たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2009年度地理B本試験[第1問]解説

2009年地理B本試験

ファースト・インプレッション
まだ解説を書いていない段階で、まずこのファーストインプレッションを著している。とにかく「いい問題」であるというのが僕の第一印象。僕が理想とするセンター試験とは「やや難易度が高いこと」が挙げられるのだが、今回はその条件を満たしていると思う。単に難易度が高いだけなら、2003年のように悪問だらけにしたらいい。でもそれじゃあそもそもが不適合だよね。今回は、基本的に良問が揃って、しかも難易度がやや高い。ようするに、しっかり勉強した者にとっては何とかしがみつけるレベルではあるけれど、勉強していなかった者にとってはまるで手も足も出ないといった状況。僕は、それがセンター試験のあるべき姿だと思うし、今回はそれに近かった。というか過去のセンター試験史上、最も理想に近かったといっても過言ではないだろう。

2009年度地理B本試験[第1問]

自然環境ネタというより、限り無くヨーロッパ地誌に近い。その分だけ難易度は高かったと思うよ。
嫌だなと思ったのは、問2と問5。これらは落としても仕方ないかなとは思う。

2009年度地理B本試験[第1問]問1

[講評] 最近の気候グラフ判定はこうしたハイサーグラフが基本になっているみたいだね。ハイサーグラフは昔は全く登場していなかったのだが、2003年以降はむしろこれが一般的になっている。とはいえ、逆にこれだけ登場していると、過去問を解くだけでも十分にハイサーグラフ読解の練習はできるのでさほど困難なアイテムでもないような気がする。

[解法] ハイサーグラフで問われているけれど、その読み方はわかるよね。今回は読み取り方は省略。すでにわかっているものとして話を進めていきます。
まず4地点を確認。そしてマドリードが問われていることも確認。「気温と緯度は反比例する」というセオリーがある。っていうか、結局「赤道に近ければ暑くて、極に近ければ寒い」ということ。これは絶対的なセオリー(*)。他の3都市に比べ、あきらかにまドルリードは低緯度に位置する。要するに、最も高温であるものを選択すればいい。1が正解。
(*)この「低緯度は気温が高く、高緯度は気温が低い」というセオリーには例外がある。それは「標高」という要素。低緯度であっても標高が高ければ年間を通じて気温は低くなる。ま、これは当たり前だよね(笑)。とはいえ、センター試験の気候グラフで標高を考える場合には、00B本第5問問1のようにわざわざその旨が示されているし、あるいは04B追第2問問2のように南米大陸が取り上げられる場合だけ(南米には高山都市が多いのだ)。ヨーロッパが取り上げられた今回の問題で標高を考える必要はない。

[最重要リンク]
解法の部分では全く無視しているけれど、問われている気候区はいわゆる「地中海性気候」。ケッペンの気候区分は全く話題とされないセンター試験ではあるが、こうやって少しずつそれっぽいものは登場している。ケッペンを系統的に勉強する必要はないけれど、最後の仕上げの段階で地中海性気候のみられるエリアだけでもチェックしておくなどの対策が必要かもしれない。
昨年の問題をひもといてみよう。08B本第1問問1参照。dのイタリア半島中部(これはローマでしょう)が問われている。大陸西岸中緯度地域には夏季乾燥型の気候が表れるのだが、まぁここについては典型的な地域でもあり、そのまま地中海性気候というように考えてしまえばいいだろう。

[関連問題]
地中海性気候が問われている。
05B本第1問問4参照。クが地中海性気候のハイサーグラフであり、都市はAのケープタウンを示している。本問の3のグラフと比較してみよう。他のグラフが、横長や縦長、あるいは右肩上がりなのに対して、地中海性気候のものは「右肩下がり」となっている。これは非常に特徴的な形であるといえる。目に焼きつけておこう。
なお、この05年のグラフは南半球のものなので、最も暑い月が「1月」となっており、最も寒い月が「7月」となっていることにも注目しておこう。地中海性気候のハイサーグラフは、北半球と南半球では右肩下がりという形は同じだが、数字(つまり月)がひっくり返っているのだ。
さらに各都市の気候が問われた例も挙げていこう。
マドリードについて。
00B追第5問問1参照。Xのグラフがマドリード。中緯度高圧帯の影響によって夏季に乾燥し、偏西風や寒帯前線の影響によって冬季に湿潤となる。
ダブリンについて。
05A本第1問問3参照。ダブリンと似たような地理的条件を持つ都市としてポルトガルのリスボンがある。もちろん冷涼なダブリンと温暖なリスボンの違いはあるが、海洋(暖流)の影響や恒常風(偏西風)の影響が強く、年間を通じて気温年較差が小さい。ダブリンもリスボンも(そして似た様な条件を持っているサンフランシスコやニュージーランドも)気温年較差は「10℃」程度というかなり小さい値。本来緯度と気温年較差は比例するのだが、これらの都市はその数少ない例外。
ワルシャワについて。
05B追第3問問1参照。ワルシャワと同じ特徴を持つ都市として、東ヨーロッパ内陸部のライプツィヒが挙げられている。寒暖の差に加え、夏はやや多雨、冬はやや少雨というつまり「普通の気候」。ただし内陸部であるため、沿岸部に比べれば全体として降水量は少なめ。
タリンについて。
ここは過去問にないんだよね。僕はかつて模試で取り上げたことはあったけど、別にキャラクターがあって出題したわけでもない。とりあえず01B追第1問問3参照。「酪農」がバルト3国だが、とりあえずバルト海沿岸は北欧の典型的な気候パターンがみられるということだろうか。

[今後の学習]
ハイサーグラフは近年出題が相次いでいるので、センター過去問の中からハイサーグラフが登場しているものをコピーして「見なれて」おこう。また、手間に思うかもしれないが、ハイサーグラフ一つ一つについて、普通の気候グラフに書き直す練習もしておいていいかもしれない。1月の気温・降水量から12月の気温・降水量まで一覧にしてみて、それをグラフに組み立てていく。そういった面倒な作業を繰り替えすことによって、地理の根本的な力がアップするのだ。
また今回はたまたま地中海性気候が出たけれど、だからといってこの気候ばかりが出題されているわけでもない。それよりもやはり「暑いか寒いか」で考える習慣を身につけておくべきなのだ。

