たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんオリジナル解説[地理A]2025年/本試験・第2問 |
<第2問問1>
①が誤りでしょう。この写真からわかるように建物が柱によって高く持ち上げられている理由は「浸水」対策。増水期には渇水期より数メートルも湖面が持ち上がる。写真を見たら明らかだよね。
なおこういった家屋を杭上家屋という場合もあり、水面の近くの伝統的な形態である。これら高床は小動物の侵入を防ぐなど衛生面の効果もある。
<第2問問2>
乗用車で見るのが基本かな。先進国であるほど乗用車の普及率は高いと考えていい。経済的な余裕があることが最大の要因。「千人当たりの乗用車保有台数」は、高い方から④>③>②>①の順。これを1人当たりGNIの高低に対応させる。1人当たりGNIは、カナダ=日本>台湾>インドネシア。これより、④と③がカナダか日本、②が台湾、①がインドネシアでしょう。
なおオートバイについては無視していいと思うよ。オートバイはいわば「簡易な自動車」であるので、自動車が買えるほど裕福ではないけれど、そこまで貧しくない人々が買うことができる。工業化が進むインdネシアはそういった国なんじゃないかな。
日本やカナダでは(③か④かはわかりませんが)オートバイの普及率は停滞もしくは低下している。これは先進国共通の現象なんだろうね。自動車が買える余裕があるならばオートバイは買わない。
ちなみにインドネシアではオートバイの生産が伸びており、世界第2位の生産国。インドネシアの工業化もテストでは問われているね。
<第2問問3>
これ、難しいな。正直わかるわけないので、ある程度はカンに頼ってしまうことになるが。
候補はオーストラリア、中国、フィンランド。オーストラリアだけが南半球。フィンランドは高緯度に位置するので夏は極端に昼が長くなり、こういった時期に長期休みがありそうな感じがするのだがどうなんだろう。
Aから判定。「夏季の長期休暇中にクリスマスがある」とのこと。夏がクリスマスになるのは南半球なので、これがオーストラリアとなる。12月後半に長期休暇があるといえばアがそれに最も当てはまるのだが、イの可能性も捨てきれない(こちらも12月後半が休み)。とりあえずアとしておこうか。
さらにBだが「旧正月」がキーワードになっているね。これは中国なんじゃないかな。知識ネタになってしまうけれど(この辺りが地理A的と言えるところだろう。地理Bや地理総合・探究ではこういった知識は問われないかな)、中国では2月が旧正月となっており、たとえば沿海部に出稼ぎに出ていた人たちが一斉に農村に帰省するので巨大な人口移動が生じることがよく知られている。日本でも各地のチャイナタウンで2月には盛大なお祭りが繰り広げられたりする。2月の大半が休みであるウが第一候補。ただイでも2月に休みはあり、これもちょっと怪しい。どちらなのだろうか。
残ったCについて。ここには「短い夏」とある。これはどういうことだろう?フィンランドはたしかに高緯度であり夏は昼の時間が長いが、しかしこれは決して「高温」を意味していないよね。高緯度は太陽の入射角が小さいので熱を効率的に受け取ることができず気温が上がらない。6月から8月の間もさほど気温は上がらず、我々がイメージする「暑い夏」にふさわしい期間は短い。それを消して「短い夏」と呼んでいるのだろう。高緯度地域のキーワードとなる。フィンランドで決定。
ただ、ここからがちょっと難しく、いわゆる「夏」である7月から8月に休みがらうという点においてイとウについていずれも長期休みがあるという点が共通している。これ、どっちなんだろう?
