たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんオリジナル解説[地理総合・探究]2025年/本試験 |
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第1問問1解説>
[ファーストインプレッション]普通の問題。センター/共通テストっぽくないな。少なくとも地理A・Bの時代にはあまりみられなかったタイプの問題だと思う。逆に地理総合・探究になったからこそ、こういった普通の問題がいくつか出題されるようになっているのかも。
[解法]階級区分図を用いた問題。大まかなジャンルとしては統一性は一応あるとは言えるが、
こういった問題ではまず「1人当たりGNI」に基づいて考えるのがコツ。1人当たりGNIが低い国が発展途上国、1人当たりGNIが高いのが先進国。1人当たりGNIすなわち経済レベルの高低によってこれらの指標における高低も変化するのだ。
まず「栄養不足人口の割合」だが、一般に先進国では食料は豊富であり、栄養不足となることはほとんどないと考えていいだろう。逆に発展途上国では飢餓や食料不足の問題はつきまとう。1人当たりGNIに反比例する指標と考えていいだろう。
さらに「1人1日当たりカロリー摂取量」だが、さきほどの栄養不足人口の割合と正反対になるんじゃないかな。先進国では飽食による肥満や糖尿病などの生活習慣病に悩む者も多い。その一方で発展途上国では食料は十分ではなく痩せ細るばかりの子供たちもしばしば見受けられるね。こちらの指標は1人当たりGNIに比例とみていいんじゃないかな。
「平均寿命」はどうだろうか。こちらも一般的に先進国で長命であり、発展途上国では以前として早く亡くなる人も多いとみていいんじゃないか。栄養状態や医療体制とも関連している。さらにいえば選択肢3カロリー量との関係も十分に想像できるね。栄養ある食べ物をたくさん食べることができる人々は総じて体力もあるし病気にもなりにくい(もっとも、先ほども指摘したように食べ過ぎは生活習慣病を引き起こすことになるけれど)。こちらも1人当たりGNIと比例する。この時点で選択肢3と選択肢4は特徴が重なり、j判定が難しい。この2つは解答の候補から外していいんじゃないかな。
残って「穀物の輸入依存度」だが、これは農業の特徴を考えればいい。自給的な農業地域か、商業亭な農業地域か。自給的な農業地域はアジアやアフリカ、商業的な農業さらにそれが発展した企業的な農業がみられる地域はヨーロッパや南北アメリカ、オセアニア。商業的な農業地域では農産物(穀物を含む)は自分たちが食べる以上に「商品」として栽培されることが多く、穀物の「輸出」が盛んになる。輸出と輸入は反対語なので、輸出が盛んな地域は輸入依存度が低く、輸出ができない地域は輸入依存度が高くなるとみていいだろう。ヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアは輸入依存度が低い地域となる。一方で(米についてはほぼ完全自給しているものの)穀物全体を考えればトウモロコシなどを輸入している日本は輸入依存度が高くなる。
このことをふまえて図を読解してみよう。ざっと眺めると北アメリカが高く、アフリカ大陸で全体的に低い。1人当たりGNIに反比例する指標であることが想像される。では「栄養不足人口の割合」なのだろうか。ただ、1人当たりGNIが高い国であっても「高」となっている国はないだろうか。最もわかりやすいのはサウジアラビアだろうか。アラビア半島の広い範囲を占める国であり、原油産出量が多いことから経済レベルは高い。1人当たりGNIの高い国であるが、ここでは「高」のグループに区分されている。これ、どういうことだろう?