2009年度地理B本試験[第1問]問2

[講評] 大陸棚ってちょっとヤバい。大陸棚が出るとは思わなかった。いや、昨年の追試で実は大陸棚が登場しているんだわ。当然、マークしておくべきだった。僕のミスだな。そもそも海溝や海嶺など海底地形はセンターの常連なのだから、今後は、遅ればせながらではあるけれど、大陸棚についても出題傾向を分析し、考慮に入れていかないといけない。

[解法] 海嶺は必須。アイスランド島は海嶺上に成立した火山島(大きな爆発はしないので火山島というより溶岩台地といったイメージしやすいが)である。海嶺は「プレートの広がる境界」。よって選択肢は1と4にしぼられる。
ここから大陸棚の判定。大陸棚とは水深200mまでの浅海底。日本の近海では、九州と朝鮮半島、中国華中との間の東シナ海の水深が浅く、大陸棚となっている。大陸周辺に広がっていると考えるのは妥当だが、ではその範囲はどこまでなのか。
ポイントはアイスランド島。ヨーロッパ大陸部からアイスランドまで、大陸棚が(つまり浅海底が)連続しているのだろうか。
ここで考えること。海洋の広い面積を占める部分は大洋底といい、その深度は4~6千mに達する。日本でも太平洋岸などはこれぐらいの深度である。大西洋もそのほとんどがこの大洋底と考えるべき。さらに海嶺であるが、これは前述のようにプレートの広がる境界であり、巨大な海底山脈であることを考慮する。その標高(というか海底からの比高というべきだろうが)は2~3千mに達するという巨大な山嶺である。
つまり深度数千mの広大な大洋底の中に、標高数千mの巨大山脈が走っているということ。さぁ、君たちはどう思う?こんなスケールの大きな地形の中に、大陸棚などという規模の小さな地形が顔を出す余地があるんだろうか。イギリスやノルウェーの周囲は水深が浅くとも納得できる。アイスランド島の周辺も然り。問題はその両者をつなぐ「渡り廊下」だ。ヨーロッパ大陸からアイスランドまで、ずっと大陸棚がつながっているのだろうか。やっぱり僕はそんなことはないと思うわけだ。大西洋は巨大な海であり、その大部分は大洋底となっているはず。その大洋底を切り裂くように巨大な海底山脈つまり海嶺が大西洋の中央を横断し、新たなプレートを作り出しているのだ。そう考えた方が納得しない?4のように、ノルウェーからアイスランドまで達する大陸棚という「渡り廊下」は存在せず、1のように、大陸部とこの小さな火山島は完全に切り離されていると考える方が自然だと思う。

[最重要リンク] 大陸棚が出題されるとはヤバいな。でもその徴候はあったんだわ。
08B追第1問問3参照。アルゼンチン東方のフォークランド諸島付近の大陸棚が問われている。まさかこんなマイナーなものが問われるなんて!僕はサクっとこんなのは無視してしまったのだが、大陸棚な十分にチェックしておくべきだったなぁ。僕のミスです。もっと考えて分析しないといけない。

[関連問題] 03B本第5問問1参照。地理Bの本試験で大陸棚が直接的に問われたのは本問のみ。ここでは東シナ海の大陸棚が問われているが、「大陸棚=水深200mまでの浅海底」というネタが重要。とにかく「200」なのだ。
01B本第1問問1参照。BとCの部分が浅海底すなわち大陸棚に該当。
94追第6問問1参照。大陸棚の範囲が示されている。タイランド湾を中心に、マラッカ海峡など。海溝がみられるスマトラ島(インドネシア)の南岸や、水深が十分であるロンボク海峡などは大陸棚ではない。ちなみに、最も南東にはアラフラ海の大陸棚も示されている。
03B追第1問問3参照。ここでは選択肢1と選択肢5に大陸棚の表記がある。選択肢1について。大陸棚の記述とはいっても「大陸棚が少ない」って言っているんだけどね(笑)。図1の範囲では、東シナ海(イのエリア)、タイランド湾・アラフラ海(アのエリア)、ベーリング海(イとウのエリア)が大陸棚。だから選択肢1は、自ずとエかオに限定される(オは選択肢4なので、消去法でこれは実はエです)。選択肢5について。「広い大陸棚」ってあるね。「周辺に世界有数の魚介類消費国」とあるが、これは中国(人口が大きいからね。漁獲量も世界1位)、日本や韓国(こちらは漁獲量はさほど大きくないけれど、1人当たり消費量が大きい)のことだろう。大陸棚はもちろん東シナ海。
01B本第3問問2参照。選択肢1「海水面が低下した時期には、ユーラシア大陸から北アメリカ大陸へのモンゴロイドの移動があった」(正文)。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の間のベーリング海峡は水深が浅く(つまり大陸棚)、氷河期の海水面が低下していた時代にはこのような人種の移動があった。