ただ、最初にも言ったように高緯度のフィンランドでは「気温が高い」という意味での夏は短いが、「昼の時間が長い」という意味での夏は極めて長期間となる。とくに夏至である6月後半はほとんど夜の時間がない。1日のうちのほとんどを太陽は地平線の上で動く。フィンランド北部の北極圏では白夜ともなる。フィンランドについては「6月後半」というのが非常に大切な時期なのではないか。イとウのうち、6月後半に明確な休みがあるイをフィンランドと考えていいんじゃないか。ウでは気温が本格的に上がる7月に入ってからでないと長期休みはない(*)。
そうなると12月後半も興味深い。フィンランドの冬は長い。それは気温の低さを意味する以上に昼の時間の短さを意味する。とくに北部の北極圏では極夜となる。6月後半同様に12月後半もフィンランドにとっては特別な時期なのではないか。イとウを比較した場合、ウでは1学期の授業が行われている一方でイではこの時期に休暇がある。フィンランド北部ではずっと暗闇が続くのに(太陽は常に地平線の下である)子供たちは学校に行く!っていうのはちょっと考えにくくない?暗い中を登校するのだろうか?この時期は休みにしてしまった方が自然だと思う。イをフィンランドと考えて妥当だろう。
(*)日射量が増えるタイミングと気温が上がるタイミングがちょっとズレていることは問題ないよね。例えばこれを1日のうちでの気温変化で考えてみればいい。太陽高度が上がり、地表面が最も太陽光を効率良く受け取るのが12時だが、気温が最も高いのは13~14時ごろ。12時ごろの日射によってまず地面が暖められる。そこから1~2時間のうちに地面が地表面付近の空気を熱することで気温が上がる。日射と気温上昇にはタイムラグがあるのだ。
これを一年に当てはめても同じことが言える。日射量が増える(昼の時間が長くなる。太陽高度が上がることで地表面が効率的に太陽熱を受け取る)のは6月後半だが、その時期にはまず地面が暖められることになる。そこから1ヶ月ほどかけてゆっくりと大気が熱せられ、7月後半から8月前半にかけて猛暑の時期となる。「太陽→地面→大気」の順に少しずつ熱が伝えられていく様子を想像しよう。
<第2問問4>
カは茶。中国とインドの値が大きい。南米はマテ茶。
キはカカオ。ギニア湾岸が特徴的。
クはコーヒー。ブラジルやエチオピアの値が大きい。アジアではベトナムも。
<第2問問5>
これは①が正解なんじゃないかな。ノルウェー沿岸には漁港が多く、寒流魚(*)であるニシンやタラを中心とする様々な魚介類が獲られる。天日については決して気温の高い場所ではないが、高緯度であり夏は日照時間が長いことから太陽光が決して利用しにくいところではないことを考える。
Aは③でしょう。これは乾燥ジャガイモかな。「昼夜の温度差」は低緯度地域は大きい。凍結と乾燥によってジャガイモから水を抜き保存食とする。イモ類にはしばしば毒も含まれるね。
Bは②かな。これはメイプルでしょう。過去にもメイプルは出題されたことがある。カナダは亜寒帯の国で主に針葉樹林がみられるが(パルプ原料や建築材として木材はカナダの重要な輸出品の一つともなっている)、落葉広葉樹林であるメイプルにも恵まれた国。メイプルの葉はカナダ国旗にも描かれている国の象徴。
Dは④でしょう。これはキムチだね。地理Aではよく出題されている。なお香辛料とは唐辛子のことだが唐辛子は実は南米原産であり、朝鮮半島に伝わったのは歴史的にみれば最近の話。キムチはそもそも辛くなかったってことだよね。キムチが辛く味付けされるようになったのは唐辛子が伝来して以降。
<第2問問6>
サの「縦穴を掘り、横穴でつないだ地下水路」とは乾燥地域にみられる地下水路。乾燥地域で農業のためも水を得るには外来河川と地下水路があるが、外来河川は「平野」の国であるのに対し、地下水路は「山地」の国。たとえばイラクとイランが対照的なのだが、イラクはメソポタミア文明の栄えた低地国。チグリス・ユーフラテス川という外来河川が作った沖積平野において河川からの灌漑によって農業が行われる。肥沃な三角地帯とも呼ばれている。それに対しイランは新期造山帯の高原国。国土の広い範囲が高原に覆われ、とくに北部と南部には険しい山脈も。山地付近の地下水を遠方の集落や農地へと送る地下水路が建設されている。カナートと呼ばれるもの。
この地下水路はイラン以外でも乾燥地域の山地では一般的なもの。Yのサハラ砂漠は全体的に高原となっており、イラン同様に地下水路がみられる。これはフォガラと呼ばれている。
地下水路には中央アジアのカンアルチンもある。いずれも乾燥した山岳地域であり、高峻な山地の地下の雪解け水などによって涵養された地下水を遠方の耕地へと運ぶ。かつて地理Bで出題されたのはイランのカナートのみ。今回地理Aで北アフリカが問われているがこれは例外的なものとして考えていいと思う。中央アジアは共通一次時代(50年前)に問われたことがある程度。
シはセンターピボット農法かな。地下水を汲み上げ、散水管によってコンパスで円を描くように灌漑される。上空からみると円形の農地が並んでいるという幾何学的な光景が特徴的。アメリカ合衆国のグレートプレーンズや近年ではアラビア半島の砂漠でもこのような灌漑方法と農地がみらえる。Xが該当すると見ていいだろう。なお、アメリカ合衆国の中央部における地下水を利用した農業については2021年地理B本試験第4問問2でも取り上げられているので参照しておこう。ネブラスカ州では地下のオガララ層に含まれる豊富な地下水を利用した灌漑農業が行われる。
スは「被圧地下水」でオーストラリア北東部のグレートアーテジアン盆地。被圧地下水とは上下の不透水層(目の細かい泥などでつくられた水分を通さない地層)に挟まれた帯水層(こちらは目の粗い小石などでつくられた地層。隙間が多いので水を十分に含む)に含まれた地下水であり、さらに土地全体が傾斜することによって強い圧力を受けている。盆地の底部に井戸を掘ると圧力によって押し出された水が噴出し(このように動力に依存しないことを地下水が「自噴する」という)、牧業に利用されている。グレートアーテジアン盆地は企業的牧畜地域であり、毛羊が主であるが一部では肉牛も放牧されている。Zに該当。
Copyright (C) ts9ts9ts.cloud-line.com All Rights Reserved.