぐ。

99B本第4問問7。砂防ダムは日本にあるものでその役割は上記の通り。砂漠化とは全く関係ない。

それらをふまえての本問である。選択肢1のようなことは当然考えられるだろう。上流から運ばれる土砂が砂防ダムによってせき止められる。下流へと土砂がもたらされず、三角州が発達しない。むしろ海によって削られるだけとなり、縮小してしまう。

規模こそ違うが、似たようなケースはアスワンハイダムを建設したナイル川河口の三角州にも見られる。河川が運ぶ土砂の堆積と、海の波による浸食のバランスが取れて、三角州が形成されていた。ただしダムによって土砂の供給が止められ、波に浸食されるだけとなる。とくにナイル川河口では農民が耕地を失うという環境問題に発展している。こちらの事例は有名なので、知識として知っていた人もいるのでは?

それ以外の選択肢については、はっきり言って意味不明(笑)。これらのことによって、どうして海岸が侵食されるのか、よくわからない。2については99B本第1問問3が一応類題と言えるかな。地球温暖化による海面上昇ネタ。

 

問4 移牧の話。移牧とは酪農の一形態。原則としては乳牛の飼育。冬季は村落において各農家の畜舎で飼育する。夏季になると高原のアルプと呼ばれる放牧地で飼育。この放牧地は村の共同所有のものである。

本問はその位置を問うもの。このようなグラフィック問題ってすごくめずらしい。第5問問6では小地形について同じくグラフィック問題が出題されており、かなり新しいパターンだなと思ったけれど、それ以降(01年・02年)はこれらと類似した出題パターンはなく、ちょっとどんなもんかなとも思う。

アルプの位置は2。高原ということで1と迷うのだが、1は雪原のようであり、さすがにこのようなところに牧草地はないだろう。

 

問5 石灰岩ネタはかなり多い。石灰岩による地形には2種類あって、内陸部に形成されるものと、さんご礁によるものとがある。本問で扱われているものはどうやら前者のようである。内陸部に形成されるものの例は、本問でも例として取り上げられている秋吉台など。石灰石産地としてセメント工業と結びつくことが多い(山口県宇部市や小野田市はセメント工業がさかん)。さんご礁の例は98B本第4問問2。標高が低く平坦な地形となる。隆起さんご礁による島である。

ただし本問についてはとくに石灰岩地形についての知識は問われていないようだ。そもそもオーストラリアの平原に石灰岩地形があるとは全然思わなんかった(笑)。石灰岩地形って前述のさんご礁以外ではどうやって形成されるんやろね?僕には全く分かりません。

写真から地形の大まかな様子を判定してみよう。Aは背後に急斜面を伴う山地がいくつか見られる。平野部には水田のような区画が見られる。Bは地平線まではるかに大平原が広がっているようだ。Cは起伏の激しい地形となっている。

Aはマレーシアだろう。新期造山帯による急峻な山地が分布する。米作がさかんな地域であり、水田が見られる点も合致する。

Bは大平原が広がるオーストラリアではないだろうか。安定陸塊という6億年以上前に形成された安定陸塊に属する大平原がオーストラリア中央に広がる。

Cはニュージーランドと思われる。新期造山帯である。

というわけで、写真からある程度の情報を読み取らなくてはいけない点が苦しいか?とりあえずオーストラリアとニュージーランドの地形が対照的である点だけは確認しておこう。オーストラリアは安定陸塊(平原)と古期造山帯(なだらかな丘陵)。ニュージーランドは新期造山帯(急峻な山脈)。

 

問6 前問に続いて石灰岩地域に関する問題。もっとも、前問はとくに石灰岩についての知識は求められていなかったが。それに対して本問では石灰についてより直接的な知識が求められている。ガチンコ知識問題とも言えて、地理Bの問題としては意外とレアな存在かもしれない。

1;正文。石灰石・石灰岩がセメント工業と結びつくことは重要である。99A追第2問問1が参考問題。リアス式海岸の地形図が示され、「波によって石灰岩が侵食された海岸であるため、セメント工業が発達していることが多い」という文が選択肢として与えられている。石灰岩とセメント工業の関係は正しいのだが、リアス式海岸は河川の侵食によって削られた谷(このような谷をV字谷という。これに対し氷河によって削られた谷をU字谷という。02B本第1問問2参照。V字谷とU字谷の断面図が示されている)。

