たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
<2025年地理探究第6問問1>
正解;④
イの判定。アメリカ合衆国は中央を縦断する西経100度の経線と年間降水量500ミリの等値線がほぼ一致する。西側が少雨(乾燥)、東側が多雨(湿潤)。白丸から黒丸にかけて少しずつ降水量が増えているAがイに該当。
さらにアの白丸に注目。沿岸を暖流が流れ(*)水蒸気が大気中に放出されている。偏西風が卓越する緯度帯であり、湿った空気が陸地へと運び込まれる。沿岸には山脈が走行し(環太平洋造山帯)地形性降雨が生じている。白丸での降水量がとくに多いCが該当。
(*)中高緯度の大陸西岸には暖流が流れている。西ヨーロッパの北大西洋海流と同じ。
<2025年地理探究第6問問2>
正解;②
これは写真をみれば分かるんじゃないかな。「直線的な伐採地」がみられ、これが国境と一致するようだ。直線的な国境線だね。「分水嶺」とは要するに山脈のこと。キでみられる直線状の土地は決して山脈ではない。
他の写真も見ておこう。
カは滝がみられ(ナイアガラ?)、手前は湖だろうか。アメリカ合衆国とカナダの国境はキにみられるように大部分が直線状のものだが、五大湖沿岸だけは湖が国境となっている。ここを超えて自動車工場がカナダ側に進出(ちょっとだけ1人当たりGNIはカナダの方が安い)。
クは中央を縦断する国境線に対し、アメリカ側(左側)は空き地が広がり、メキシコ側(右側)は家屋が密集している。アメリカ人がわざわざメキシコ国境沿いに住むことはないよね。一方でメキシコ人にとってみればアメリカ国境沿いに住むことには意味があり、本選択肢で指摘されている「アメリカ合衆国での就労」などがその目的の一つである。しかし人的な移動は制限されメキシコ人が自由にアメリカ内に入れるわけではない。
実は僕は最初はこの選択肢が誤りと思ってんですよね。メキシコ人が国境沿いの街に住む理由は「アメリカ合衆国からの工場進出」があるからであり、彼らがとくにアメリカ合衆国への移動を求めてのものではないと考えたから。そもそもアメリカ合衆国への移住は難しいものであり、彼らの中に「どうしてもアメリカに行きたい!」という気持ちがあるのだろうか?それより国境を接したこういった都市にはアメリカ系の工場が進出しやすく、メキシコ人にとっては仕事を得ることは容易である。選択肢②が明らかに誤りなのでこちらは正解にはならないのだが、ちょっと疑問が残る選択肢ではある。
クは国境沿いの壁。不法入国者を取り締まるもの。現在は国境に沿って飛び飛びに建設されているが、トランプ大統領の公約ではこの壁が両国の全ての国境線をカバーするものになるそうだ(本当かな)。個人的にはこういった象徴的な壁を作るのではなく、入国の制限を緩和し、その代わり徹底的な管理を行うべきだと思う。言語教育をし住居や仕事を提供し、米国社会に馴染ませる。オーストラリアやカナダの多文化主義。強行に移民に対し「敵がい心」を持つから不法な手段を取ってまで入国しようとする移民が後を絶たないのだ。製造業や農業をはじめとする米国の産業の多くが移民労働力によって成り立っているというのに。
問3⑥
中央アメリカ・カリブ海地域の国々はいずれも発展途上高であるが、例えばメキシコは工業化が進み比較的1人当たりGNIが高い。その値は10000ドル/人に達している。経済レベルがそれなりに高いことを考えれば「GDPに占める第三次産業の割合」が低いとは思えない。農業国ではないし、工業が発達し、それによって商業など第三次産業の発達もみられるはず。メキシコでの値が高いシを「GDPに占める第三次産業の割合」と判定しよう。よく見るとシではパナマの数値が高くなっている。この地域でメキシコ以外で知られている国はほとんどないが、パナマは知っているんじゃないかな。パナマ運河があって大西洋から太平洋(あるいはその逆)に貨物線が通行している。貿易が盛んなイメージがあるし、「貿易=商業」なので第三次産業だよね。