ここで選択肢2について考えてみよう。穀物の輸入依存度が低いのは北アメリカで間違いはない。アメリカ合衆国は世界で最も商業化された大規模農業が行われる国である。トウモロコシの生産は圧倒的に世界首位であり、輸出量も極めて多い。それに対しサウジアラビアはどうか?豊かな国であり栄養不足人口の割合は低いはず。一方で、乾燥した国土を有し農業生産については決して恵まれていないだろう。豊富なオイルマネーによって食料の多くを輸入しており、それは穀物も例外ではないはず。穀物の輸入依存度については高いと考えていいのではないか。正解を2に絞ろう。
なお、日本も「高」となっており、最初からこれに注目しても良かったかもね。世界全体の図においては日本について考えることが問題を解くカギになる。
[アフターアクション]とてもオーソドックスな問題で驚いた。旧課程やセンター試験時代の問題だったとしても、ここまで「普通すぎる」問題って出題されにくい。普通の問題が逆に普通じゃないっていうパラドックスでもあるんだけどね(笑)
ただ、解法の中心にはやはり「1人当たりGNI」がある。1人当たりGNIの考えかたに従って問題を解こう。これが地理の「普通」。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第1問問2解説>
[ファーストインプレッション]ちょっと曖昧な問題でかなり自信はなかったけど、なんとか正解できました。「えっ、こんなところが誤ってるの???」って、問題としては正直クオリティが低いようにも思う。ただ、この「質の低さ」が実は地理総合・探究の特徴の一つでもあるんだろうな。さらに気がついた特徴ししてはマルチジャンルであるという点。一見すると「農業」ジャンルの問題に見えるのだが、解いてみるとこの問題が「気候」ジャンルの問題でもあることがわかる。地理の問題はジャンル分けが難しく、単元ごとに学習することに意味がないことがわかるね。地理は全体を俯瞰する総合的な力が問われるのだ。
[解法]
農業と気候のハイブリッド問題。正文判定問題なので、誤りを3つ指摘してみよう。
まず農業についてだが選択肢2がわかりやすい。農産物の名称は出題のポイントになり、とくに「湿潤」か「乾燥」であるかが非常に重要。農産物の栽培条件について考えてみよう。
ヤシにはいくつか種類があり。ココヤシ、アブラヤシ、ナツメヤシの3種類が問われる。いずれも高温の気候環境で栽培されるものだが、湿潤であるか、乾燥であるかが異なっている。ココヤシとアブラヤシは「湿潤」の環境が必要。ココヤシはフィリピン、アブラヤシはインドネシアやマレーシアが生産上位国。いずれも東南アジアが栽培の中心であることがわかる。
それに対し、
なお、ココヤシの胚珠を乾燥させたものがコプラであり、これから油脂が採取される(ヤシ油)。アブラヤシは実からパーム油が採取される。ともに油脂原料として重要な商品作物である。それに対しナツメヤシは自給作物であり、主に食料となる。実を加工したデーツは乾燥地域の人々の重要なカロリー源となる。
さらに選択肢3。この選択肢が曲者なんだよな。「農業」の思いきや「気候」の問題。しかも気圧帯の移動に関連させて考える箇所。ウについては低緯度であるため日射量が多く「高温」であることは間違いない。アフリカ大陸低緯度地域は東部が高原であり、西岸から内陸部まではコンゴ川流域の低地(盆地)が広がり標高は低い。「高温」である。
ポイントは「雨季と乾季が明瞭」かどうかということ。低緯度地域で雨季と乾季が生じるメカニクスは地球の気圧帯の季節的な移動によるもの。緯度10~20度付近。夏は熱帯収束帯に覆われ多雨、冬は亜熱帯高圧帯の影響で少雨。北緯10~20度付近は、7月には赤道方面から北上する熱帯収束帯によってスコールに見舞われ、1月はサハラ砂漠方面から南下する亜熱帯高圧帯によって乾燥気候がもたらされる。南緯10~20度付近は、7月には高緯度方向から北上する亜熱帯高圧帯の影響で乾季、1月には赤道方面から南下する熱帯収束帯により雨季。
このようなメカニズムを考えた場合、ウの降水パターンはどうなるだろう。ウは赤道直下である。気圧帯の季節的移動がみられたとしても亜熱帯高圧帯が赤道直下まで影響を及ぼすことはなく、年間を通じて熱帯収束帯の支配下にあり多雨となる。一年中いつでもスコールが降る。「雨季と乾季が明瞭」とはちょっと考えにくいんじゃないかな。誤りとなる。なお「焼畑」と「キャッサバ」は適切。