2;このネタは初出かな?00B追第4問問7は一応類題である。沖縄は石灰岩の島。さんご礁による石灰岩地形であり、鍾乳洞なども多くみられる。石灰岩は水分を吸収し(水はけが良すぎるということ)、水田耕作には適さない。畑地や牧草地として利用されることが多い。98B本第4問の与論島も石灰岩の島であるが、水田として利用されているところは少ない。畑地が広がっている。

4;ここも同じく98B本第4問を参考にしてほしい。問2で、石灰岩地形において鍾乳洞や凹地がみられることが述べられている。山口県の秋吉台や福岡県の平尾台も鍾乳洞で有名な観光地。カルスト地形ともいうね。

というわけで、3が違う。こんなことは全然ない。全くのウソである。

製紙業に関するネタは02B本第5問問3で出題されている。工業立地って意外と出題されるので注意が必要。

 

第4問 全問正解を狙う。あいまいな選択肢の並ぶ問1や読み取りに時間がかかりそうな問5がかなりヤバイがそれでも1問ロスで乗り切ろう。

 

問1 単なる表の読み取り問題。でも実はこういう問題が一番やっかい。時間もかかるし、とくに本問は難易度も高い。ここで確実に得点できるかどうかが本年度の問題全体で高得点できるかどうかの分かれ目になると思う。

出生率と死亡率を表したグラフである。‰(パーミル;千分率)によって表されていることを縦軸を見て確認しておいてほしい。出生率から死亡率をマイナスすることで、人口の自然増減率が求められる。出生率が40‰で、死亡率が25‰ならば、人口の自然増加割合は15‰(1.5%)である。

一応、式でもこれらの数値の関係を表しておく。

(出生率)=(出生数)/(総人口)

(死亡率)=(死亡数)/(総人口)

(出生率)-(死亡率)=(出生数)/(総人口)-(死亡数)/(総人口)

={(出生数)-(死亡数)}/(総人口)

=(自然増加数)/(総人口)=(自然増加率)

98B追第2問問1。本問同様、出生率と死亡率を示したグラフが登場している。

00B追第3問問2。自然増加率であるが、中国のものが示されている。

99B追第5問問2。4カ国の出生率が示されている。

01B本第5問問7。こちらは社会増加について。流入数から流出数をマイナスしたものが人口の社会増加(社会増減)。これは自然増加とは異なり、割合の形(つまり「社会増加率」というような形)としては表さない。

02B追第5問問5。このグラフは一風変わっていて、自然増加と社会増加を表している。

問題に戻ろう。

1;18世紀後半なのだからとりあえず1780年くらいのところに縦線を引っ張ってみよう。出生と死亡の差をみる。自然増加率は1%をやや越えるくらいかな。これより以前の時期(例えば1750年くらい。こちらにも縦線を引いて、出生と死亡の差から自然増加率の高低を判定する。あまり高くなさそうだ)に比べ、値は高くなっていると見ていいだろう。

2;19世紀後半なのだから、1880年くらいかな。ここに縦線を引いてみよう。フランスは1700年以降ずっと出生率と死亡率が接近していて、全体としては自然増加率は高くない。19世紀後半も同様。いや、むしろ1880年から1990年の時期は2本のグラフはほとんど一致しているといっていい。自然増加率がかなり低い時期であるといえる。

3;19世紀中ごろなので1850年くらいの動きをとらえる。第二次世界大戦後なので現在のデータを調べる(第二次世界大戦が終わったのは1945年)。両者を比較した場合、前者は自然増加率が1%くらいありそう。後者は2本のグラフの間隔がかなり接近していて、自然増加率は低い値にとどまっているようである。

4;1750年と現在の自然増加割合を調べる。1750年を示す直線(縦線)を引いてみよう。出生と死亡の差はかなり少なく、自然増加割合はかなり低い。現在は2本のグラフの間はそれなりに広がっている。5‰くらいか。

5;世界大戦は2回あった。第1次世界大戦が1915~20年くらい。第2次世界大戦が1940~45年くらい。イギリスではこの時期、出生率が低下し、死亡率が上昇。これにより自然増加割合は0%に近づいている。

フランスにも戦争の影響はある。第1次世界大戦時には出生率が極端に低下、そして死亡率が極めて高くなっている。(出生―死亡)によって表される自然増加の値はマイナスとなるわけで、つまり人口が減少していると読み取れる。1940年くらいにも同様に出生と死亡が逆転している部分がある。これも大戦の影響だろう。