[今後の学習] 海底地形は頻出。陸上の地形よりも出題されるケースが多いぐらい。海溝と海嶺は必須なんでここでは大陸棚に注目していこう。
解法のところでも述べているけれど、日本の西方海域である東シナ海には大陸棚が広がっている(つまり水深が浅いっていうことね)。だから世界中の海の至るところに大陸棚があるように勘違いしている人がいるけれど、大陸棚なそんなありふれた地形ではない。以外にその場所は限定されているのだ。申し訳ないけれど地図帳を開いてちょっと確認していこう。
大陸棚1;東シナ海 九州~朝鮮半島~中国の間の海域。朝鮮半島の西側の黄海や黄河の河口が位置する渤海も大陸棚が広がる。
大陸棚2;タイランド(シャム)湾 タイが面する湾は全体的に大陸棚。これと合わせて、マラッカ海峡(マレー半島と、インドネシアのスマトラ島の間。シンガポールが面する)の水深が浅いことも知っておく。一方、これとは対照的にロンボク海峡(ジャワ島の東のバリ島、ロンボク島の間)の水深は深く、ここで大陸棚が終わっている。
大陸棚3;ペルシャ湾 大陸棚っていうかとにかく水深が浅い。そもそも浅くなければ海底油田なんか掘れないものね。
大陸棚4;北海 今回の問題を参照。北海油田というものがあるのだからそんなに深かったらあかんよね。
大陸棚5;北米大陸大西洋岸 カナダからメキシコにかけての北アメリカ大陸の大西洋岸に沿って、帯状に大陸棚が広がっている。決して広大なものでないが、その様子は地図で確認しておいた方がいい。なお、メキシコ湾やカリブ海の中央部は比較的水深が深い。
大陸棚6;アルゼンチン大西洋岸 アルゼンチンからフォークランド諸島までの間に大陸棚が広がる。こんなマイナーなネタを出題するなんて08年の追試験は全くとんでもない野郎だ!
大陸棚7;アラフラ海 オーストラリア北部のニューギニア島との間の海域。実はここも浅いんだよね。熱帯低気圧(インド洋に含まれるのでサイクロン)も多く発生する。
大陸棚8;ベーリング海 ユーラシア大陸と北米大陸の間。最終氷期には、陸地部分の雪氷の量が増えたため、海水面が低下し、浅い海底が陸地となったが、このベーリング海峡もその一つ。ユーラシア大陸のモンゴロイドが陸化したこの部分を渡って北アメリカ大陸に移動。イヌイット、アメリカインディアン、インディオといった南北アメリカ大陸の先住民となった。
まぁこんな風にたくさん挙げてしまったけれど、もちろん全部覚える必要はないよ(笑)。今年出題された北海や、日本周辺の東シナ海なんかは今さら覚えることもないだろう。マイナーなくせに昨年出題されたフォークランド島周辺や、おそらくどうでもいいであろうアラフラ海も不要。カリブ海がちょっと気になるとはいえ、これも重要ではないと思う。モンゴロイドの移動という人種ネタとしては重要だが、地理Bではそれは強調されるネタではなく、ベーリング海も要らないだろう。となると、結局一つしか重要なものが残らないわけだ。それってどこだ!?そう、東南アジアなのだ。タイランド湾一帯に広がる大陸棚は絶対にチェックしておいてほしい。これしかないと思う。これにからめて、ナンシャー諸島の海底油田・ガス田、マラッカ海峡が浅いこと(そしてロンボク海峡が深いこと)が取り上げられる可能性もある。非常に重要なポイントだと思うよ。東南アジアの地図を広げて、水深が浅い範囲を確認しておくのだ。地図をみるのが面倒な人はもちろん94追第6問問1図1を参照しよう。
それからもう一つチェックしておいてほしいんだが、普通はユーラシア大陸と日本のように、大陸周辺の島々は大陸と大陸棚によって「つながって」いることが多いのだが、その例外も知っておこう。今回のアイスランド島がそれに該当するのだが、ニュージーランドも同様。オーストラリア大陸は北のニューギニア島とは大陸棚によって「つながって」いるのだが、ニュージーランドとの間には大陸棚は存在せず、その関係性は薄い。ニュージーランドは「孤児」であるのだ。
それにしても今年は水産業の問題も多かったし、やたら「海」が強調された回だったなぁ。もっとも、地中上においては海の面積は陸の倍以上あるのだから、重要なのも当たり前なんだよね。

2009年度地理B本試験[第1問]問3

[講評] 断面図問題。例年、断面図問題は難易度が高い傾向にあるのだが、今回はそうでもなかったと思う。古期造山帯と新期造山帯の位置関係がわかっていれば解答可能だし、とくにヨーロッパにおいて「北が新期造山帯、南が新期造山帯」っていうネタは鉄板で知っておかないといけないのだ。

[解法] Aを特定するので、Aに特化して考えてみようか。これはスカンジナビア半島。大西洋に面した側がノルウェー、その反対でバルト海に面した国がスウェーデン。
ノルウェーについては山岳国と考える。しかし、ヨーロッパ北部の山脈が全てそうであるように、ノルウェーも古期造山帯であり、長い年月(古期造山帯が形成された古生代は2~3億年も前の時代なのだ)の間に侵食が進み、山頂付近は削られ、全体としての標高は低い。
スウェーデンは、安定陸塊の楯状地に国土が位置する。これはバルト楯状地というのだが、あまり凹凸のないほぼ平坦な地形。もちろん標高も低い。
このことから考え、2が正解となる。ノルウェー側が標高の低い山地、そしてスウェーデン側が平坦な地形。
1はBだろうか。北ドイツからロシアへと広がるヨーロッパ平原。
CとBはいずれも南部ヨーロッパに位置し、新期造山帯。どちらがどちらかはわからないが、とりあえず4については標高が3000m近くに達し、いかにも険しい山やなぁと感じてほしい。

[最重要リンク] 北欧の国ごとの地形的キャラクターは整理しておかないといけない。ノルウェーが古期造山帯、スウェーデンとフィンランドが楯状地。ついでにアイスランドが溶岩台地で、デンマークが大陸氷河に侵食された平坦な地形。
01B追第2問問2参照。この問題からノルウェーとスウェーデンに関する説明を抜粋してみよう。「ノルウェーでは、急斜面で流下する多数の河川を利用して水力発電が行われ、その発電量が総発電量の大部分を占めている」。ここでは「急斜面」に注目してほしいのだが、ノルウェーが山岳国であることが明確である。
「スウェーデンは、国土の大半がなだらかな傾斜地からなっており、偏西風の風下にも当たるので、酪農中心の農業が行われている」。ここでは「なだらかな傾斜地」に注目。スウェーデンは楯状地から成る国だが、楯状地というのは安定陸塊に含まれる地形で、形成年代が非常に古い(6億年以上前)。ほぼ平坦な地形。

[関連問題] 08B本第1問問4 ユーラシア大陸中央部の断面図。これは難問だからどうでもいいでしょう。「断面図問題は難しい」という意味で参考にしてください。
08B本第1問問3 カナダ東部のカナダ楯状地が問われている。楯状地について詳しいことは知らなくていいが、とりあえずほぼ平坦な地形であることだけ知っておけばいい。世界に楯状地は2カ所。カナダ楯状地とバルト楯状地。バルト楯状地はスウェーデンとフィンランド。つまり、スウェーデンは平坦な地形なのだ。