残った二つだが、メキシコについては混血の国である。アステカ文明が生まれたメキシコは先住民の数も多いが宣教師をはじめとしてスペインからの移民も多く、混血が生じた。国民の多くが混血である。「ヒスパニック」という言い方も知っているね。アメリカ合衆国におけるメキシコ系移民を指す言葉であり、「メキシコ=スペイン語」ということだが、スペインとの関係性もわかる。逆にいえば、アフリカ系の人々は少ないってことじゃないかな。アメリカ合衆国南部を始め数百年前にアフリカ大陸の奴隷海岸から多くの労働者が北アメリカ大陸やカリブ海地域へと送られた。しかしメキシコはその対象ではなかったということが想像される(奴隷海岸に植民地を有していたのはイギリスとフランスのみ。スペインは奴隷海岸を勢力圏とせず、そこからの労働者の移入もなかった)。メキシコで値の低い差が「人種・民族構成に占めるアフリカ系の割合」である(それにしても地理で「人種」なんていう言葉、久しぶりに聞いた。地理という科目においては人種という概念そのものがほとんど消えているのだが。本問はその例外と言えるね。変わった問題)。
<2025年地理探究第6問問4>
正解;④
超良問!今回の試験のベスト問題だと思う。「自動車工業」がメインテーマとなっている。
ここで現在の世界における自動車生産の上位国をチェックしておこう。イメージしやすいので簡単だよ。
まずはGNI5強。GNIつまり経済規模が大きい国は工業生産力も大きく、とくに自動車工業にその特徴が現れる。GNI5強はアメリカ合衆国、中国、日本、ドイツ、インド。5か国とも自動車生産ランキングのベスト10に入る。
これ以外では韓国。財閥系の企業を中心に生産活動が行われ、人口5000万人の小国でありながらやはり自動車生産ベスト10に入っている。驚異的な工業力を持つ国である。
そしてブラジル。この国の場合はちょっと事情が特殊だね。ブラジルでしか走行していない「さとうきび」車の存在。サトウキビから抽出したアルコール燃料がガソリンの代替品となっている。自国民のための自動車を自国で生産するのでその生産台数は多くなる。
そして最後の3か国が重要。ポイントはアメリカ合衆国、日本、ドイツ。いずれも世界的な自動車メーカーが本社を置く国だが高賃金であるため周辺国へと工場が進出する。
・アメリカ合衆国→メキシコ
・日本→タイ
・ドイツ→スペイン
メキシコやタイ、スペインはいずれも近隣の低賃金国(さらにいえばある程度人口も多い)。豊富で安価な労働力が得られ、高賃金国から自動車工場が進出している。そしてもちろんこの3つの国にとって自動車は主要輸出品目の一つ。たとえば最近は日本はタイからの自動車輸入が増えている。見た目はわからないけれど、実は「メイド・イン・タイ」のトヨタ車や日産車が日本の街を走っている。
以上より「メキシコ=自動車」のイメージが持てただろうか?先ほどの問2のクの写真を見るといい。アメリカ合衆国から国境を越え自動車工場がメキシコに進出。多くの人々によって自動車が組み立てられ、そしてアメリカ合衆国へと完成品が送り返されている。メキシコが自動車を輸出しているのだ。
タとキ、EとF。果たしてどれが「メキシコの自動車」なのか。ここで考えるべきはカナダとの関係。自動車生産上位10か国にカナダは入ってなかったよね?もちろんアメリカ合衆国より経済レベルの低い(1人当たりGNIは米国60000ドル/人、加50000ドル/人)にも自動車工場は進出するだろう。しかしメキシコの10000ドル/人に比べれば賃金は高い。現在主に自動車工場が立地移動しているのはメキシコ側なのではないだろうか。そういった推測は十分にできると思う。
メキシコとカナダを比べた場合、自動車生産はメキシコの方が多い(繰り返すがメキシコは世界ベスト10に入っていてカナダは外れている)。輸出についてもやはりメキシコの方が多いのではないかと考える。アメリカ合衆国は世界最大の自動車輸入国であるが、メキシコやカナダから完成した「アメリカ車」を輸入しているのではないか。
タとチについて現在の順位を観察しよう。2022年の値を見るにタでは「カナダ>E>F」の順、チでは「F>E>カナダ」の順。自動車の輸出は間違いなく「メキシコ>カナダ」であるので、カナダが最上位のタは候補から外れる。チが自動車であり、そこで上位であるFがメキシコと判定される!