人口がむしろ減少に転じたフランスこそ、世界大戦の影響が人口に与えた影響が大きい国といえる。

6;フランスのグラフを見ると、一貫して出生率と死亡率の差が小さい。昔から人口増加率は大きく変化していない。

むしろイギリスこと、かつては多産少子、現在は少産少死の変化の度合が大きい。昔は出生率がとくに高く、それに対し死亡率はそれほどでもないので、両者の間隔、つまり自然増加割合が大きかった。現在は自然増加割合が低い。出生率が急激に低下し、少産の状態に移った。

 

問2 人口増加率に関する問題と考える。似たようなグラフは02B本第4問問3で登場している。

まず大陸ごとの人口増加割合を確認しよう。

3%;アフリカ                 2%;中南アメリカ・南アジア

1%;東アジア・北アメリカ・オセアニア  0%;ヨーロッパ・ロシア・日本

国際間の人口移動は全体から見ればわずかなものなので(つまり人口の社会増加は無視できるということ)、この割合は人口の自然増加と一致すると考えていい。つまり、出生と死亡の差。

死亡率というものは実は世界中どの地域でもあまり差がない(02B追第4問問1参照)。死ぬ年齢層が違うだけだ。発展途上国で失われる生命は幼年層、先進国では老人が死ぬ。ただし全体から見た死亡数の割合はたいして変わらない。

というわけで、大陸ごとの出生率の高低を決定しているものは、主に出生率であると考えられる。「出生率の高い地域の自然増加割合は高い」という公式が成り立つ。しかも国の人口変化のほとんどは前述のように(社会増加ではなく)自然増加なので、この公式を「出生率の高い地域の人口増加割合は高い」と言い換えることもできる。この公式については「逆」も成り立つ。つまり「人口増加割合の高い地域の出生率は高い」も真である。

(ちょっとおまけ)上記のように「自然増加割合の高い地域の出生率は高い」という公式が存在する。同様に「社会増加割合の高い地域の出生率は高い」という公式もある。流入したり流出したりする人口のほとんどは労働者であり、年代の若い層に限られる。人口の社会増加が大きい地域では流入する人口が多いのだから、若い世代の割合が高いこととなる。彼らが子どもをもうけるケースも多い。よって社会増加割合の高い地域では出生率が上昇する。流出が多い地域では出生率は低下する。

ただしこれについては逆は成り立たない。「出生率の高い地域の社会増加割合は高い」とは必ずしも真ではない。アフリカの貧しい国々で子どもがたくさん生まれる地域を思い浮かべてみればよくわかるよね。

では、問題について。「出生率の高い地域で人口増加率が高い」そして「自然増加率の高い地域で出生率が高い」のだから、アフリカの出生率は高いということになる。生まれる子どもの数が多ければ、当然15歳未満の幼年人口割合も高くなる。1がアフリカである。

同様に、「自然増加率の低い地域で出生率が低い」のだから、幼年人口割合の低い4が自然増加割合の低いヨーロッパである。

残るは2と3。2の方が幼年人口割合が高く、よって自然増加割合の高い地域であろうと思われる。アジアとアングロアメリカの人口増加割合は?

アングロアメリカとは北アメリカのことである。よって1%。

アジアは大変広い。ここでは上記の表から、増加率のはっきりしている南アジア(インドなど)と東アジア(中国など)を取り上げ、その平均をとってアジア全体の平均としてみる。南アジアと東アジアの人口規模はかなり大きいのでこの2つを元に計算して構わないだろう。南アジア2%、東アジア1%なので、アジア全体では1.5%くらいではないか。

以上よりアジアの方が北アメリカより人口増加割合が高いと考える。出生率も高く、幼年人口割合も高いと考える。よって、選択肢2がアジアに該当、3が北アメリカ。

問3 見慣れないグラフが登場。冷静に数値を具体的に読み取る作業が重要。

老年人口割合が7%を上回っている状態を「高齢化社会」という。老年人口割合が14%を上回っている状態を「高齢社会」という。

まずグラフを表に移してみよう。

 

高齢化社会になった年   高齢社会になった年

A国       1970年           1995年

B国       1940年           2015年(予測)

ドイツ      1930年           1970年

C国       1885年           1970年

 

A国は最も遅い時期に高齢化社会となったのに関わらず、急激に老年人口が増加し、95年には早くも高齢社会に突入した。これは日本だろう。

それと対照的なのがC。最も早い時期に高齢化社会となり、高齢社会となったのも早かったが、その老年化の進行は比較的ゆっくりである。これがスウェーデン。福祉国家としても有名。