[今後の学習] こうした半島で「片方が高く、片方が低い」という組み合わせはテストで問いやすい。今回のスカンジナビア半島だけでなく、過去には朝鮮半島も出題されている。
一つヤマを張っておこうか。それがマレー半島とスマトラ島。マレー半島は東側が高くて、西側が低地。浅い大陸棚のマラッカ海峡を隔てて、スマトラ島は東側が低地で、西側が高い。どうだろう?周囲に大陸棚(タイランド湾)や海溝(スンダ海溝)などもあって、海底地形としてもおいしい地域だったりする。東南アジアが地誌問題で出題される機会があれば、この断面図は当然狙われると思うよ。地図帳で確認しておいてくださいね。

2009年度地理B本試験[第1問]問4

[講評] 毎度毎度の火山ネタ。もう飽きたっちゅうねん(笑)。

[解法] 火山はセンター試験必須アイテムだね。とくにその分布地域は超マスト!環太平洋造山帯に沿う太平洋沿岸地域とカリブ海、そしてハワイ、キリマンジャロ、イタリア、アイスランド。
ア~ウの文章を読む。イとウには「火山」の文字が含まれ、アにはない。つまり、アには火山が存在しないっていうこと。火山があるならば、イとウと同様に文章のどこかに火山という言葉を入れてくる。だって火山はセンターで非常に重要なキーワードだから。でもそれがないっていうことは、アにはどうしても火山という言葉を入れられない理由があるっていうことだよね。要するに「火山がない」のだ。
Fはアイスランドなので当然火山。プレートの広がる境界である大西洋中央海嶺上に位置し、地下からマントルが湧出してくる場所なので、溶岩台地という名の火山島となっている。
Gはイタリアなので、これも火山。一般的に火山が少ないアルプスヒマラヤ造山帯ではあるが、例外的にイタリアには火山がある。
よって、ア~ウのうち「火山」という言葉が含まれないアが、残ったHとなる。Hのトルコは、新期造山帯のアルプスヒマラヤ造山帯に含まれる高原。ただし新期造山帯とはいえ、アルプスヒマラヤ造山帯にはイタリアやインドネシアなど一部を除けば火山は存在しないので、ここにも当然火山はありえない。
イとウについては火山以外の言葉で考えないといけないけれど、明確なキーワードが入っているから大丈夫だと思うよ。それがイの「氷河」。氷河には、大陸氷河と山岳氷河があり、それぞれ高緯度地域、高山地域のキーワードなのだが、ズバリFとGで氷河がみられるのはどっちだと思う?
普通に考えて高緯度のFじゃないかな。北極に近く、陸地の大半が大陸氷河によって覆われていると考えていいと思う。Gは氷河が存在するには低緯度すぎるよね。Gが標高の極めて高い山で、山頂付近に山岳氷河が存在する可能性も否定できないけれど、FかGどっちかに氷河があるっていうなら、やっぱり普通はFって考えるよね。素直に考えればいいよ。寒けりゃ氷河があるってもんだ。よってFがイで、Gがウとなる。

[最重要リンク] 08B本第1問問3を参照してください。さまざまな要素が入った問題。
アでは「ノルウェー=古期造山帯」が問われている。これは本年の第1問問3との整合性がある。
イでは「楯状地」が問われている。スウェーデンやフィンランドの地形が問われた本年の第1問問3問7との整合性がある。スウェーデンやフィンランドを含むバルト海沿岸は「バルト楯状地」。安定陸塊に属する地形で、ほぼ平坦。
ウでは本問と同様に「火山」がキーワードになっている。火山の位置は「環太平洋造山帯(太平洋周辺とカリブ海)」「インドネシア」「イタリア」「キリマンジャロ」「アイスランド」「ハワイ」である。ここではユーラシア大陸東部のシベリア太平洋岸が挙げられている。

[関連問題] 火山に関する問題は多すぎるので、挙げたらキリがない。ということで、あえてHの地域つまりトルコに注目しよう。
07B本第1問問1参照。Bの地域がトルコ。「この地域では、高原の北縁に沿う活断層の活動にともなって地震が発生し、この周辺の居住地で大きな被害が生じる」と説明されている。「海嶺」や「海溝」、さらに「火山」のようなおいしいキーワードが全く存在しない。ここは単に「新期造山帯だから地震が生じる」といったような定義。ま、キーワードがないことがキーワードかな。
04B本第3問問2参照。トルコ中央の高原地帯について「高原上のステップの中に塩湖が点在しているこの地域には、古代に建設された地下都市遺跡があり、この国有数の観光地となっている」と説明されている。
08B本第3問問2参照。イの「祖国解放運動が展開した国土のほぼ中央部に、首都が置かれた」がトルコの説明。沿岸部の人口最大都市イスタンブールではなく、首都は乾燥し地震も多発するような内陸部の小都市アンカラに置かれているのだ。

[今後の学習] やっぱり火山なんだと思う。火山のある場所は徹底的に問われているので、これは鉄板にしておかないといけない。
さらにもう一つ、文章を読むテクニックも磨いておこう。今回は「火山」とか「氷河」とかセンター試験ではレギュラーともいえる重要アイテムが登場しているわけだけれど、この有無を文章のニュアンスから判定していかないといけない。
まず火山。イとウには「火山」という言葉が含まれ、アにはない。火山がテーマとされていることは明確だが、それなのにアには火山という言葉がない。つまりここから、「イとウには火山が存在する」ということだけでなく、「アには火山が存在しない」ということまで読み取らないといけない。火山があるんだったら、絶対に火山って書くよ。
さらに氷河。イとウを比べて、イには「氷河」とあり、ウにはない。これも同様に、「イには氷河が存在する」だけでなく「ウには氷河が存在しない」ということまで読解しないといけない。
「ある」ことだけでなく「ない」ことまで読み取る。こうした意識を常にもって、テクニックを養っていこう。