Fについては2000年代までは輸出が少なかった。これはまだメキシコにおいて社会が成熟しておらず、十分なインフラ整備が進んでいなかったため工場の進出が遅れていたのだろう。賃金水準が安ければいいというわけではなく、受け入れ側の国の社会体制が十分に整っていることも工場進出の条件となる(*)。しかし2010年代になるとメキシコでの工場の受け入れ態勢が整い、とくにアメリカ合衆国からの生産拠点の移動が顕著となる。この時期から「チ・F」のグラフは急上昇を描き、メキシコの自動車産業が隆盛している様子がよく分かる。メキシコ全体でも大きな経済成長を果たしている(問3でも触れたが、メキシコは発展途上国の中では経済レベルが高い方)。
現代社会は「ファブレス」がキーワード。先進国の企業は研究開発やマーケティングに特化し、実際の組み立ては発展途上国の企業に委託する。先進国としても生産性の高い業種に専念することで高い経済水準が維持され、また発展途上国にとっても雇用と賃金が堡礁され経済成長が活性化する。グローバル化した「国境のない世界」は世界の全ての国や人に利益があるのだ。反グローバリズムの流れが現在世界の一部でみられるが、それは愚かなことだ。
(*)これは日本と東南アジアとの関係を考えればいい。東南アジアで最も賃金水準の安いのはミャンマーやカンボジアであるが、前者は軍事政権、後者は内戦の後遺症などまだまだ社会的に不安定な部分はある。こういった国に工場を設けるのはリスクが大きいし、労働者の質も低いだろう。一方で両国より経済レベルがやや高いインドネシアやベトナムに現在さかんに工場が進出している。これらの国々は近年になってインフラの整備が進み。さらに教育水準も高まったことで労働者の質も向上している。カンボジアやミャンマーより賃金は高いが、それでも十分に「安価」と言えるレベルである。インドネシアやベトナムは外国からの工場受け入れによって工業化が一気に進み、高い経済成長率を示している。
<2025年地理探究第6問問5>
正解;③
最後にちょっと変わった問題だね。キューバの観光の問題は2017年地理A第3問問7、2019年地理B追試験第5問問5でも登場しているので全く出ていないっていうわけでもないけれど、さすがにこれは悪問の類なんじゃないかなって思う。
キューバがサトウキビ栽培が盛んなことは知っている人が多いと思うけれど、そのプランテーションはもともとアメリカ合衆国系企業が作ったもの。しかし勝手にこんなもの作られたらたまらん!とばかりに反米感情が高まり、それはキューバ革命へとつながった。社会主義政権が誕生し当時のソ連と友好国となった。アメリカ人はキューバから放逐され、プランテーションも国有化された。激怒したアメリカ政府はキューバとの国交を断絶し、それは現在に至っている。
実はオバマ政権の最後にアメリカ合衆国とキューバの国交が回復されようとしたのだが(オバマ自身がそれを最後の功績にしたかったんですね)、次政権のトランプ時代にあっという間にひっくり返され、現在もトランプ大統領はキューバを敵視している。
こういった事情をふまえて問題を解析していこう。
まずは上記の内容からちょっと離れるけれど、観光客を送り出す国の事情を考える。「インバウンド旅行者に対するアウトバウンド旅行者の比率」に注目しよう。人口移動は「1人当たりGNIの低い国から高い国」であり、観光もたしかに人口移動の一つでありこの原則が当てはめるような気がする。現に日本人の観光旅行の行き先はアメリカ合衆国(ハワイやグアムを含む)であり、これだけ見ると「1人当たりGNIの高い方向への移動」である。