Bは米国。今だに高齢社会にはなっていない。まだまだ若い国ということか。

 

問4 人口移動の問題。「若者が移動する」というセオリー。類題多数。

3が誤文。東京都の老年化指数が全国平均を上回ったのは、若年層が多数流出したからである。高地価の都心を避けて、若い世帯が郊外へと転居する。ドーナツ化現象を思い浮かべてもいいだろう。都心にもともと住んでいる人々には比較的高齢者が多く、彼らは住居を移動しようとはしない。

1;北海道の開発期には屯田兵と呼ばれる開拓農民が日本各地から送られた。労働力として重要なので若い層が中心なのだろう。

2;高度経済成長期には太平洋ベルト地帯に多くの人口が流入した。もちろん若い層が中心。東京圏に含まれる埼玉県にも多くの労働者やその世帯が流入したに違いない。

4;沖縄県は太平洋戦争の激戦地となった唯一の県。民間人の犠牲者が多数で、この時に若者の命が多く失われたため、半世紀後の現在、沖縄県では老人の数が少ない。老年人口割合が低い。その分、生産年齢人口割合が高いので出生率が高く、そのため幼年人口割合も高くなる。老人が少ないため死亡率も低い(っていうか50年前にすでに死んでしまったってことやけどね)。人口の自然増加率が高くなる。

5;少産少死ということ。98B追第2問問1図1のⅣ期に該当。この状態では人口は微増あるいは停滞する。新生児の数が少ないので幼年人口が少なく、死亡する者が少ないので(日本のような先進国では、死ぬ者は老人ばかりである。発展途上国の死亡者が乳幼児に偏っているのとは対照的)老年人口は多くなる。これにより、老年化指数は上昇する。

ちなみに老年化指数なんて初めて聞いたけれど、問題文にその求め方が説明されているので、理解は容易だね。老年人口の幼年人口に対する比率ってことみたいだ。この値が100を超えると、老年人口が幼年人口を上回っていることとなる。

 

問5 人口ピラミッドの読解。単にグラフを読み取ったらいいんだが、実は案外こういう問題が難しいんやね~(涙)。

この人口ピラミッドが実数を表すものであることに注意。横軸は人数を示している。00B追第3問問2の中国の人口ピラミッドも実数。01B本第5問問6のP市とQ市のものは割合(「%」である)。だからどうってことはないんだが、実数を使うこともできるし、割合で表すこともできるのだってことだけは押さえておいてほしい。

1;人口総数は減少したか?斜線のグラフと黒いグラフを比較する。どうやら70年から95年にかけて人口は減少しているようだ。では65歳以上の高齢者は?これについては、斜線グラフより黒いグラフの方が大きくなっているようだ。

2;70年のグラフ参照。「20-24」から「30-34」くらいの年齢層が他の世代に比べてかなり少ない。この年代は50年代60年代には10代や20代だったわけで、就学や就職のため、この町を出た者の数が多かったことを想像させる。

3;「70年に20歳未満だった人」は、95年には25歳から44歳である。この2つの年齢層を比較してみよう。数字は全て概数。

70年について。0-4歳男性(200人)、5-9歳男性(300人)、10-14歳男性(550人)、15-19歳男性(250人)、0-4歳女性(200人)、5-9歳女性(300人)、10-14歳女性(450人)、15-19歳女性(350人)。合計2400人。

95年について。20-24歳男性(50人)、25-30歳男性(50人)、30-34歳男性(50人)、35-39歳男性(100人)、20-24歳女性(50人)、25-29歳女性(50人)、30-34歳女性(50人)、35-39歳女性(100人)。合計500人。

以上より、2400人が500人に減少したことが分かる。流入が全くなかったとしたら、この世代の実に80%近くがこの町から流出したことになる。実際には多少はこの町に新しくやってくる者もあるだろうから、80%ほどの高率とはならないだろうが、それでも選択肢にあるように「約半数」どころの騒ぎではないだろう。

4;「1995年に65~69歳の年齢層」は男性300人、女性450人で合計750人。この世代は70年には40~44歳だったわけで、その時は男性300人、女性420人で合計720人。

720人が750人に増えたのだから、流出する人口より流入する人口の方が30人多かった(100人流出し、130人流入したというような感じ)と考えられる(実際には亡くなった人もいるだろうから、30人プラスアルファの分、流入が流出を上回っているはず)。