2009年度地理B本試験[第1問]問5

[講評] これって意外と難しかったと思うんだよね。でも、センター試験には鉄則がある。「君たちの知らない言葉は絶対答えにはならない」っていうやつ。「フェーン」って言葉自体は知らなくても「フェーン現象」っていう言葉は聞いたことあるはずだ。だからフェーンは決して君たちの知らない言葉ではない。でも「ボラ」ってどうだろう?知らないよね。ほとんどの人が聞いたことすらないと思う。この時点で選択肢は1~4に絞られるのだ。知らない言葉を答えにしてはいけない。

[解法]  「センター試験では知らない言葉は答えにはならない」のだ。本問もその例にもれない。「フェーン」っていう風の名前は知らなくても、「フェーン現象」っていう言葉は聞いたことがあるはず。だからフェーンという言葉は「解答に選ばれる資格」が十分にあるということだよ。一方「ボラ」っていう言葉。魚のボラは知ってるけれど(笑)、風の名前としてのボラなんて聞いたことすらないよね。だからボラを含む選択肢を答えにしてはいけない。5~8を消去しよう。
では、そのフェーン現象について、整理してみよう。本来なら図を書いて説明するべきだけれども、君たちの思考力を鍛えるためにあえて文章で表現してみるよ。図を自分で描きながら考えよう。
まずXとYの座標軸を描き、(3、0)に点Aを、(6、4)に点Bを、(9、0)に点Cをとり、三角形ABCを描き入れる。これを山にみたて、地点Aの標高は0m、Bは2000m、Cは0mである。(0、0)から(3、0)の間、そして(9、0)の右側は海と考える。海の中に大きな山がそびえているのだ。
風が(0、0)からX軸に沿って吹いてくる。それは海上の湿った空気をはらみ、水分を豊富に含む風である。Aにおける気温が30℃であると仮定しよう。風は山にぶつかって、線分ABを駆け上がっていく。高度を増した空気は冷却され、風上斜面側(つまり線分AB)に降水をもたらす。この時の気温の低減率は「高度100mごとに0.55℃」である。Aで30℃だった風の温度は、Bに達するころには19℃にまで低下する。2000mなので、(0.55×20=11)が低減する数値である。(30-11=19)となる。
山頂まで達した空気は、今度は風下斜面側(線分BC)を駆け降りる。今度は反対に、気温を上昇させながら。しかしここで変化の度合が異なることに注意する。湿潤な(つまり普通の)空気は「100mごとに0.55℃」ずつ変化していくが、乾いた空気の温度は「100mごとに1.0℃」ずつ変化する。標高2000mの地点Bで19℃だったこの風の気温は、標高0mの地点Cに達するころには何℃になるだろうか。(1.0×20=20.0)で20℃が加算されることになり、(19+20=39)で39℃という熱風が地点Cを駆け抜ける。これがフェーン現象。
フェーン現象の「フェーン」というのは、もともとはアルプス地方に吹く地方風(局地風)の名前。風下斜面側に異常高温をもたらすこのフェーンのような作用が、世界中の他の地域でもみられることから、それらをまとめてフェーン現象というようになったのだ。今回の問題は、フェーン現象の語源ともなったオリジナルのフェーンについての問いかけということ。風下側に気温「上昇」と湿度「低下」をもたらすのです。

[最重要リンク] せっかくだからフェーンという風について理解しよう。
98B本第5問問2参照。「アルプス山脈の北側の地域では、山脈を越えて吹き下ろすフェーンと呼ばれる風のために、高温乾燥になることがある」。地中海からドイツへと抜けていく南風がフェーン。本問の図1のKはもっと大きく書き込まれるべきだろう。
地中海から湿った空気がもたらされ、アルプス山脈の南麓(つまりイタリア北部)は多雨となる。しかし山脈を越え、北麓(つまりスイスやドイツ南部)を駆け降りる空気は乾燥し、次第に温度を高め熱風となる。まさに「高温乾燥」なのだ。

[関連問題] こっちを最重要リンクにしてもよかったんですが、02B追第1問問4参照。選択肢4がフェーンに関するネタ。「ヨーロッパアルプス北麓では、春先にアルプスを越えて湿った熱風(フェーン)が吹くと、気温・湿度がともに上昇し、雪解けが急激に進む」とある。正誤判定してみよう。っていうか誤文なんですが、さぁどこが誤文かわかるかな。ポイントは「対になる言葉」を探せ。とくにここでは形容詞に注目すると簡単。
またフェーンのことを地方風というのだが(惑星風や季節風に対する言い方)、この地方風に関する問題も一部にはみられる。
07B本第1問問5参照。選択肢4の文章がやませに関するもの。「日本の東北地方では、冬に寒冷な季節風が吹くと、日本海側では雪害、太平洋側では冷害が生じる」とある。そもそも冷害とは夏に生じるものなので、この文章はその時点で間違い。夏季の作物の成長時期に十分に気温が上がらないために、作物不良となることを冷害といい、対応する季節は「夏」である。とくにここでは風に注目してみよう。冷害が生じる地域は、北海道や東北地方の太平洋岸なのだが、その原因は太平洋岸を南下する寒流(千島海流)とその上から吹き込んでくる寒冷な地方風(やませ)である。選択肢4ではわざわざ「季節風」であることが強調されているが、冷害の原因となる風はやませであり「地方風」である。
07B本第5問問4参照。07年の本試験にはやませに関する問題が複数ある。太平洋岸で収穫量が「低」となる理由は、寒流とやませが原因となる冷害。

