たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
(注意)第3問にケアレスミスがあります。「カが柑橘類です」に修正してください。
<2013年度地理B本試験第4問問1>
[インプレッション]
いいですね、この問題。解きやすい(笑)。地誌ではあるけれど、自然地理からネタを引っ張ってきている点がいい。
[解法]
貿易風は低緯度地域。地中海沿岸のような中緯度地域には該当しない。
2;これはよくわからない。小規模な海流なら存在しているのだろうか。
3;地中海沿岸の植生は主に硬葉樹。建築材料としては適さず、石造りの家が多い。
4;間帯土壌の一種であるテラロッサ。石灰岩の風化土壌であり、地中海沿岸に広く分布する。
2はともかくとして、3と4もオーソドックスな選択肢。いいですね。
[ひとこと]
自然地理が重要なのです。
<2013年度地理B本試験第4問問2>
[インプレッション]
新しい形式の気候グラフ問題。これ、模試で使ってみよう(笑)。気温で考えるのが基本で、それでもわからない場合は降水量で。
[解法]
ちょっと変わったグラフが用意されているけれど、読解はさほど困難ではないと思う。
気温と降水量があり、まず気温に注目するのが大切。気温は原則として緯度との関係が深い。低緯度ならば高温、高緯度ならば低温。図中、カイロが最も低緯度で次いでラバト。マドリードとローマはほぼ同意度で、先の2都市に比べ北に位置する。緯度から判定し、気温は「カイロ>ラバト>マドリード=ローマ」と仮定する。
ただし、気温は緯度だけでは決まらない。緯度以外の要因で最も重要視されるのは標高である。とはいえ、4都市中標高が高い可能性があるのはマドリードだけ(他の3都市は沿岸部なので標高は低いだろう)。また海洋性気候と大陸性気候の違いも考えないといけないが、これについてもマドリードだけが特別。他の3都市は沿岸部に位置し、海洋性気候の特徴が現れていると考えられるが、マドリードについては内陸型の気候がみられるはず。つまり、夏はより暑く、冬はより寒いという気温年較差の大きな気候。
このことをふまえて気候のグラフを参照しよう。まず最も特徴的なものはアである。気温年較差が最も大きく、しかも冬の気温がとくに低いなど、全体の気温も低いようだ(年平均気温は15℃だろうか)。これを「最も高緯度に位置するため低温と考えられる」、「
内陸性の気候であるため気温年較差の大きい」マドリードと考えることはできるだろう。アがマドリードに確定。
さらに残りの3つ。緯度別に素直に考えれば、イがローマ、ウがラバト、エがカイロとなる。ここでちょっと気になるのはウの夏の気温の低さだよね。低緯度のラバトが、高緯度のローマより夏が涼しいだなんて有り得るのか?
いや、これ、十分ありえるよね。今年は他の問題でサンフランシスコも登場している。サンフランシスコとラバトには「大陸西岸・中緯度」という共通点があるわけだが、さて、ここで気候に大きな影響を与える要素って何だ?
賢明な読者諸君は気づいたよね。そう、『寒流』である。寒流はクーラーをイメージすること。冬の気温には影響を与えないが、夏の気温を低く抑える効果がある。サンフランシスコの最暖月平均気温が17℃にとどまっていることを思い出して欲しい(同緯度で大陸東岸である東京の最暖月平均気温は25℃)。
ラバトの沿岸を寒流が南下している(カナリア海流)。イベリア半島(スペインやポルトガル)西岸からアフリカ大陸北西岸にかけてのエリアはこの影響を受け、例えば夏季の気温はやや低くなるし、沿岸には豊かな漁場が形成される。
このことを考えれば、ラバトの夏の気温がローマより低いことは納得だろう(*)。ラバトはウに該当する。
(*)冬の気温はラバトの方が高い。これは寒流の影響はない。
[ひとこと]
気温だけで判定できるならば、それだけで解く。降水量はできるだけ見ないこと!
<2013年度地理B本試験第4問問3>
[インプレッション]
栽培限界の問題.シンプルでしょう。
[解法]
ブドウを考える。ブドウの栽培限界はフランス北部パリ盆地。フランス南部やスペイン、イタリアの全域でさかんに栽培されている。クがブドウとみていいだろう。
これに対し、柑橘類の栽培限界はヨーロッパ最南部。スペイン南部のバレンシア地方など。ほぼこの付近に限定されているキが柑橘類である。
綿花については消去法でいいと思う。でもちょっと注目して欲しいのはエジプトのナイル川沿岸かな。ここはオアシス農業地帯で、外来河川(ナイル川)からの取水によって集約的な農業が行われている。オアシス農業においては自給的にナツメヤシや小麦が栽培されているのだが、商業的な綿花栽培も特徴的なのだ。
[ひとこと]
栽培限界は確実に!