時間はかかるかもしれないが、じっくり取り組んでほしい。

 

問6 簡単だよ。「農業」は第1次産業に、「製造業」は第2次産業に、「卸小売業・飲食業」「サービス業」は第3次産業に、それぞれ該当する。

1のグラフの形は特徴的である。老年層に偏っている。これが「農業」だろう。農業の高齢化問題が最近叫ばれている。また日本では農業の兼業化が進み、生産年齢層に当たる男性が一家の家計を支えるため、企業や役所で働き、家に残された女性や老年層の者によって農業が行われることが多い。このような「かあちゃん」「じいちゃん」「ばあちゃん」による農業を「三ちゃん農業」といい、日本の農家の兼業化の様子や高齢化の進行を端的に表すキーワードとなっている。1のグラフでは生産年齢層の女性の割合こそ高くないものの、65歳以上の老年層の割合が極めて高いものとなっている。「じいちゃん」「ばあちゃん」が農業を行っているのである。

残る3つのグラフであるが、2と4は類似した形である。グラフの左右のバランス、つまり就業者に占める男女のバランスが取れている。ともに、20代前半の女性・40代女性の比率がやや高く、似たような産業を表したものではないかと想像できる。この2つは第3次産業の「卸小売業・飲食店」と「サービス業」に当たるのではないか。仲間外れのグラフ3が、第2次産業の「製造業」に該当すると思われる。

3を製造業とすると、いろいろ納得できる箇所が多い。まず、男性就業者の多さ。製造業だけでなく、工業分野全般において女性就業者は少ないと考えていいのではないか。また、実線と破線を比べた場合、90年から95年にかけて(わずか5年の間に!)この産業への就業者の様子は大きく変化したことがわかる。30代後半や40代前半に注目すればよくわかるように、全体的に就業者の割合が低下した(つまり就業者数が減少した;母体数である全就業者人口にはたいした変化はないだろうから)といえる。製造業にたずさわる者の数が減少する。まさにこれは「産業の空洞化」である。工場が海外移転することによって、日本国内で製造業に従事する者の数は減少するのだ。

それとは対照的に2や4のグラフではこの5年間にこれらの産業に従事している者の割合は増加しているようだ。現代の日本においては、第1次産業や第2次産業の従事者は減少し、その分、第3次産業従事者の数は増加している。このように産業構造は確実に変化し続けている。

ちなみに2と4はどちらがどちらかわかりません。どうでもいいやね(笑)。

 

第5問 ネパールの出題は01年02年と連続している。本問の作成者が数年連続して問題作成を担当しているのではないか。自分の得意とするネパールネタを用いているのかなと思う。それでもいずれの問題も知識ではなく思考力を問うものになっているので、そこがすごいな。

 

問1 気候グラフの問題。実はちょっと手ごわい。

4つの都市名が上げられている。都市についての知識はないだろうが、国名や標高が挙げられているので、それらが目安になるだろう。

4つの都市はいずれも標高がかなり高く、このことから類推するに全て大陸性気候が見られるところであると考えられる。海洋性気候ではないはず。海洋性気候ならば、海流などの影響によりかなりの高緯度であっても気候の季節的な変化が少なく、気温の年較差も小さくなるという傾向が現れる。しかしここで示された4都市についてはそのようなことはないだろう。だから、各グラフの気温年較差に注目すればいい。「緯度の高さと気温年較差の大きさは比例する」の公式に当てはめて考えていけばいい(気温年較差は、季節による昼の長さの違いによって生じる。低緯度地域では、一年を通じて昼夜の長さがほぼ同じなので、気温年較差も小さい。高緯度地域では、夏季はかなり太陽の出ている時間が長いため、意外と高温となる。しかし、夜の長い冬季にはかなりの低温となる。季節による昼夜の長さのバランスが悪いのだ)。

最も低緯度地域にある都市のものはグラフ2だろう。次いで1と4が同じくらい。最も高緯度が3か。3のグラフでは気温年較差が20℃以上に達し、これは日本の標準的な気候のものに相当する(東京など)。冬季の平均気温は0℃くらいのようだが、これは東京(1月平均気温5℃)と札幌(同じくー5℃)の中間くらい。