[今後の学習] 風をちょっと整理しておいていいかな。
風には大規模な風と小さな風があり、センターで重要になるのはもちろん大きな風の方。
大きな風には2種類あり、「惑星(恒常)風」というものと「季節風」とがある。恒常風は地球の風系を構成する巨大な空気の流れで「貿易風」「偏西風」「極風」がある。年間を通じ(っていうか地球が太陽の周りを公転している限り)、一定の強さで一定の方向から吹き続ける風である。
季節風は季節によって風向が逆転する風で、センター試験では東アジアと南アジアが問われる。東アジアは夏には南東から風が吹き、冬には北西から風が吹く。南アジアは夏には南西から風が吹き、冬には北東から風が吹く。これらは季節風であるが、センターではこれ以外の季節風は出題されない。
これらと全く異なるものが小さな風で「地方風」と呼ばれる。地方風はある季節にしか吹かないし、その範囲も限定されている。また季節風が夏と冬できっちり風向が逆転するのに対し、地方風はある季節だけ吹いて、他の季節は全く吹かないなど、変則的。っていうかどうでもいいんだね(笑)。
で、この地方風が、関連問題のところでも説明したように、少しずつ問われてはいるんだ。ちょっとぐらい知っておこうよ。とはいえ、世界に無数にある季節風のうち、出題されたのは「フェーン」と「やませ」だけなんで、特別な対策もいらないような気はするけどね。
ちなみにボラっていうのは、ユーゴスラビアからアドリア海を越えてイタリア半島の東岸に吹き付ける風(つまり風向は北東風となります)のことで、冬季にみられるもの。まぁどうでもいいでしょう。

せっかくなんで、風や熱帯低気圧に関するカタカナ言葉を整理!この辺りがごちゃまぜになって出題されたりするんだよね。
サイクロン・・・インド洋で発生する熱帯低気圧。
ハリケーン・・・カリブ海やメキシコ湾など北米周辺で発生する熱帯低気圧。
ウィリーウィリー・・・太平洋南部で発生する熱帯低気圧。
モンスーン・・・季節風。
フェーン・・・アルプス地方の地方風。なお「フェーン現象」となると、世界中でみられる。
ボラ・・・旧ユーゴスラビアから地中海方面に吹く北東風。乾いた寒風。
ミストラル・・・フランスから地中海方面に吹く北風。乾いた寒風。
やませ・・・北海道・東北地方の太平洋岸に吹き込む北東風。冷害(成長期の低温による作物不良)の原因。

2009年度地理B本試験[第1問]問6

[講評] 植生!ビンゴだな。

[解法}  植生っていうと、熱帯雨林とか、サバナ(疎林と長草草原)とか、タイガとか、ツンドラなんかを考えるかもしれないけれど、実はセンター地理で重要なのはそういった区分ではなく、「針葉樹」「広葉樹」っていうやつ。これなら小学生でもわかるよね。暑いところが広葉樹で寒いところが針葉樹。で、この広葉樹がさらに二つに分かれる。「落葉広葉樹」「常緑広葉樹」。これも難しくないと思う。両方とも日本にみられるし。
ここまでは一般常識のレベル。ここから一歩踏み込むとセンター試験ネタになる。それが「硬葉樹」と「照葉樹」なのだ。常緑広葉樹はさらに細分化され、その中に含まれるのが硬葉樹と照葉樹。この二つは非常に重要なので絶対に知っておかないといけない。
硬葉樹とは、乾燥に耐えるように樹皮や葉皮が「硬」くなっている樹木のことで、オリーブなどがその代表例。地中海沿岸地域に典型的にみられる植生で、地中海性気候と対応する。地中海性気候は、夏季にほとんど降水がみられない気候だが、彼らはそういった状況に耐えるため、身体を硬くして過度の水分蒸発を防いでいるのだ。
それに対し照葉樹は夏季の降水量が多い地域にみられる植生。具体的な照葉樹林帯として、西日本から中国の南半分のエリアがある。君が住んでいるのが、照葉樹林帯なのだから、これは知っておいてもいいと思う。照葉樹は高温多雨な夏季に十分に活動ができるように、葉が広く丸みを帯びていて、肉厚。さらに表面は光沢があり「照」り輝いている。ツバキが代表例だが、センター過去問には(あるいは生物の教科書には)カシやシイ、クスが登場しているのでそちらも知っておこう。さらに西日本から中国南半部といえば茶の栽培地域とも一致しているのだが、茶すなわちチャノキはツバキ科の植物でもある。「照葉樹林帯=茶の栽培地域」とイメージしてもいいかもしれない。
このことを頭に入れて文章を検討していこう。Mはヨーロッパ北部である。
1;常緑広葉樹とは熱帯など気温が高いところ。該当しない。誤文。
2;硬葉樹は地中海性気候の地域の植生。これも誤文。
4;照葉樹は西日本から中国南部。関係ない。誤文。
よって3が正解となる。「落葉硬葉樹」は日本にもよくみられるもので、暑くもなく寒くもなくといったところだろうか。「針葉樹」は冷涼な地域。Mは落葉広葉樹はちょっとしんどいかなという気もするが、まぁ許容範囲だろう。針葉樹に覆われていることは事実だと思う。とくに3で矛盾はないようだ。

[最重要リンク] 新課程になって出題された植生に関する問題を取り上げよう。ポイントは「硬葉樹」である。
06B本第6問問1参照。地球温暖化に関する問題。「温暖化によって熱帯雨林が急速に拡大し、硬葉樹林の一部において熱帯雨林への移行がみられるようになった」という文の正誤を問う。どうだろうか?
硬葉樹は地中海性気候のキーワード。緯度35~40度付近にみられる植生であり、このような緯度帯で気温が上昇したとしても「熱帯」となるだろうか。もちろん10℃ぐらい気温が上がるような異常な状況が生じたらそのようなケースも考えられないことはないが、せいぜい数℃だよね(*)。それで地中海沿岸が熱帯になるとは思えないのだ。「硬葉樹=地中海沿岸」ということを確実に印象づけよう。
(*)もちろん数℃上がったってかなりヤバいことには変わらないんだが。