<2013年度地理B本試験第4問問4>
[インプレッション]
アルジェリアが問われているわけだが、来年はちょっと出題されにくくなるのかな。国際問題の影響を受けやすいのも地理の特徴ではある。たしかに(2011年にアメリカ合衆国などにより攻撃を受けた)リビアは今回問われていないし。
ツールーズの航空機は大丈夫でしょう。あとはアルジェリア=OPECがわかれば十分に解答できる。
[解法]
文章は全部読んではいけない。キーワードだけを拾っていくこと。キーワードは統計に関するもの。生産統計などで登場した工業製品や資源はポイントになりやすい。
サの「原油」、シの「航空機」に注目しよう。スにはこういったキーワードはみられない。
原油についてはOPECを考える。Bはアルジェリアであり、OPEC加盟国である。OPECとは石油輸出国機構のことで、国内経済が原油の産出と輸出に大きく依存している国々。サをBと考えていいだろう。
さらに「航空機」。フランス南部のツールーズ(*)は航空機のEU共同工場がある。ヨーロッパ各国から半完成のパーツが集められ、この地で航空機として完成される。
スは消去法でC。Cの地域は「第3のイタリア」と呼ばれるところで、近年中小工場を中心として工業が活性化してきた。伝統的な技術を利用した工業が興っている。
(*)臨海部ではなく、沿岸部であることに注意。原則として機械組立工業は臨海部では成立しにくい。海からの潮風によって塗装などの作業が困難になってしまうからである。また内陸部の平坦な土地の方が、広い工業用地を確保しやすいという有利点もある。
以下にOPEC加盟国を整理しておいた。
地域 | 国名 | 特徴 |
西アジア | イラン | ペルシャ民族。テロ国家指定をされており、アメリカ合衆国への原油輸出はない。 |
サウジアラビア | アラブ民族。世界最大の産油国。1人当たりGNIは約20000ドル。 | |
イラク | アラブ民族。 | |
クウェート | アラブ民族。 | |
アラブ首長国連邦 | アラブ民族。 | |
カタール | アラブ民族。 | |
アフリカ | リビア | アラブ民族。旧イタリア領。 |
アルジェリア | アラブ民族。旧フランス領。 | |
ナイジェリア | 黒色人種。人口規模が大きく、1人当たりGNIは低い。 | |
アンゴラ | 黒色人種。 | |
ラテンアメリカ | ベネズエラ | 原油の過半はアメリカ合衆国へと輸出される。 |
エクアドル | 原油以外に魚介類やバナナもさかんに輸出される。 |
また、ヨーロッパの工業都市(地域)としては、イギリス中部のマンチェスター(ランカシャー地方)、ドイツ西部のルール、フランス南部のツールーズが非常に重要なので、位置を確認しておくといいだろう。マンチェスターについては「産業革命」、「降水量が多い湿った気候」、「インドからの綿花輸入」などがキーワード。ルールは「ヨーロッパ最大の重工業地域」、「石炭の産出」、「ライン川水運の利用」。ツールーズはすでに述べたように「航空機」、「共同工場」である。
[ひとこと]
OPEC加盟国はチェックしておこう。
<2013年度地理B本試験地理B第4問問5>
[インプレッション]
観光の問題?いや、実は国の規模の問題だよね。人口とGNIの問題。国の大きさがイメージできるかどうか。
[解法]
4つ選択肢の国がある。イタリア、エジプト、ギリシャ、スペイン。国を考える場合には必ず人口と1人当たりGNIを考えること。人口と1人当たりGNIの積がGNIなので、もちろんGNIについても想像する。
イタリア、ギリシャ、スペインはいずれもヨーロッパの国。1人当たりGNIはある程度は高いだろう。人口規模は、イタリアが6000万人、スペインが4000万人、ギリシャが1000万人(*)。GNIを考えるならば、イタリア、スペインが大きく、ギリシャは小さいと思われる。
エジプトの人口などはよくわからないが、アフリカの国であり、1人当たりGNIは低いだろうし、GNIも当然少ない値に留まるはず。
とりあえず解答するべきイタリアとギリシャについては、イタリアが「大国」、ギリシャが「小国」という定義でいいだろう。