ネパール、米国、中国、ボリビアの内で最も低緯度にあるのはどれか?それはボリビアだろう(ボリビアの位置を知らないといけないが、これについては白地図を使ってマスターしておいてほしい)。ボリビアのラパスが2に該当。確かめてみる。ラパスの標高は4000m。気温は標高100m変化するごとに、0.55℃ずつ変化するので、4000mならば海面(標高0m)より、22℃低い計算になる。グラフ2より、年間の平均気温(そもそも気温の年変化自体がないので、平均を計算する手間さえないが)はほぼ10℃。この気温を標高0mの地点のものに置き換えると(この作業を「海面更正」という。海面更正は00B追第2問問1のグラフで行われている)、10プラス22で32℃となる。かなりの高温であるが、低緯度地域としては決してメチャクチャな数値ということもないだろう。

米国と中国がどちらが高緯度なのかという話は放っておいて、とりあえずネパールは中国より低緯度にあるのだから、少なくともカトマンズのグラフが最も年較差の大きい(つまり最も高緯度と思われる)3ということはないだろう。1か4に絞られる。

1と4のグラフの決定的な違いとは何か?その一つは年間の平均気温だろう。1は最暖月15℃、最寒月0℃未満なので、年平均気温は7℃くらいだろう。それに対し、4は最暖月25℃、最寒月10℃ということで、平均は17℃くらいか。カトマンズの標高は1300m。これを海面更正する。(0.55×13=7.15)。つまり標高0mに置き換えたら気温をプラス7℃する。1のグラフなら14℃、4のグラフなら24℃。さあ、どう思う?ここからは感覚的なものに頼らなくてはいけないが。ちなみに東京の年平均気温は15℃。東京とネパールの緯度関係からネパールの(海面更正した)年平均気温を考える。第2問問1図1や地理Aの第1問問1図1などを参考にする。

リード文の「10月26日」「今は乾季で」「年間で最もトレッキングに適したシーズン」辺りにも注目しなくてはいけない。またネパールでは米作が行われている(モンスーンアジアに属するはずだ)ことなど想像しながら、何となく解くしかないよ。

というわけで、解答は4。10月は乾季といえるだろう(グラフ1でも10月は乾季といえるのだが)。トレッキングしやすい気温かな(でも20℃ってちょっと暑い?グラフ1だと10℃を下回っていてこちらはちょっと寒い。個人の好みが分かれるところやな・涙)。

というわけで、かなりややこしい手順を踏んでしまったが、理解できただろうか。ここでポイントになったことをもう一度整理しておく。

「気温年較差が緯度の高低の目安となる」。同緯度であっても、海洋性気候と大陸性気候とによってかなり年較差の大小に違いはあるが(02B本第5問問1)、本問の場合はいずれも高原の都市であり、海洋性気候ではないだろう。よって気温年較差を判定すれば緯度帯が予想できる。

「年間平均気温に注目」。低緯度で暑く、高緯度で寒い。これは当たり前。また赤道付近では年間平均気温は30℃に近くなる。沖縄20℃、東京15℃、札幌10℃という数値を知っておくと目安になる。

「問題文に注目」。本問においても、10月が乾季であることがリード文において示されている。これが十分な手がかりになる。また、問題文の中で都市名以外に国名と標高についてのデータが挙げられていて、これも推理する材料。

ちなみに1がラサ。標高3600mとかなり高い。海抜0mの地点よりも気温が20℃近く低くなる計算になり、夏季の気温が低い(グラフから判別するに、15℃くらいだろうか)点も納得。

3がデンバー。米国にあり緯度は比較的高いので(さらに内陸でもあるし)気温年較差は大きい。標高1600mであり、夏季の気温(25℃くらい)を海面更正すると30℃くらいになり、この点も適当と考えられるものである。

 

問2 「地形図問題は立体視がカギ」となる典型的な問題。

1;尾根線と谷線の判定ができるか。山頂から見て、等高線のふくらんでいる方向に下りていくのが「尾根線」。その反対に、山頂から見て、等高線のへこんでいる方向に下りていくのが「谷線」。尾根線は左右の見晴らしがよく、ハイキングコースに適している。谷線に沿って河川が流れていることが多い。

図2参照。DからCへと通じる山道はむしろ尾根に沿っている。BからAに通じる山道は等高線に平行であり、高低差はほとんどない。これは谷でもないし、尾根でもない。

2;点Bの東方や点Aの東方に散在するいくつかの四角形が家屋を示していると考える。つまりこの辺りが集落である。果たしてこれらが川沿いの低地にあると見なすことができるか。