[関連問題] 実は植生に関する問題は少ない。
ベタな問題を紹介しておこう。02B対第1問問4参照。
aは冷帯地域であり、普通に「針葉樹」でしょう。クリスマスツリーことモミの木を考える。
最重要ポイントはc。ユーラシア大陸の東岸で、ほぼ中緯度一帯。これこそまさに「照葉樹林帯」ではないか。西日本(この図には日本は描かれていないが)から中国南部に至るエリア。ここがほぼ緯度20~30°Nぐらいに該当することも確認しておこう。
さらにその反対側の大陸東岸に目を移し「地中海性常緑広葉樹林」もチェック。っていうか、これを消して(わかりにくいから)、「硬葉樹」としっかり書き換えておこう。硬葉樹はまさに地中海沿岸地域にみられる常緑広葉樹なのだ。
bはどうでもいいです。
97B追第5問問4参照。地中海沿岸は硬葉樹である。硬葉樹は常緑広葉樹であり、落葉ではない。
97B追第1問問2参照。地中海沿岸の硬葉樹と、西日本・中国南部の照葉樹を確認。
98B追第5問問3参照。暑いところが常緑広葉樹で、寒いところが針葉樹。

[今後の学習] 植生を表す言葉を挙げておくと「熱帯雨林」「サバナ(サバンナ)」「ステップ」「砂漠」「硬葉樹」「照葉樹」「針葉樹」「ツンドラ」「氷雪」などがあり、それぞれ気候と合わせて考えること。
熱帯雨林・・・赤道直下の熱帯地域。ブラジル北部やアフリカ中央部など。
サバナ・・・熱帯草原のこと。熱帯雨林の周辺地域。
ステップ・・・草原のこと。砂漠の周辺。
砂漠・・・植生のない状態。中緯度高圧帯の影響が強いアフリカ北部やオーストラリア。
硬葉樹・・・地中海性気候と対応。
照葉樹・・・西日本と中国南部。
針葉樹・・・冷帯気候と対応。ロシアやカナダ。
ツンドラ・・・コケのこと。北極海沿岸など。
氷雪・・・大陸氷河。グリーンランド内陸部や南極大陸。
硬葉樹と照葉樹、ツンドラの出題率が高いので、これらについては鉄板!

2009年度地理B本試験[第1問]問7

[講評] ネタとしては難しくなかったとは思う。でも、いざ氷河湖に関する問題が過去にどこで出題されたかと言われるとちょっと頭をかかえてしまう。なぜか思い当たる節がないんだよなぁ。氷河湖ネタもちょっとこれから熱いかもしれない。

[解法}  問8は消去法で考えるべき問題なんだけど(実はこの原稿は問8の方を先に書いてしまって、それからこの問7の解説を書いています)、こちらは一発で解いてしまっていいと思う。北ヨーロッパなどヨーロッパ北部はかつて大陸氷河に覆われていて、現在その作用による地形が多く残されている。スウェーデンやフィンランドに多く存在する湖もその例。氷河湖である。正解は3。
1は乾燥地域にみられる湖。2は日本なら北海道の石狩川などにみられるね。4は日本でもっとも一般的な湖の成因だが、北欧には火山がないので、該当しない。

[最重要リンク] あえていえばこれしかない。01B本第3問問4参照。選択肢2だが、B付近(カナダ中央部)にようにかつて大陸氷河に覆われたところには、その侵食作用によって多くの湖が分布している。北米の五大湖も氷河湖の例。

[関連問題] 上でも述べているように氷河湖の問題は少ない。よってここではフィンランドを紹介しよう。でもこれも少ないんだよね。
02B本第1問問1参照。スウェーデンからフィンランドにかけてのDの説明は「最終氷期に厚い氷河(大陸氷河)に覆われたこの地域には、現在は針葉樹林が広がっている」というもの。大陸氷河はやっぱりキーワードなんだが、それ以上に森林の国であることが強調されているようだ。
07B本第2問問1参照。スウェーデンとフィンランドに円が描かれているアは「パルプ」。フィンランドは(スウェーデンも)豊富な針葉樹資源を生かして、パルプ・紙工業が発達している。
いちおう99B本第1問問5も参照してください。北欧は酸性雨の被害が大きいところだが、とくに問題となっているのは湖沼の強酸性化による生態系の破壊。空中から石灰を散布することで湖水の中和を図っている。このような風景はスウェーデンやフィンランドでしばしばみられる。

[今後の学習] 意外にこれ、ほとんど出題されないネタなんだわ。どうしたもんかな。スウェーデンやフィンランド、カナダには氷河湖が多いってことだけ知っておこうか。氷河湖は、面積の割に浅いっていう特徴があって、北米五大湖なんかはその代表例。
ちなみに日本には氷河湖はない。また世界最深の湖であるバイカル湖も氷河湖ではなく、断層湖。意外と氷河湖に関する問題って予想しにくいんで、とりあえず日本の湖沼とバイカル湖がこれに該当しないっていうネタが最も大切かも。

2009年度地理B本試験[第1問]問8

[講評] ケスタが問われた。ケスタは、まだ科目名が「地理」だった95年や、地理B初年度の97年などに連続して出題されたネタ。みんなも知っているようにセンター試験というのは「ブーム」があって、特定のネタが連続して出題される代わりに、一旦出題が止むとそこからしばらくの間は全く無視されてしまうということがある。ケスタもその例にもれず、十年以上前にブームがあったわけだが、今回不死鳥のように蘇ってしまった。予兆はあったんだけどね(それについては後述)。これから数年間またケスタの時代がくるかもしれない。要注意ではある。