最後に4。エのケープタウン周辺は地中海性気候がみられる。夏(1月)には気圧帯が軟化することによって亜熱帯高圧帯に覆われる。少雨となり乾季となる。冬(7月)は偏西風や寒帯前線(高緯度低圧帯)の影響によって一定の降水がみられる。樹木栽培が盛んであり、とくにブドウの生産が多い。「冬より夏の降水量が多い」が誤っているね。
以上より1が正解。アは黒海北岸でウクライナ。ステップが広がりやや降水量が少なく草原が広がっている。偏西風が吹き込むヨーロッパであり、降水の年変化は少ない。気温はやや冷涼であるが、植物の腐敗が妨げられるほどの寒冷な気候というわけではない。植物が適切に腐敗し、つまり「腐植」がつくられ肥沃な土壌として小麦栽培に利用されている。ホイットルセー農牧業区分の「企業的穀物農業」もキーワードになるのでぜひとも知っておこう。
[アフターアクション]本問でおもしろいのは出題がマルチジャンルというかジャンルレスというか。特定のジャンルに偏った問題ではなく、農業(農産物の栽培条件)や気候(気圧帯の季節的な移動)のハイブリッドという点。これ、共通テスト以降に顕著になった傾向でとくに新課程になってこのパターンの出題が目立っている。「農業」の問題だと決めつけないで、「実は気候に関する箇所がNGなんじゃないか?」って考えながら解かないといけないね。とても興味深い。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第1問問3解説>
[ファーストインプレッション]ちょっと変わった問題ですね。案外とこういった問題の方が難しかったりして。普通に考えて普通に解く。
[解法]コーヒーと茶の1人1日当たり消費量が問われている。昔早稲田の問題で日本人の1人1日当たり消費量は茶とコーヒーどちらが多いかっていう問題が出されていて、正解はコーヒーだったっていうのがあったんだけど、ちょっと意外な統計かな。東洋は茶の方が多いイメージでしょ?ただ、重量ベースにすると乾燥させた茶葉の重量は軽く計算されてしまうので、コーヒーの粉末の方が「重い」のは当たり前だったりするんですよね。とはいえ、やはり日本人の「茶離れ」と「コーヒー嗜好」もはっきりしており、とても興味深い問題だった。
本問でも表に日本が示されている。茶は0.6杯、コーヒーは0.9杯ほど。茶は1杯3グラム、コーヒーは1杯10グラム換算なので、茶が2グラム、コーヒーが9グラムって感じなのかな。日本を基準に考えてみると、そもそも両者の量が多いのが1、ほとんど茶のみでコーヒーを飲まないのが1と3。ただし、3はそもそもの量も少ない。4は茶は少ないがコーヒーが主。
シンプルに「茶=東洋、コーヒー=西洋」ってイメージでいいんじゃないかな(このイメージで解くところが「変わった問題」なんですよね。でもたまにはそういった問題にあっていいとは思います)。コーヒーがメインである4を西洋のイタリアとしてしまおう。コーヒーをほとんど飲まない2と3を東洋の国と考え、中国かインドネシアのいずれか。
イギリスは1なんじゃないかな。イギリスは紅茶で知られる国であり、茶がよく飲まれている。しかし、西洋の国でありコーヒーの消費も少なくない。単なるイメージで解いてしまっているけれど、おそらくそれで間違いない。
[アフターアクション]ホント、変な問題。普通に考えて普通に解く問題というか、一般的な「クイズ」みたいだよね。テレビのバラエティ番組で大学生タレントが答えるみたいな。どうですか、私、賢いでしょ?みたいな感じ(笑)「イギリス=紅茶」のイメージで解くのだけれども、ヨーロッパだからそれなりにコーヒーも飲んでいるんじゃないかって予想で解いてしまう。僕的にはあまりいい問題とは思わないな。共通テストの黒歴史的な問題だね。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第1問問4解説>