3;ベニ川は確認できるね。西側斜面と東側斜面の傾斜を考える。等高線の粗密の度合を見ればいい。西側の方が密であり、急斜面のようだ。等高線が疎である東側斜面は傾斜が緩やか。

4;方眼の一辺が2cmであること、この地形図の縮尺が1/50000であることから考える。どんなもんかな?A・B間の長さの見当をつけて、計算してみてね。

5;等高線の間隔を考えてみよう。Bのすぐ南に「2600」の等高線があり、Cの西方に「3000」がある。このことを手がかりに、等高線の間隔は標高差40mであることを読み取る。5本ごとに引かれている太い等高線は200mごとである。

C・D間の標高差を読む。5本である。(5×40=200)。よって高度差は200mになる。

6;Aという文字の左肩の部分を太い等高線が通過している。この等高線は標高2200mであろう。これをずっとたどってみよう。ベニ川と交差している点を見る。そうするとこの等高線の北東側から南西側に向かって、ベニ川は流れているようだ。

以上より、正文の判定は容易だろう。

 

問3 農作物の成育条件の問題。高温で湿潤な気候が必要なのは米。トウモロコシはそうでもない。最も寒さと乾燥に強いのが大麦。

アの作物は全生産27千トンのうち、高山地域で10千トンが生産されている。約3分の1。

イの作物が高山で栽培される割合はそれほどでもない。ウに至っては、生産量こそ74千トンであるが、全体から見れば、高山で生産される割合はかなり低い。よってアが最も厳しい気候環境下に適応する大麦、高山を避けて栽培される傾向が強いウが米、その中間のイがトウモロコシである。とくに米は全生産の8割近い2445千トンが平野地域で栽培されており、水田が低平な地形に広がっていることが想像される。

農作物を植物としてとらえ、その生育条件を真っ先に考えることが必要。

 

問4 おもしろい問題。うまいなあ。

表2参照。シェルパ語・チベット語のグループ、ネパール語・ヒンディー語のグループとに分類されることは明らか。

ちょっと気になるのはシェルパ語なのだ。こんなん全然聞いたことない。初耳や。一体どこで使われているんやろ?とりあえずシェルパ人によってシェルパ地方で使われている言葉なんちゃうんかな?

というわけで、リード文参照。「シェルパ族が多数居住するナムチェバザール」という記述が見られる。ナムチェバザールという町にシェルパ族は住んでいるようだ。問3の図3参照。高山地域にナムチェバザールという町がある。ここはシェルパ族の住むところ。ここでシェルパ語が使用されていると考えてよさそうだ。

この図3で示されているのはネパールという国。おそらくその大半の地域ではネパール語が使われていると考えられる。それに対し、ナムチェバザールではシェルパ語が使用されている。ということは、シェルパ語・チベット語グループとネパール語・ヒンディー語グループの境界線はネパール国内を通過していると考えていいだろう。ネパールではネパール語とシェルパ語、両方が用いられているのだから。

よって解答は2となる。ネパールにだけ注目すればいい。ネパールはインド北部に隣接する細長い形状の国。図3を参考に似たような形を探したらいい。

このように、与えられた資料をフル活用して問題を解くという作業こそがセンター地理において求められていることなのだ。知識が求められているのではない。資料活用能力が求められている。異なるページに載っている複数の資料(リード文、図3、表2など)から解答を導くというのは決して容易なことではない。でも、集中力と注意力を発揮すれば確実に正解にたどり着く。いい問題やと思うよ。

(おまけ)ここまで述べてきたように本問を解くのに知識は必要としない。逆に知識があると間違える。民族や言語についての知識があるものは解答を4としてしまいがち。4の境界線の北方にはインドヨーロッパ語族に属するアーリア系住民が住んでおり、南方にはドラビダ語族のタミル人などが住んでいる。言語学的に有名な境界線である。しかし本問(ネパール語やシェルパ語の区分)とは全く関係ないものであり、4は正解とはいえない。下手な知識がかえって思考を阻害してしまうことの例。

 