さらに本問では輸出額という貿易に関する指標が取り上げられているのだが、原則としてGNIと貿易額は比例する。GNI世界ベスト4はアメリカ合衆国、中国、日本、ドイツだが、貿易額ベスト4はアメリカ合衆国、中国、ドイツ、日本の順。つまりほとんど同じである。GNIすなわち「お金」をたくさん持っている国が、たくさん貿易していると考えれば自然なことだね。
さて、ここで表に目を移してみよう。横軸は「輸出額に対する国際観光集流の割合」で、縦軸は「国際観光客数受入数」。なるほど、横軸は割合で、楯軸が実数なわけか。これらはしっかり意識しておこう。
実数を優先して考えるのが鉄則なので、楯軸「国際観光客受入数」から考えてみよう。普通に考えて、国の規模が大きい方がより多くの観光客を迎え入れることができると思わない?小国ならばいかに有名な観光スポットがあろうと、全体の観光客数は限定される。一方、大国ならばさほど観光がさかんな国でなくとも、全体でみればそれなりの観光客の流入はあるのではないか。人口が大きく(さらに面積も大きい)イタリアがXグループ、小国(面積も小さい)ギリシャがYグループと考えるのは妥当。
さらに横軸「輸出額に対する国際観光収入の割合」にも注目。こちらは割合だね。さて、この値が高くなる国ってどういう国だと思う?え、観光業がさかんな国だって?いや、そんな風に考えるのは素直すぎてつまらない。理系の諸君ならばもうちょっとひねくれた(笑)考え方をしてくれないと。そう、分子としての「国際観光収入」ではなく、分母としての「輸出額」に注目するんだね。総輸出額が大きな国であれば、横軸の値は低くなるし、総輸出額が小さな国ならば、横軸の値は高くなる。割合は分子ではなく、むしろ分母を中心に考えるべきなのだ。
ここまでくれば簡単。輸出額はGNIに比例すると考えていいっていうのは、上で述べている。GNIが大きなイタリアとスペインがXグループ、小さなギリシャとエジプトがYグループとなる。これが正解。
以上、この問題の解法を示してみた。ずいぶん技巧的に思えるって?いや、そんなことはないよ、おそらくイタリアとギリシャを提示した段階で、この問題の作成者は国の規模すなわち人口やGNI(人口×1人当たりGNI)を考慮して解かせることを意図しているはず。日本人が最も多く訪れるヨーロッパの国イタリア、世界2位の観光客数を誇るスペイン、アテネなど歴史文化遺産の豊富なギリシャ、ピラミッドなど古代遺跡の立ち並ぶエジプトは、いずれも代表的な観光国。「観光」というキャラクターは全て共通しているのだから、この中で議論しても仕方ない。この4カ国の違いはどこにあるかといえば、それはやはり人口と1人当たりGNI、そしてその積であるGNIなのだ。この違いを利用して解く問題になっている。
(*)ヨーロッパの国の人口規模はぜひ知っておこう。ドイツが8000万人、イギリス・フランス・イタリアが6000万人、スペインが4000万人.それ以外は1000万人規模カ、それ未満。
[ひとこと]
国は人口と1人当たりGNIで考える。
<2013年度地理B本試験第4問問6>
[インプレッション]
生活文化の問題。とくにここでは料理に関するものとなっている。このジャンルは、宗教的な背景が問われることが多く、本問もその典型。地理における宗教の捉え方は、神様がどうのこうのっていうわけではなく、このようにリアルな生活に反映されている部分が需要とされる。地理は抽象的な学問ではなく、あくまで実学だってことでしょうか。
[解法]
イスラム教はブタを嫌悪する。トルコはイスラム教国であり、ブタ肉を食することは一般的ではない。「豚肉」を「羊肉」に改める。
イスラム教は乾燥地域で生まれた宗教であり、その背景には乾燥地域の生活文化がある。農業に適さない地域であり、飼料として穀物などを必要とするブタは、本来人間が食べるはずの農産物をも食べてしまうことから、乾燥地域には適さない家畜なのである。そうした考え方が徹底されて、イスラム教の教義につながる。
他の選択肢はよくわかりません。知らんし(笑)。
[ひとこと]
乾燥地域の家畜として羊が重要!
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