[ファーストインプレッション]共通テスト導入(2021年)以降、急激に出題率を伸ばしてきたジャンルが「食料」。それまではほとんど出題がなかったのに、現在は完全な主人公といえる。とくに重視されているのは「先進国における食料問題」。従来ならば発展途上国における食料不足こそ食料問題のメインテーマだったはずなのだが、その様相が現在は変化している。そもそも人口増加率より穀物生産の伸び率の方が高いのだ。地球は食料で飽和している。でもなぜ発展途上国では食料危機が生じているのか。それは「分配」の問題だよね。有り余る食料が、正しく必要な者に配分されないため食料不足が生じる。昨今の日本の米不足も全く同じ状況だよね。生産は十分であるのに一部の企業が買い占めてしまったため価格が大きく跳ね上がった。小売店の中には輸入されたアメリカ米を安く消費者に提供するところもあった。食料についての関心が近年大きく高まっており、それは共通テストの世界でも同じ状況なのだ。
[解法]食料に関する問題。とくに今回は先進国における食料問題だね。キーワードは「食料ロス」。経済的に豊かな先進国において食料(農産物)の過剰供給が生じ、カロリー過剰による生活習慣病や肥満、あるいは廃棄物の増加という問題が生じている。「生産・収穫から消費までの各段階における食品ロス」とあるけれど、もちろん我々が考えるべきは「消費の段階における食品ロス」だよね。食べきれない(というか売れ残りの)食料がそのままゴミ箱に廃棄されている。食べ物が無駄になる状況を我々は深刻に捉えるべき。
文章から解析していこう。まずは選択肢1。ヨーロッパで生産・収穫段階の割合が高いのは「小売業者の定める品質基準に満たない生産物が廃棄される」からである。これはなるほど、そういうこともあるだろう。さらに選択肢2。南・東南アジアでは貯蔵段階のロスが多いのだが、これは「高温湿潤な環境下でイモ類の収穫時期が短期に集中し、貯蔵施設が不足する」ことが理由。これ、果たしてそうだろうか?そもそも低緯度地域であり季節の差が明瞭でない。収穫時期は自在にコントロールできるんじゃないか(もちろん雨季と乾季の違いはあるけれど)。それより発展途上地域で貯蔵が難しい理由は例えば「冷蔵施設」が少ないからじゃないか。高温(さらに多湿)の中で農産物を放置しておけばすぐに傷んでしまうよね。腐敗しやすい。冷蔵や冷凍が必要でない作物についても、ある程度の通風性や一定の温度を保つことは必要だと思う。そおような適切な貯蔵設備が足りないことがこの段階のロスの最大の要因なんじゃないか。これが誤りだね。
他の選択肢はとくに判定の必要はないが一応確認。選択肢3について。「小売店で過剰に仕入れた商品を廃棄する」状況があうんだそうだ。なるほど、そういったこともあるのかな。とはいえ、表で確認すると販売段階でのロスは発展途上地域で7.5、先進地域で4.3なのでいずれにせよあまり高くない。話題にされるほどのことはないだろう。選択肢4について。「フードバンドを通じて必要とする人に食品を提供する」ことも近年の先進国では行われているのだろうか。このことはフードバンクという言葉と一緒に知っておいてもいいね。
[アフターアクション]食料に関する問題は急によく出されるようになった。とくに君たちに意識してほしいことは先進国における食料問題。供給過剰によってどのような問題が生じているか。今まで我々は「食料が足りない」ことが食料問題の根幹と思っていたけれど、実はそれは全然違う。食料が有り余っていることをまず知らないといけないし、それを大前提として何が起こっている(起ころうとしている)かを知らないといけない。
今年の事例でいえば石破政権は昨今の米不足について「国内でのコメの生産を増やす」ことを目標としたがそれは全然違う。現在の日本の米の生産量は1000万トンであるのに対し、日本で年間に消費される(供給される)米の量は800万トン。毎年普通に200万トンが余っている。これらが備蓄され廃棄され、あるいは工業用に使われる。無駄な米がいくらでもあるのだ。
米不足の原因は「流通」の問題だったっていうことはみんなもよく分かったと思う。利益を優先する企業の独占的な活動を抑えないといけない(例えば全て自由化してアメリカ系企業の参入を認めるなど。そうすれば米はよりスムーズに供給されるし、何より安くなる)。米不足の問題を生産(農業)の問題にしてはいけない。流通(経済)の問題なのだ。
食料問題にはこういった新しい視点が必要。そして地理総合・探究という科目はすでにそれに気づいている。
Copyright (C) ts9ts9ts.cloud-line.com All Rights Reserved.