問5 見事な問題!すばらしい。おもしろい。個人的ランキングではセンター試験至上第2位やな。1位は地理Aにあった都心再開発の問題。本問はそれに次ぐ。

「野菜」はセンター地理において最大のキーワードの一つ。野菜と書いて「新鮮」と読む。

新鮮さが求められる野菜は都市近郊の耕地で栽培される。収穫してできるだけ早く消費者の口に入るようにしないといけない。近郊農業。97B追第2問問5選択肢2。

冷凍トラックの普及により、遠隔地でも野菜の生産がなされるようになった。高知県や宮崎県などではビニルハウスを使ったナスやピーマンの栽培がさかん。97B追第2問問6。米国のカリフォルニア州でも近年は野菜の生産がさかんだが、ここでつくられたものは冷凍トラックで人口稠密なメガロポリス(米国大西洋岸の巨帯都市群。ニューヨークなど)に運ばれる。99B本第2問問5。温室作物とは具体的にはビニルハウスで栽培される野菜のことだろう。

新鮮さが求められる野菜だけに、国内自給率が高いのも特徴。80%程度。輸入に依存する割合は低い。97B追第2問問2。

輸入したとしても輸入先は近隣諸国が中心。中国や韓国など。99B本第3問問5参照。他の農作物のほとんどが米国からの輸入であるのと比べ対照的。

問題に戻ろう。表3の中で「野菜」の文字を見つけよう。「野菜・果物」とある。売り手人数は110人と最高。しかしそれよりポイントとなるのは「生産者」が売っているという事実。野菜と書いて新鮮と読む。新鮮なものを生産者が売っているという意味が分かるか?農家が野菜を栽培し、それを収穫しそのまま市場に持ってくるのだ。取ってすぐに売る。もちろん新鮮な状態を保って。逆に商人が野菜を売るケースはない。この表における商人とはおそらく遠方からやってくる人々のことではないか。つまり新鮮な野菜を売ることはできないのだ。

「生産者が売る物は新鮮さが必要とされる物である」という公式に基づいて、Rを判定する。野菜と同様、保存が効きにくく、腐りやすいものだろう。ということでこれを「肉類」とする。肉類は冷凍設備を用いれば長期保存が可能であろうが、ネパールの市場にそのようなものがあるとは限らない。生産者が、傷まないうちに肉を市場に持ってくるのだ。

その反対がQ。こちらは商人だけである。保存が効く物に違いない。腐りにくいというより、そもそも腐ることのないものなのだろう。というわけで、これを「衣類」と見なす。

最後にPについて。生産者と商人、ともにこの品目を扱っており、肉類と衣類の中間的な性質を持つ物と考えられる。つまり保存はしやすいが、いつか痛んでしまうこともあるだろう。これを「穀物」と考える。肉に比べれば保存は容易。しかし食品であるので、あまり長期保存はしたくない。売り手人数が多いのもポイントかな。毎日主食として食べるものであるので、需要も多いと考えられる。

センター試験でよく登場する話題である「野菜=新鮮」をキーワードとした思考問題であり、非常におもしろいし、やりがいもある。この調査自体も興味引かれるものであり、この表3は実に味わい深い。

(おまけ)ちょっと思ったんやけど、肉類の売り手が少ないのってこの地域の食文化と関係あるんかもしれないね。インドに近いやん。牛肉食をしないというヒンドゥー教の影響を受けているのかもしれない!?

 

問6 極めて珍しい小地形の問題。図が与えられているので参考にする。

まず問題文。ヒロシさんは「堤防状の丘」を登った。つまり少なくとも小高い地形であるということ。図4を見てもそれが分かるだろう。堤防上の丘とはXのような場所であるらしいが、氷河の末端に盛り上がった地形が見られる。

このことから考えて、選択肢1が正解となるのではないか。氷河によって削れらた土砂が運ばれてその末端に積もる。モレーンというものかどうかは知らないが、選択肢1の記述内容でとくに疑問はないだろう。

2や3では「谷」とされているし、これでは堤防上の丘にはならない。4にしても「峰」とあるので、丘というわけにはいかないだろう。

参考問題は01B本第3問問4選択肢4。ここでもモレーンという名称は重要でなく「氷河によって運搬された堆積物」と表現されている。

 

問7 資本主義社会は競争社会である。平等社会の実現を理想としつつも、その内包する矛盾の前に潰えてしまった社会主義。その反対の概念である資本主義(つまり「金」主義)はむしろ競争原理の導入による社会・経済発展を前提とする。つまり金の支配と影響力が強まれば、同時に経済的な格差も生じるのだ。そして現代はまさにそんな時代である。

選択肢2参照。所得が向上するということは、その地域内で流通する金の量が増加するということ。金を持つ者と持たざる者の格差が開き、貧富の差が拡大する。

 

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