しかし観光行動そのものを考えてみると、ある程度の経済的な余裕がないと出来ないよね。貧しい人々がおいそれと海外旅行に出かけることはできない。出稼ぎ労働者とは違ったイメージを持つべき。
例えば近年日本には中国から観光客が増加している。これは中国の経済成長と結びついている(法律的な変化もあるけれど、地理は法律を学ぶ科目ではないのでその辺りの話はカット)。中国では「中間層」が拡大している。所得が増え貧困を脱し、いわば「中流」の生活を営む者が増えたのだ。経済的な余裕が生じ、それが観光のような余暇活動の発展を促している。お金を得た人々が観光で訪れようとする国、それが日本だったりする。
そのように考えてみると「海外旅行をする」余裕がある人々は先進国でこそ多いと考えていいんじゃないかな。ミに注目しよう。その値は120.2であり、インバウンドよりアウトバウンドの方が多い。国民の多くが海外旅行に出かける国つまり経済的に余裕がある人々が多い国ということで、このミをカナダと考えていいんじゃないか。さらに言えば、カナダは実は意外だがインバウンドが多い国ではない。隣国のアメリカ人は国内旅行が中心であるし、ヨーロッパからわざわざ自然環境の似たカナダへは渡航しない。日本人の旅行先としてもカナダはさほどメジャーでもないよね。その分だけ「アウトバウンド>インバウンド」となるのは納得なのだ。ミがカナダとなる。
なおカナダへの観光客の問題は本年に他にも出題されている。2025年旧地理A追試験第2問問4。カナダへの観光客は夏に集中し(避暑だろう)冬は実は少ない。こういった国では冬こそスキー客が多いと思われるが、ロッキー山脈を除き平坦な国土のカナダは実はスキーには適さない(まさか険しいロッキー山脈でスキーをするなんてよほどの冒険家だけでしょう???)。
そしてマとミだが、ここで最初に述べたキューバの状況がカギとなる。上で説明したようにアメリカ合衆国とキューバの間に国交はなく、むしろ敵対関係とも言える。アメリカ人にとってはキューバは実に人気のない国であり、旅行先として選ばれることはない。アメリカ合衆国からの旅行者が少ないことから相対的にヨーロッパからの旅行者の割合が上がり、表1中の「29.5」という数字に注目しよう。「インバウンド旅行者に占めるヨーロッパからの旅行者数の割合」がとくに高いマこそがキューバとなる。アメリカ人の渡航はほとんどゼロなので(最初に挙げた2017年地理A第3問問7のグラフが参考になる)、ヨーロッパ以外のキューバへの観光客はカナダ人が主。ただしカナダは人口が4千万人の小さな国なので、そもそもの観光客数が多くはなりえない。アメリカ人がいない分、ヨーロッパ人の割合が上がる。マがキューバとなり、正解は③。
メキシコについては消去法でいいだろう。こちらはアメリカ合衆国からの観光客が多いはず。ヨーロッパからの割合はわずか4.4%であり、また先ほども指摘した様にカナダは人口小国なのでそもそもの観光客数が少ない。
ちなみに問3の図も見て欲しいのだが、バハマという国がある。フロリダ半島のちょっと先に浮かぶ島国であるが美しいビーチを持つ観光地である。アメリカ国内にもハワイやフロリダ半島というリゾート地があるが(なおカリフォルニア州は寒流が沿岸を流れるので夏冷涼でリゾートに適さない)、こちらのバハマも人気である。バハマで第3次産業が主体であるのは観光業で潤っているからだろう。
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