[解法] ケスタの出題は10年以上ぶりなので、ノーチェックだった人も多いんじゃないかな。だから、問われているネタそのものはさほどヤバいものでもないんだが、センター研究に特化してきた諸君からすればいかにもハードルが高かったような気もする。
とりあえず消去法で。まず決定的に消えるのが4。もちろん「火山」という言葉。問4でもあったように、火山の位置は最重要アイテム。ヨーロッパ大陸北部に火山はありえない。
さらに1にも注意。ここに「活断層」という言葉ある。どうだろうか?センターにあまり活断層という言葉は登場しないものの、活断層が地震と関係するキーワードであることは何となく予想できるんじゃないか。かの阪神淡路大震災の時も、活断層が地震の原因だった(ちなみに近畿地方には火山は存在しないので、阪神淡路大震災は火山と無関係という日本では意外と珍しいタイプの地震だったのだ)。それに対し、Xが含まれるヨーロッパ北部。ヨーロッパは「北低南高」。北部は安定陸塊の平原が多く、いくつかみられる山脈も古期造山帯のなだらかな丘陵。それに対し南部は新期造山帯の険しい山々。変動帯で地震活動も活発。とくにイタリアには火山もみられる。
どうだろうか?「安定」であるX付近が「活断層」というのもおかしいんじゃないか。地震活動はみられないだろうし、活断層だってありえない。1も消える。
さぁここからは若干やっかいなのだ。残ったのは2と3。ポイントは2の「石灰岩」。石灰岩の溶食地形(*)をカルスト地形というのだが、さぁX付近はどうなんだろう?
Xはフランスの首都パリが位置するパリ盆地なのだが、君たちはできれば「パリ盆地=ケスタ地形」ということを知っておいてほしい。この言葉だけでいい。その成因などについてはまた余裕があれば覚えればいい。とにかく君たちはここが「ケスタ地形」であって、決して「カルスト地形」ではないことさえ意識できればいいのだ。
選択肢2の説明はカルスト地形に関するものなのだが、ヨーロッパでこの地形がみられるのは旧ユーゴスラビアのスロベニア(本図だとわかりにくいので、よかったら地図帳でスロベニアという国を探してみよう)。日本では山口県の秋吉台や福岡県の平尾台で典型的にみられるようなカルスト地形がこの地には広がり、表面にはドリーネとよばれる凹地、地下には鍾乳洞が複雑にからみ合っている。
だから、選択肢2は外してしまっていいと思うんだ。ヨーロッパでカルスト地形がみられる地域はただ一カ所、スロベニアだけと思ってしまっていい。
というわけで残った3が正解となる。ケスタ地形は、地層が「侵食」されることによって生じる地形。もっとも、3には侵食という言葉はないが、知っておいてもいいかもしれない。硬い地層と軟らかい地層が傾斜しながら重なっており、それが水平に侵食された時、軟らかい地層は完全に平坦になるほど削り取られてしまうのに対し、硬い地層については「でっぱり」として取り残されてしまう。これを「差別侵食」というのだが、それにより急崖と緩い斜面が連続する特徴的な地形が形成される。
(*)細かいところにこだわるようだけれど、石灰岩の場合は「侵食」とはいわない。侵食とはあくまで削り取られるイメージであるのに対し、石灰岩地域においては雨水に含まれた二酸化炭素が石灰岩を「溶かして」しまうのだ。本問においてはわざわざ「化学的に侵食」と述べられている。普通の侵食ではなく、溶食であることが意識されているのだ。

[最重要リンク] 科目名が地理だった時代の問題で恐縮ではあるけれど、95追第7問問1問2でケスタ地形に関する問題が出題されている。問1ではケスタの形状、問2ではケスタにみられる景観。
まず問1に注目してみよう。本問における図5を断面図にしたような図が登場している。硬い部分だけが取り残され「でっぱり」となっていることを理解する。「硬い地層」を赤、「軟らかい地層」を黄色などで塗ってみて、軟らかい部分だけが削られてしまい、硬い部分が取り残された「差別侵食」が生じている様子を目でとらえよう。
さらに問2。こちらは「パリ盆地がブドウの栽培北限である」という農業ネタなので、直接的にはケスタとは関係ないものの、「ケスタ=パリ盆地」はしっかり印象づけないといけない。

[関連問題] ケスタに関する問題はすでに上で説明してしまったので、ここではカルスト地形を確認しておこう。
04B本第3問問1参照。選択肢2がスロベニアのカルスト地形の説明。スロベニアというのは旧ユーゴスラビア構成国でEUにも加盟する国だが「イタリアのすぐ横」という位置関係は理解しておこう。「石灰岩の溶食」は非常に重要なキーワード。ちなみにカルストというのはスロベニアの地方名。カルスト地方にみられるからカルスト地形という。秋吉台が先に知られていれば、今ごろ世界的に「山口地形」っていわれていたんだろうけどね(笑)。

[今後の学習] 今回のポイントっていうのは、ケスタ地形っていう名称やそれがみられる地域だけが出題されたわけではなく、その成因まで問われたっていうことなんだよね。これがちょっと特殊。
成因に特色がある地形を挙げておくので、整理しよう。
カルスト地形・・・「溶食」である。土地が隆起したり、沈降したりしたのではなく、侵食とも違う。石灰岩が雨水(二酸化炭素を含む水)によって溶けてしまったのだ。
エスチュアリー(三角江)・・・「沈降」による。河口部分が沈降して、ラッパ状の入り江になったもの。水深が十分で天然の良港になる。
三角州(デルタ)・・・「堆積」による。土地の隆起や沈降など変動したわけではない。水深が浅く、港湾には適さない。
扇状地・・・「堆積」による。河川によって上流部から土砂が運ばれ、山地と平野の境界部にそれらが堆積し、緩斜面が形成。土地の変動を伴う地形ではない。
河岸段丘・海岸段丘・・・「隆起」による。とにかく段丘と聞いたら、隆起と決めつけていいよ。
洪積台地・海岸平野・・・洪積台地とは洪積世に平野だった部分が隆起し台地になったもの。海岸平野も同じく洪積世に浅い海底だった部分が隆起し砂浜海岸になったもの。いずれも「隆起」による。
リアス式海岸・・・「沈降」による。河川が侵食した谷(これを断面の形状から「V字谷」という)に海水が進入し、ノコギリ状の入り江になったもの。日本では東北地方太平洋側の三陸海岸が有名。
フィヨルド・・・「沈降」による。氷河が侵食した谷(これを断面の形状から「U字谷」という)に海水が進入し、葉脈状の入り江になったもの。日本にはみられない。
ざっとこんなものかな。最もポイントとなるのは、リアス式海岸とフィヨルドでしょう。エスチュアリーも含めて、「沈降」であることが重要。もっとも、リアス式海岸とフィヨルドに関しては、侵食谷が沈降して形成されたものであるので、厳密には「侵食→沈降」かな。この両者については意外に細かいところまで出題されているし、とくにリアス式海岸については「侵食により形成」というネタも過去問で登場している。再登場の可能性も高く、注意が必要。


表示:PC